ある婦人の微笑

大葉奈 京庫

ある婦人の微笑

あなたは空想。

いつも謎めいている。

静かな絵の中の美しい人、それがあなただ。


絵に描かれていた頃、あなたは若かった。

あなたを描いたのは偉大な画家。

描かれていく娘は絵の中で婦人になる。

あなたは時空を越えていく。

あなたの微笑みは神秘。


あなたの彼方には幻のような風景が広がる。

そこには小さな橋が架けられている。

人と自然をそっと結びつけるようにして。

それは人と自然が仲良しだった過去の物語。

 

あなたは母性の象徴。

子を授かり、新しい命に希望を託す。

絵の中の現在に佇み、未来を見据える。

やがて生まれてくる子の未来を。

そして、あなたは未来に微笑む。

人と自然が共生する未来に。

戦乱や搾取の無い未来に。

全ての生命が尊重される未来に。


あなたの微笑みは争う人々に和解を促す。

剣を手にする人々、剣を心に持つ人々。

支配と権力の欲に憑かれた人々。

そのような人々はあなたの微笑を恐れる。

それはあなたが力の正義を認めないから。

その正義には愛の居場所が無いから。


あなたの微笑の奥には確信と達観がある。

最終的に未来は明るいと。

盲執を捨て愛を信じるなら不安は消え去る。

そう、もう一度、愛を信じてみるべきだと。

絶望の淵にあっても、闇に光が兆すように。

だから、あなたの笑顔は限りなく優しい。

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