第2話 海

はるかは、砂浜で貝がらを拾っている。


お父さんは砂浜にしいたビニールシートでタオルをかぶって、ねているようだ。


お母さんは、小さな妹のみわの手を引いて、波うちぎわで海の水に足をつけて遊ばせている。


初夏にもまだ早い、少し肌寒さの残る海は、人もあんまりいなかった。


はるかがけんめいに砂を見ていると、小さなカニがチョロチョロ歩いてきた。


5センチくらいのカニ。


「ロボットみたい。」


はるかが捕まえようと、手を伸ばすと、ウィーンと機械のような音がして、突然カニのお腹が自動ドアみたいに開いた。


ビックリして手を止めると、カニの中はふくざつなきかいになっていて、運転席みたいになっていた。


そこに座っていた、小人のようなものが飛び出して砂の上をかけていった。


頭に巻貝をのっけた、小さな小人の細い体は、ぴったりした青い洋服でおおわれている。


びっくりしたはるかが、あっけにとられていると、小人は砂に穴を掘ってあっという間にそこに飛び込み、見えなくなった。


カニを見ると、お腹を閉じて、またチョコチョコ歩いている。


「おーい、そろそろ帰るぞう。」


お父さんが起き上がって、叫んでいる。


カニを見ると、ふしぎと、もうロボットみたいには見えなかった。

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