第3話 超能力

こうたはじっと机の上に置いた本を見つめている。


(動け、動け、、、。)


最近、超能力にハマっているのだ。

テレビや子どもの雑誌で見た超能力者は、すごくかっこいい。


人の心が分かったり、未来を予知したり、瞬間移動ができればどんなにいいだろう。


先週はスプーン曲げの練習をした。

1日15分くらい、毎日やった。


スプーンはちっとも曲がったように見えなかったので、今週はサイコキネシス、つまり物を動かす特訓をすることに決めた。


(ちくしょう、ちょっとでいいから動けよ…。右でも左でもいいから。)


こんなに一生懸命やっているのにちっとも動かない。もう3日もやっている。


自分には出来ると、信じることが大切だ、と書いてあった。ぼくは自分を信じてる。と思う。


なおもこうたは念じ続けた。


「こうたー。何やってるの。」


階下からお母さんの声がした。


「やべ、もう塾行く時間だ!」


こうたは鞄を持ってばたばた出かけていく。


こうたは、気がついていない。


コウタが背を向けて座っていた、後ろにあった本棚の、本がじりじりと前に出てきたことに。


横に斜めに、乱雑に本と玩具が重ねられたコウタの本棚。


きっとこうたが気づくことはないだろう。

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