日々過ぎて
時は流る
僕は大空を飛び、大地を流れ、世界を回り続けていた。
僕は藍としばらくの期間、距離を置いていた。
他の世界を見て回ることにしたのだ。
世界の中には様々なドラマが繰り広げられていた。
僕は世界中の喜び、悲しみ、怒り、驚きなどを見て回った。
世界は感動に満ちあふれている。だがそれに気付く人間の少なさに少し寂しくなった。
ある人は自分の置かれている状態に不平不満ばかりを感じていた。彼は不便なことが何一つ無いような生活を送っていたはずなのに、彼が幸せを感じることはなかった。
隣の国では明日が来るかさえもわからない人が必死に生きていた。
しかしそんな彼はそのような状況下で近くにある幸せを見つけ、誰よりも明るい笑顔を浮かべていた。
またある人は自分のことしか考えていなかった。他人のことなんか知ったこっちゃない。自らに利益があればそれで良し。
そうして生きていた彼の周りには思いやりが無かった。
周りに張り付いてくる人々は彼と同じく自分の利益を求めている人間だった。
彼はまたその状況を忌ま忌ましい他人のせいにした。
そうして彼は愛を与えることも愛を受け取ることもなく、虚しい生活を続けていくのだった。
どれくらい月日が経ったのだろう。時間はあっという間に過ぎてしまった。明日だと思っていた日が、気付けば今日になり、来年だと思っていた年が気付けば去年になった。
ある日、僕はふと藍のことを思い出した。
あの美しい心を持つ少女はどうしているのだろう。
僕は何年かの間、彼女の周りについて彼女を見守っていた。
あるときは雨粒になり、またあるときはプールになり、かき氷やジュース、雲にも水槽の水にもなったっけ。
そういえば犬の……これ以上は言いたくないが、とにかく僕は彼女と一緒に過ごしていた。
彼女のことを考え始めると居ても立っても居られなくなった。
今頃、彼女はどうしているのだろう。大人になった彼女はどんな人生を歩んでいるのだろう。
僕は頭から離れなくなった彼女の元へと帰るため、空に浮いていた雲から勢いよく飛び降りた。
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