第4話 6歳からの魔法講座

 ようやく武器の振れる筋力になってきた。6歳の基礎ステータスは分からないが、仮に20だとしても81あることになる。だいたい非力な成人女性位だろうか?

 とにかく次からは武器スキルを伸ばしていきたい。


 魔法スキルの方は……取りあえず全部覚えた。<闇魔法>は習得の仕方が分からないし母様も使えない。そしてSPを使っても習得できぬスキルだった。まあ魔法スキル自体、生活魔法以外はSP習得できぬのだ。ちなみに<収納魔法>は<異空間庫>に出し入れしてたら勝手に覚えた。たぶん使わないけどなっ。


 他の興味のあったスキル、<魔道具製作>や<錬金術>、<複合魔法>は前提スキルが厳しいのでタダで覚えさせてもらった。<治癒魔法>も習得は難しいみたいだったのでタダで覚えて解決。<身体強化(体)>も(魔)の方と比べる習得し難そうなので、タダで覚えさせてもらった。ステータス強化の役にも立つからな。

 後は<魔力操作>がLV9になっているくらいか。その他は目立ったモノはないね。<演技>なんか絶対見えないヨ。


 そして6歳になったのだ! 少しは男らしくなったかな~と期待したが、鏡の中に写る自分はむしろ可愛らしかった……。それを見てアホテナは――


 『あ~ら、可愛らしいボクですね~~』


 このダ女神もといアホテナ許さねぇ。後で覚えてろよ(悪役風)!


 そんなある日のオーガスト家では、


 「ライルは将来、この家を出ないとダメなんだけど……何かやりたい事とかある~?」


 母様が突然尋ねてきた。突然過ぎるだろ。う~ん。


 「その……ライルは家の外で暮らさないとダメなのよ。もちろん遊びに来たり一時的に帰ってくることは全然構わないわよ」


 俺が解答に困っているとすぐに付け加えてきた。さてどうするか、やりたいことが一杯ありすぎて選べない……。ここは正直に答えておくか。


 「ぼくは色んなことやりたいです」


 一応アホテナと相談して、目標とすることは決まっている。とにかく死なないために強くなること(ドラゴンくらい倒せるようにとはアホテナ談)。ある程度楽してお金を稼げるようになること(そのお金で余生を楽に過ごしたいとは俺談)。後は余生を過ごすための素晴らしい場所を手に入れること(居場所とも言う)と、一緒に余生を過ごす素晴らしい伴侶を見つけることである(願望)。だから今のところは色々やりたい、と言うのが本音である。


 「色んなこと?」


 「はい。ぼうけんしたり、物つくったり、魔法のべんきょうしたり」


 俺の言葉を聞いて母様少し考え込む。しばらくして頻りに頷いた後、


 「冒険や物作りは置いておいて、魔法を使うってことなら、今からでも始めてみる? 幸いなことにライルには強い魔力が感じられて、更に魔法はママが教えることができるし」


 おー、それはありがたい事だ。今までは姉に魔法を教えてるところを盗み見て覚えてたからなっ。答えは勿論――


 「よろしくおねがいします、母様」


 こうして母様のスパルタが始まった。


 

 「さて授業を始めます」


 母様、笑顔でノリノリである。


 「ライルは<魔力操作>はすでにできているから、魔法の基本的なことに対して説明するわね。分からなくても取りあえず聞いといて、すべて覚える必要はないから」


 練習してたのバレテーラ。<魔力操作>は安全だし、ことあるごとにしてたしね。魔法スキルをすでに習得していることは、まだバレてないはず。


 「はい、母様」


 まあ基本的なことも姉に教えてたの盗み聞きしてたから、大丈夫だろうけど、ちゃんと返事をしておく。疑われるようなことはしない。


 ちなみに兄弟で魔法の才能があるのは姉、エーシャのみである。兄二人に異母姉、異母弟、異母妹は才能が無さそうとのこと。そう気がついたら異母弟と異母妹がいたのだ。更に異母弟なんか俺より3ヶ月遅く産まれただけなのに、存在を知ったのが2つ下の異母妹より後という……超レアキャラである。

 それはまあ貴族特有の事情により、異母弟はほぼ離れに隔離されているようだ。義母の方も2回ほど遠目に見ただけで、基本は離れに籠もっている。異母妹はちょくちょく教育のために本邸に来るんだけどね。異母姉は基本、本邸にいるな。姉エーシャと仲が良いらしい。


 さてそんなこと考えている間にも母様の説明は続いている。要約すると、魔法の属性には火、水、風、土、闇、光の6つの属性があり、この6つはまとめて属性魔法と呼ぶ。他に特殊なものとして、生活、強化、収納、治癒があり、前者2つは比較的簡単で後者は超難しい。母様は闇除く5属性と特殊すべて使える(自慢)とのこと。


 <生活魔法>は比較的簡単で、<魔力操作>をできる人なら頑張れば使えるようになる。他は才能がないと使えず、治癒や収納は特に使える人が少ない。<生活魔法>でできる事は限られる。主に少量の水を作ったり、竈に火を付ける、小さな穴を掘る、暑いときにそよ風を起こす、明かりを灯す、程度である。スキルレベルが上がることで効果が僅かに強化され、消費する魔力が減る。このような特性なため冒険者や行商人、旅人に重宝される魔法である。


 次に<治癒魔法>はオーガスト領内でも10人いるかどうかくらい使い手が少ない。治癒できる傷もスキルレベルにより、部位欠損や病気は治せない。レベル1では傷を治す程度、レベル3辺りで単純骨折が治せるようになる。レベル5で皮膚再生などができるらしい。それ以上は不明とのこと。回復効果だけなら魔法薬の方が優秀らしい。ただし瞬間的な効果はでは<治癒魔法>が勝る。


 そして<収納魔法>は、<治癒魔法>に比べるとまだ使える人が多い。隠してる人が多いので詳細な数は分からないらしい。このスキルも冒険者や行商人、旅人がとってもほしいスキルである。荷物をお手軽に運べる夢のようなスキルである。もちろん軍隊関係者にも人気。ただ容量が、本人の魔力とスキルレベルに関係しており、出し入れにも魔力を必要とする。そのため魔法使いが覚えていたとしても、荷物持ちを兼任することは難しい。容量は多いのに(魔法使いは魔力が多め)、その分出し入れすれば攻撃にしようする魔力が減ると言う、痛し痒しである。ただこのスキルは他の魔法が使えなくても発現することがあるから、習得者が魔法使いばかりでないことが救いである。


 ついで<強化魔法>である。この魔法は敢えて使う人が少ないだけで使える人は多い。その理由は消費魔力と効果が割に合わない。要するに費用対効果が悪い、これに尽きる。攻撃魔法使える人だったら、強化魔法分の魔力を攻撃魔法に回し、敵を倒した方が早いし安全お手軽ということである。そんな<強化魔法>もスキルレベルが上がれば、攻撃魔法より費用対効果が良くなるらしいが、そこまで極める人は希である。そして居たとしても大抵は軍や私兵などの組織に所属している。


 最後に属性魔法である。まずは<火魔法>、<生活魔法>でも火を灯すことはできるが、<火魔法>の火は炎である。水を沸騰させるのに<生活魔法>だと時間が掛かり、その分魔力も多く必要である。だが<火魔法>だと火力が違う。すぐに沸騰させることができる。そして火属性の最大の特徴は属性魔法で最も火力があることだ。攻撃魔法の燃費も良い。


 次の<水魔法>は、<生活魔法>と違って大量の水を出すことができ、冷やして氷にすることもできる。圧縮した水の槍や氷の槍は人を易々と貫通する。環境で使い勝手が変わらず、対象の損傷を最小限にできることから、冒険者に好まれる属性である。水属性の特性上軍隊では、対火属性として使われる事が多い。攻撃魔法としては、水を集めたり、凍らせたりする都合上少し燃費が悪い。ただ魔法の威力に質量が乗る。


 その次<風魔法>の一番の特徴と言えば探知魔法である。自分の周囲の状況を調べることができ奇襲や待ち伏せなど防ぐことができる。ただし地中は対象外なので注意が必要だ。攻撃魔法としては、斬るや吹き飛ばすことが得意である。他にも追い風で移動速度を上げたり、空気抵抗を減らしたりと、補助的な魔法も得意とする。この属性も特性上、冒険者に人気である。魔力量が攻撃魔法を使うのに厳しい人が覚えていたりする。攻撃魔法としては威力は低いが燃費が良い。斬る魔法の対策がされていると効果が薄いと言う弱点がある。


 更に次<土魔法>は土や石の変化、及び調査ができ、それ故領主に大人気である。土木工事を行ったり、土地の調査、鉱物の精製など引く手数多である。<土魔法>の特性として、空中以外の探知ができる。対人相手ならば飛ぶ人はほぼいないので<土魔法>の探知魔法もありで、実際に軍隊などで使われいる。軍隊では拠点を作るに当たって、<土魔法>が得意な魔法使いが従軍していることが多い。攻撃魔法としては、土や石がないと困り(水と違って魔法で作るのは難しい)、人工の建物内だと使えなかったりする。使える環境を選ぶため冒険者には不人気。攻撃魔法としては、土や石などを利用できるならば燃費も良く、威力に質量を乗せられるので強い。ただ利用できるものが無い時に魔法で無理矢理作ると莫大な魔力を消費し、燃費が非常に悪い。


 ついで<光魔法>は聖職者に人気がある。対アンデッドや祝福(呼び方は色々)など神聖なイメージがあるからだ。アンデッドに対しては<光魔法>は特攻効果があり、しぶといゾンビなど大変有効である。祝福とは、それを掛けると一定期間の間受けるダメージを減らしたり、不意の事故などを防いでくれたりする。<強化魔法>と違って効果時間が長いが、効果が切れた後でないと掛け直しができない。一度に掛けられる人数に制限があり、<光魔法>のスキルレベルによる。属性の特性上、防御効果の魔法が得意、対魔法の結界や魔物除けの結界などが張れる。攻撃魔法としては、自由度が高く環境を選ばず使用することができる。ただし他の属性と比べると威力や消費魔力に難があり、発動に時間が掛かるものもある。


 今度こそ最後の<闇魔法>である。母様もよく分かっていないらしく、およそ<光魔法>の反対っと言う大雑把な説明だった。なのでここからはアホテナ情報である。<闇魔法>は影や闇、空間などに作用させる魔法が得意である。純粋に魔力その物に干渉したりすることができる。かなり攻撃的な属性である。光属性は無いものを生み出しているため、必要な魔力量が大きかったりするが、<闇魔法>はそこに在るのである。それ故消費する魔力が少なめ、更に回避のし難い攻撃が多い。それでも威力自体は火属性がトップである。ただ範囲魔法は苦手な分類で、単体魔法の燃費と威力の釣り合いでは風魔法に勝る。他には呪詛に属する弱体化の魔法があり、状態異常が得意である。性格の悪い属性と言える。まあ特殊な魔法が多いだけなんだが。


 それと、火は風に強く、水は火に強く、土は水に強く、風は土に強いと言う関係らしい。光と闇は相互に弱点関係で、光を防ぐには光、闇を防ぐには闇と言われている。


 ふぅ、長かった。こんなに一気に言われても普通覚えられないよ。


 「色々喋ったけど、練習する時にまた説明するからね。覚えてなくても大丈夫だからね」


 一応気にはしてくれてたようだ。大丈夫。実は2回目だし、魔法の本も読んでるから。

 そしてこの日から魔法の訓練が開始された。初めは<生活魔法>から始まったが、あっさり使うとすぐに属性魔法に移った。火、水、風、土、光と一通り使うと、母様大変大喜びした。ちなみに姉のエーシャは今のところ火、水、風らしい。2属性使えるのが普通で、3属性以上は凄い。5属性?おかしいって感じらしい(母様談)。


 「私も良くおかしいとか、変人とか、非常識とか言われたなぁ」


 母様、たぶん最後のは違うと思います。父様に攻撃魔法を撃ち込んでいるのちょくちょく見ますからね。庭に焦げ後残って、庭師の人が苦笑してましたよ(あれはきっと諦めてるんだろうなぁ)。


 この魔法訓練以外にも、父様に剣やその他の武器を見てもらったり体力作りを頑張った。父様も今までは、空いてる時間は兄たちの訓練を良くしてたようだ。その兄たちは、一人は王都の学院へ行き、もう一人も昼間は学校に行っている。なので空き時間が増えたのだ。その分を俺の訓練やらを見てくれるようになった。冒険者になるのに役立つスキルなども教えてもらえてありがたかった。この両親の元に産まれて本当に良かったと実感した。



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