第33話 眠いので手短に

 「い、い、いってえええ」


 奴は折れた状態の剣でそのまま俺をぶっ刺してきたのだった。急いで<治癒魔法>を掛ける。なかなか往生際の悪い奴であった。


 「大丈夫ですかっ?」


 駆けつけたフラウが慌てて聞いてくる。


 「大丈夫だ、もう自分で治した」


 それを聞いてホッと胸をなで下ろしていた。取りあえず、することしますか。


 「悪魔、討ち取ったりー!」


 おおっと歓声が上がる。そして先ほどから魔物の統率に乱れが生じていた。一部はダンジョンの中に帰ろうとしていた。特に飛行型は持ってる爆発物を落としたら、補充せずにそのまま帰っていった。アルテナご苦労様。


 そうして小1時間程度で周囲の魔物の殲滅は終わり、火消しやら負傷者やら事後処理に移っていく。取りあえずは都市の中からだ。都市の外の死体などは後回しにさせてもらう。




 そして俺は救護所は燃えちゃったので、治癒院のところで負傷者の治療をする。今回は火傷の人が多く、皮膚の再生とかできるのは俺だけだったので大変苦労した。魔法薬でお腹が……。中毒症状を起こさないことが凄いと言われた。少し悲しい。あんな不味いものを何本も飲ませられるの辛い。


 更に火傷は経過観察が必要なので、あまり広くない治癒院では厳しい。外に寝かせるのもテントが不足しており野ざらしになってしまう。故に治癒院の中にあった家具を他の場所に移したりして、人を寝かせる場所を確保した。それでも溢れて野ざらしの人は居たが。


 そして時間ができた時に状況を聞くと、火事関係で死者がかなりでたとのことだった。たぶん魔物と戦って死んだ人より多いらしい。一般市民に結構被害が出た。


 「あの、俺眠たいんですけど……」


 臨時指揮所は燃えちゃったので、臨時の臨時指揮所が作られた。そして今そこに連行されている。今は昼過ぎ、だが俺は昨日の戦闘から一睡もしていないのだ。故に眠い。ちょー眠い。戦いは深夜だったしな、神経も疲れたし。


 「すぐ済みますからっ」


 兵士が俺を引きずっていく。


 臨時指揮所に入ると、幹部たちが待っていた。


 「疲れているところすまない」


 「眠いので手短に」


 結構失礼な態度だが誰も何も言わなかった。後にカイ兄曰く死人の様な顔色をしていた、とのことだった。疲れているのを承知で呼んだから、態度に関しては気にされなかった。むしろ治療行為に感謝されていた。


 「その悪魔を討ち取った際の魔石をお借りしたい」


 ああ、あの後すぐに治癒院へ向かったから忘れてたわ。


 「勿論、悪魔の討伐を確認後に返却する。ただ、たぶん返却されるのは王宮でとなる。よろしいか?」


 それを聞きながら、小袋の中から出すフリして異空間庫から魔石を出す。


 「いえ、寝かせてくれるなら何でもいいです」


 そう言って魔石を渡した。将軍は魔石を受け取りながら話を続ける。


 「それと今回の功績、悪魔を倒したこと。多くの人を救ったことなどにより、これは私の予測だが叙爵される可能性が高いと思う。っと、今言っても仕方無いか……」


 説明を続けたかったみたいだが、こちらの様子を見て将軍も諦めた。そして、


 「本当に手間を掛けてすまない。もう休んで良いから、ゆっくり休んでくれ」


 将軍はそう言うしかなかった。


 俺はその言葉を聞くとふらふら~っと臨時指揮所を出て仮眠場所へ向かうのだった。心配して後ろから兵士たちが着いてきていたことにも気付かなかった。


 (幽霊が歩いているみたいですよ~)


 元気であったなら幽霊が果たして歩けるのか? という問題について議論をしていただろう。今はそんな元気がなかったが。


 (アルテナよ、魔法薬一杯飲んでみるか?)


 こう返すのがやっとであった。


 (いえ、遠慮しておきます)


 仮眠場所と言っても治癒院の奥だ。何かあったらすぐに叩き起こされる。統率が無くなった所為で、今度は魔物が散発的にダンジョンから出るようになったのだ。まだ多くの魔物がダンジョンに居るということだろう。その散発戦で重傷者が出れば俺は叩き起こされるのだ。


 そして生憎、矢も燃えたり折れたりして使えるのが少なく、壁の方もボロボロだ。城壁も飛行型魔物の落とした魔力爆弾でかなりのダメージを負っていた。


 魔力爆弾とは魔石に限界以上の魔力を込めて、どうやったのかギリギリ安定させている。そして強い衝撃を受けると安定が崩れて大爆発が起こるというものだ。主にダンジョン内の罠などに用いられ、その危険性からまず回収ができない品である。


 製法も不明で、人には作ることができないとされている。破壊力も魔石の大きさや込められた魔力の量に寄って変わる。そして爆発跡地に魔石の破片などが散乱していたため、魔力爆弾だと判断された。


 3層防壁はその爆弾などによりほぼ崩れている。南門近くの城壁にもいくつか穴が空いていた。よって近接戦が主流になるため被害はでると考えられている。


 故に3時間寝かせてくれただけでも、感謝するべきなのだろうか。たった今、重傷者が何人か運び込まれてきて起こされた。中には領都で俺に忠告してくれた冒険者もいた。


 「あれ、おっさん生きてる?」


 腕の骨の骨折と肋骨が折れて肺に刺さってる?


 「ぐぅ、いつぞやの坊主か、なんでこんなところで……」


 「まあ黙ってて治療するから」


 そう言って<治癒魔法>を行使する。顔色も少し戻ったかな。後はシーナに任せて次の人を診る。そして重傷者の治療が終わると、フラウが持ってきてくれた食事を食べ、再び仮眠した。


 「無理しないで下さいね」


 言っても無理だろうが言うしかないフラウであった。一方アルテナは外で防壁の応急処置や、燃え尽きた建物の処理などに奔走していた。なんで私がと思いつつもやってしまうのであった。そう言うところはさすが女神である。




 そんな生活が2週間ほど続いた。現在10月の28日である。そこでようやく散発的にダンジョンから出てくる魔物が減り、新たな救援の部隊も到着した。都市部の被害は結局、中破から大破といったところである。人によっては大破と判定するだろう。


 これだけの被害だ、復興するには結構な量の支援物資が必要となるだろう。木材や鉱石などは近くにあるが乾燥させる必要があったり、精錬する施設が半壊してたりするのでなかなか思うようにはいかない。それにまだダンジョン内の掃除も必要だ。


 もう死者は負傷が原因では全く出てない。唯一病死が少しあるくらいだ。それも原因さえ分かれば治せると思うが、病気治せるとなるとえらいことになりそうなので黙っておいた。


 俺も我が身が可愛い。死んでいった者達よ、恨むなら病気に掛かった己を恨んでくれ。決して俺を恨まないでね。とか考えていた。まあ原因が分からなかったから結局治せなかったんだがな。自然に<治癒魔法>のレベルが8まで行ったので、10までSP使って上げちゃった。



名前:ライリール=グラン=オーガスト 

職業:冒険者  種族:人族  

年齢:14歳  性別:男

クラス:双魔士

レベル:50

状態:健康


ボーナス ()内はBP補正/スキル補正。ユニークや固有は除く。

耐久:+1020(+0/+181)=1201

魔力:+1520(+0/+389)=1909

体力:+770(+0/+213)=983

筋力:+130(+90/+118)=338

器用:+110(+0/+159)=269

敏捷:+195(+47/+148)=390

精神:+135(+42/+174)=351

知力:+265(+51/+247)=563

感覚:+180(+0/+201)=381

幸運:+30(+30/+5)=65

残りボーナスポイント:20


スキル:(魔術<影/水/風/闇/地>LV10/8/8/6/6)剣LV10、短剣LV10、槍LV5、刀LV3、盾LV3、棒術LV3、格闘LV7、弓LV10、投擲LV9、杖LV1、二刀流LV2、防御LV7、頑強LV2、受け流しLV6、見切りLV8、先読みLV7、カウンターLV1、魔技LV6、体技LV7、真技LV2、身体強化(魔/☆体)LV5/5、魔法抵抗LV10、挑発LV7、扇動LV2、威圧LV4、不動LV6、剛腕LV4、戦意LV6、強打LV5、先制LV7、加速LV6、ランニングLV9、ジャンプLV6、礼儀作法LV3、ダンスLV1、裁縫LV5、乗馬LV3、指揮LV5、指導LV4、戦術LV5、経営LV4、政治LV1、鍛冶LV6、木工LV2、細工LV7、☆錬金術LV4、☆魔道具製作LV5、魔法付与陣LV6、交渉LV7、計算LV8、鑑定LV9、看破LV5、気配察知LV10、危険感知LV10、魔力感知LV10、隠密LV10、隠蔽LV10、追跡LV4、探索LV3、変装LV1、偽装LV4、演技LV10、鍵開けLV4、罠LV8、待ち伏せLV3、遠見LV5、軽業LV5、スリLV2、登攀LV2、水泳LV2、魔物知識LV9、動植物知識LV9、薬学LV7、サバイバルLV4、演奏LV1、調理LV6、絵画LV1、地図LV2、診察LV7、尋問LV3、解体LV7、耐久魔力体力回復促進LV3/10/9、魔力超回復LV3、魔力回復量上昇LV10、瞑想LV8、集中力LV6、魔力操作LV10、魔力圧縮LV1、属性魔法<火/水/土/風/☆闇/光>LV<8/8/8/9/10/7>、☆複合魔法LV6、生活魔法LV10、☆治癒魔法LV10、強化魔法LV8、収納魔法LV5、耐久魔力体力強化LV3/5/5、個別耐性<毒4/麻痺4/石化4/熱4/冷気4/混乱4/睡眠4/恐怖4/呪詛4/苦痛4>、☆全固別耐性LV2。


残りスキルポイント:35

ユニークスキル:女神アルテナの加護、第六感、魔法の素質、分析。

固有スキル:女神アルテナの寵愛、女神アルテナの贖罪、魔法の才能、暗殺者の心得、転生者、転生者への加護、フォルテナの守護。

称号:狂気を狩る者、悪魔殺し。



 レベルは前回から4上がった。悪魔はあまり経験値を持ってないみたいだった。まあ称号を貰えたし良しとしよう。スキルは弓とか剣、闇魔法が10になった。魔力もアルテナ召喚中で1400ある。十分だろう。やはり近接戦が苦手だからこれからも伸ばせるように頑張って行こう。



 <悪魔殺し>

 称号。悪魔から畏怖を抱かれる存在である証。悪魔に対して与えるダメージ+10%、悪魔から受けるダメージ-10%。また悪魔からの状態異常攻撃に対して耐性が大幅に上がる。筋力+10、精神+20、知力+10。



 うむ。ステータスの増加効果が大きい。オマケの異常耐性は俺には意味無いが気にしないでおこう。


 (アルテナ、悪魔って案外弱いよな)


 (え~っと、なんか頭痛してきましたー。ライルは悪魔がどういうモノか知っていますか?)


 (いや、知らん)


 そう言うと、深い深いため息の後説明してくれた。


 悪魔とは、神でいうところの天使の役割である。要するに邪神の配下が悪魔なのだ。故に本来は凄く厄介で強い。ただ今回は……。


 (ライルは何故か闇魔法と光魔法が使えますけど、本来はどちらかしか使えません。故に悪魔も闇魔法に対して、攻撃できても防御できない、または防御できても攻撃できないと言う状態になります。でも貴方の場合は攻撃できて防御もできます。つまり離れると一方的に攻撃を受けます。そして接近すると<真技>とやらで防御不能の攻撃をしてきました。しかも何故か<真技>で斬られるとお得意の再生が行えないみたいでした。よって、貴方は悪魔にとって天敵となる存在です。だから、悪魔が弱かったんじゃないのよっ、相手が悪かっただけなんだからって奴です)


 アルテナが長々と語ってくれた。最後はよく分からんが。更に光以外四属性魔法には耐性があるという。下級でも半減以下、中級なら8割はカットしてくる性能らしい。そして少し疑問が。


 (でも、光魔法と闇魔法使える奴がいれば、大して苦労しないんじゃね?)


 (頭大丈夫ですか~? たとえそんなことしたとしても接近すれば光魔法撃てませんし、接近して光使いを闇魔法で仕留めるのも良いですね~。悪魔お得意の超再生もありますから、相討ちどんと来いです)


 俺の疑問は一瞬で壊滅させられた。


 (あっ、そうだったわ、最近戦闘してないから感覚が鈍ってるのかな)


 (言い訳しなーい。それ故に中級悪魔1体出ると、人族側は数百人とか被害が出ます。酷いと千人規模です。だからこそ1人で倒したから叙爵の話とかきているのでしょうね~)


 なるほどな。だが最近治癒ばかりだったから、ホントに鈍ってる気がする。そこはなんとかせねば。


 (でもあまりにもあっさり倒しちゃったから、将軍とかは中級悪魔じゃなくて下級悪魔じゃないかと疑っていたみたいですけどね。まあそれも魔石渡しましたし、魔石見れば一目瞭然ですからね)


 確かにあんな濃く大きい魔石は初めて見たな。それにしても叙爵か……。


 (まあ叙爵と言っても大した爵位にはならないだろう。名誉貴族の場合もあるし。俺も爵位ほしい分けじゃ無いし)


 (他の後を継げない貴族子弟が聞いたら発狂しそうなこと言いますね~)


 異母弟とかその筆頭だろうな。


 (フラフラ出歩くのに邪魔になる可能性が……)


 (あなた一応今でも貴族の一員ですからねっ)


 そう言えばそうだった。しかし依然としてやることは多い。それを片付けないとアラシド離れることもできぬ。


 そうして疲れた眼で明日を見るのだった。



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