第5章 王都リールフォン、苦難編

第42話 今行くぞ王都へっ!

 さて新年から早3ヶ月近くが経った。もうすぐ4月である。そして復興も進んだ。城壁は元通り防壁はまだだけど、それは石材が足りてないから仕方がない。近くに石切場もあるし、時間さえあれば築くことはできるであろう。近くと言っても歩いて半日は掛かるが。


 城壁内の方も復興が進んでいる。燃えた家などもかなり建築し直した。ただやはり木造なのでまた燃やされる可能性はあるが、あれは希なことだったと思いたい。


 ルーシェ商会の方も順調である。アラシドとディレンバ間の商隊も問題無く行えている。従業員も何故か増えた。と言うか何故か人手不足になっていた。どうやら事業を広げ過ぎたようだ。しかも他の人が、手を出しにくい事業をやっていたので邪魔されなかったのも大きい。


 なのでアラシドに来れば仕事があると思い、集まった人の中で優秀な人をスカウトした。その結果増えてしまったのだ。俺がテキトーに雇った分けじゃないからな。


 現在行っていることは、まずオランドが中心に行っている鍛冶事業だ。ダンジョンがあるこの都市では需要が大きい。特に最近はダンジョンの氾濫が落ち着いたと周囲に認知され始めたため、氾濫後にこの街を去った冒険者が戻り始めている。そう言う人たちと氾濫を戦い抜いた人たちで揉めたりもしているが、それはまた別の話と言うことで。


 次ぎに魔道具の製作事業である。最も利益を上げている。ただ俺が最も関わっている事業でもある。早く完全に俺の手を離れてほしい。主に日常で使う魔道具やダンジョンで便利な魔道具を製作、販売している。明かりから暖房、魔道コンロ、水の浄化装置などなど様々な物を作っている。依頼を受けて作ることが多い。利益は多いが作れる人が少なく、数を売るには問題ありまくりな事業である。


 そして錬金術、薬草……要するに治療系の事業である。ここはダンジョンの近くに貴重な薬草がよく採れるので、試しに作ってみたら皆が評価してしまったのだ。主に軽傷の怪我や病気、健康管理の品が多い。魔法薬も作ってはいるがこれは高価であるし、不味いので飲みたがらない。うん、俺ももう飲みたくない……。病気と火傷に効くのが売れ筋である。火傷の恐怖が皆に刻まれたみたいでな……。


 他にも、宿屋、食堂、交易など手広く……やり過ぎである。誰だよ許可出した奴はっ? 俺だよっ! 仕入れができるようになってからは、小売りもしている。まあ小売りはオマケ程度だが。最近気付いたんだ。俺は冒険がしたいはずなのに戦っている相手は書類が多いことに。そのことを口に出すと、アビスが私など護衛のはずが書類仕事しているぞとか言ってきた。アビスは優秀だ。アルテナと違って書類仕事できるしな。


 (私だって書類仕事くらいできますよ~。ちょちょいのちょいです。ただやりたくないだけで……)


 (アルテナ様の勇士を見てみたいなぁ)


 (ぐっ、その手には乗りませんよっ。少し、ホンの少し心が動きましたが)


 どうやら惜しかったようだ。


 そんなある日、王宮から手紙が届いた。所謂召喚状と言う奴だろう。なかなか俺が来ないから、はよ来いと言ったところか。そう思いながら封を開ける。


 そこには、復興の区切りが付いたら王都に来るようにと書いてあった。そこまで急いでいる様子は無いが、あまり遅くなるようなら手紙を送ってくれと書いてあった。


 なんだか気を使われている感じがするな。もしかすると、アイストル卿が泣きついたのかもしれぬ。しかし、一応召喚状が来たのだ。そろそろ落ち着いてきたし、王都に商会の拠点も作らねばならないからさすがに行くとしますか。


 一応既に拠点確保の人員を送っていたりはするのだが、俺が向かう予定でもあったため最小限である。


 皆にもそう話す。王都希望の従業員や、王都方面に故郷のある元奴隷たちと王都へ行くことになった。故郷に帰る元奴隷たちもこの半年間の生活でかなりお金を稼げたので、帰るまでの路銀と、帰ってからのしばらくの生活は大丈夫とのことだった。そう言ってお金を渡そうとしたのを断られたのだ。


 フラウや他の従業員たちも面倒見過ぎと非難してきたので、今回はやめておこう。ただ一緒にいる間の旅費はこっち持ちな。そこは譲らないからな。


 そうして王都へ行くための準備を始める。しばらくここには戻ってこないので引き継ぎなどもする。まあ連絡することはできるからそこは安心してほしい。アイストル卿にも挨拶をしておく、彼はたまに領都に戻っているようだが、基本的にアラシドで政務などもしている。予算関係とか頭を悩めることが一杯なことだろう。


 そんな彼だが王都に行くと言いに行くと、とても残念そうだった。俺も行きたくないが召喚状も来たしな仕方がない。おっと少しぶっちゃけてしまった。


 「貴殿は復興にもとても尽力してくれた。そのことに礼を言わせてほしい。勿論氾濫時の防衛に関してもだがな」


 「そちらに関してはもう何度も聞いてますので」


 そう何度も礼を言われたな。そして商会に関して色々と便宜を図って貰った。ありがたいことだ。


 他に挨拶が必要なところは……治癒院くらいか。治癒院を訪れる。さすがにもう平常状態になっている。重傷者は俺がほとんど治したしな。今は建築作業中の怪我人や病人がメインとなっている。ちなみに我が商会からよく医薬品などを購入してくれている。前に購入していたところは火災で焼失してしまったらしい。


 挨拶自体はすぐに終わった。と言うか終わらせた。治癒院の仕事中だったしな。シーナは若干引き留めたそうだったが、何も言ってこなかった。俺がオーガスト家の人って知ってるしな。前に勧誘されたときにそう言って断ったし。


 最後は元奴隷や商会の関係者である。彼らとは盛大に出立会と言う名の宴会を行った。出立する3日前にである。前日に行わなかったのは、二日酔いに警戒してである。飲まない俺やフラウは大丈夫だが、他に一緒に行く連中がなりそうだったからな。


 ちなみに出立会ではオランドが酒を飲みながら感謝の涙を流していた。もういいから、気にすんなよ。後はフラウに俺のことを何度も頼んでいたな。俺は子供じゃないんだけど……と言いたかったが、残念ながらまだ成人してなかった。


 オランドには4人分の武装で世話になったのにな。そう、オランドのお陰で弓が強化された。もう弓を使った<真技>で、一々弓を使い捨てにしなくて済むようになった。ただし、それでもクールダウンの時間が必要で連射はできない。連射するときは今まで通り、弓をいくつも用意しての釣瓶打ちとなる。


 俺の武装は他にも剣や短剣を打ってもらった。勿論両方とも付与魔剣にした。剣の方を草カリバー二式と名付けようとしたら、アルテナに必死で止められた。こんな感じに。


 「良し草カリバー二式と名付けよう」


 「ホント、ごめんなさい。謝りますから~。剣が可哀想なんですって!」


 そう言う理由で今のところ名前は保留である。俺は気に入っているのにな。アルテナが嫌がる部分も含めて。


 アルテナは弓と槍、剣と作ってもらっていた。アルテナさん、槍と剣を使ってるとこ見たこと無いよ? いや趣味で? そうですか。なんか怖いな。


 そんなアルテナだが、槍は投げやすい槍で、剣は斬れ味重視だった。その剣は何に使うの? 主に斬首用? 今日のアルテナさんなんか怖いよっ! 刃を虚ろな眼で見るのはやめましょう。


 そしてフラウだが、彼女は細剣と弓、それに軽い部分鎧だ。部分鎧とは言ったが籠手やブーツと言った物が主だ。一応邪魔にならない程度の部位のみだ。胴体部分はある魔物の糸で作られた服である。全体的に若草色でまとめられている。


 全ての品に付与魔法はしているので、突きや斬撃には強い。ただ衝撃はあまり軽減できないのでそこは気を付けてほしい。風魔法使えるし大丈夫だよね?


 最後にアビスだが、彼は既にかなり良い魔槍を持っていたので、投げ用の槍と短剣。他に痛んでいたので防具を新調した。後は彼は<収納魔法>が使えなかったので、収納袋をプレゼントしておいた。書類仕事の代金だと言うと微妙な顔をしていた。ちなみに容量は50kgほどである。防具は一部金属を使ったかなり良い防具である。彼は我がパーティで唯一の前衛だからなっ! 彼からはこのことに関して異論があったが……気にしてはダメだ。


 勿論他の人の装備同様に付与魔法を処理を行った。魔槍に対しても問題無くすることができた。アビスの使っている魔槍は人工的なものでは無く、遺跡やダンジョン産の魔槍だったため、特に付与魔法と干渉することはなかった。人工の魔剣などはたぶん干渉すると思う。


 よしこれで準備完了と思いきや、王都にいるクリス兄やエーシャ姉、王都のオーガスト邸にいる人たち用のお土産を用意する。主に商会で作られた小物だが。後はダンジョン産の魔石とかもあるし大丈夫だろう。


 さて準備は整った。今行くぞ王都へっ! え? アラシドから王都まで馬車8日くらい? よし行くのはやめよう! っておい、引き摺るなっ!







ご愛読ありがとうございます。

この章からは今までと書き方が違っていたりします。

今まではダラダラと書いたのを適当なところで切ってアップしてましたが、

今回からは1話ごとに書くようにしました。

なので1話が大体3千字~4千字の間に収まってます。

今までは酷いと7千字とかありましたしね。

しかし特に落ちとか引きとかは考えてません。

そこまで考えてたら大変だったので……。

それでは失礼します。いつも応援ありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る