第3話 3歳から6歳、初めての森
3歳になった。もう余裕で歩けるぜ。そして最近になってたまに、父様が色々な場所に連れて行ってくれるようになった。忙しいみたいで月1~2回ほどだが、その時は長々付き合ってくれる。ところで今日はどこへ連れて行ってくれるのだろうか。
「とーさま、きょうはどこへいきますか?」
ちなみにエーシャによる言葉の指導によって、父様、母様呼びである。それ以外だと何故か怒るのだ。ちなみに兄姉は名前に
「う~ん、どこか希望はあるかい?」
お、希望を聞いてくれるのか。ならば――
「もりにいってみたいです」
「も、森かぁ。そ、それはアイシャにバレるとやばいなぁ」
さすがに無理か……。できれば森に入って色々な植物を<分析>したかったが……。
「だめですか?」
「う~ん、森の側までならいいぞ。ただし森の中には入らないからな。それで良いなら行こう」
「はいです」
「よしなら行こう。まずは馬だな」
馬を入手しに屋敷の裏手にある厩舎に行く。行くときに父様がコソコソしてるのが地味に笑えた。よっぽど母様が怖いんだな。うん。俺も怒らせないように気をつけよう。
そうして森の近くまで馬に揺られてやってきた。領都サルファから出て20分ほど掛かった。領都を出るまでにも時間が20分ほど掛かったかな?
その間に街や森の話を聞いた。街の近くに森が残っているのは、採集や狩猟のため敢えて残しているらしい。冒険者や狩人の仕事場である。街を出てから森へ行くまでは、麦畑が広がっていた。
オーガスト伯爵領は年間の降水量を安定していて、農業がしやすい地形である。主に育てているのは稲で他にも麦や豆、野菜を育てている。先祖の勇者と呼ばれた人が、水が十分にあるんだから面積当たりの収穫量の多い稲作をメインとしたのだ。
それから伯爵領の穀物の生産量が増え、更に鉱山もあり少量だが砂糖も作れてるようになり、国力を増すことに一役買った。この伯爵領では海が無いので魚と塩はダメだが、その分平野が広く実りも良い。
その代わりに隙あらば隣国がちょっかい出してくる土地ではあるが。
故に軍備に掛かる費用が大きい。実戦が多いこともあり領軍は精強である。そして当主となる人は一軍の指揮ができなければならず、必然的に戦闘能力が高いのだ。代わり領の管理などの内務は叔父が手伝っている。
そんな事を考えているのは、今森から出てきた魔物が父様に瞬殺されたからだ。弓でサクッとな。父様すげーっす。
「こんな感じで森の近くは危険だから、大きくなるまで絶対に一人で来てはダメだぞ」
「はい、とーさま。あのまものをちかくでみていいですか?」
「ちょっと待ってね。安全を確認してからね」
そう言って父様は馬を降りて魔物の死体に近づく。ちなみに俺は馬に乗せられたまま鞍にしがみついている。しばらくして父様が合図をすると、馬がゆっくりと父様に近づいていく。
(なんて賢い馬なんだ。ダ女神も見習ってほしい)
『私は馬以下ですかっ!』
(おっと、思わず本音を強く念じてしまった。危ない危ない)
それに馬以下ではなく、馬未満だな。正確には。……言わないけど。
『あの、それも聞こえているんですが……。絶対わざとですよねっ! うわ~ん』
なんかダ女神が泣いているが気のせいだろう。気のせいじゃなくてもいつもの事だしな。気にする必要もない。馬未満発言は聞こえてないだろうし。
そんなこと考えている間に、父様が馬から俺を下ろしてくれる。
「ほら、この魔物はウッドウルフと言って、森の中を単独行動していることが多い。狼の癖に爪が鋭く木登りができる。森の中ではコイツに木の上から奇襲されると危険だ。森の外に出てくるのは珍しいけどな」
そのウッドウルフは頭を一本の矢が貫いている。頭部が貫通である。オソロシヤ。
「ほぇー。オオカミさんグッサリ」
感想を述べてみる。
「ははは、<魔技>を使ったからね」
「このオオカミさんたべられる?」
<分析>を使いつつ尋ねてみる。
「えっと、食べられなくはないけど、美味しくないの。分からないとは思うけど害獣の類だからね」
「がいじゅう?」
聞きながら<分析>を使ってみる。
名前:ウッドウルフ
レベル:14
種別:魔物
状態:死亡
耐久:0/230
魔力:0/50
体力:0/200
筋力:180
器用:80
敏捷:230
精神:50
知力:30
感覚:200
幸運:5
スキル:噛み付くLV3、引っ掻くLV2、気配察知LV1、探索LV2、待ち伏せLV2。
説明:森の中及び森近辺に住んでいる狼。爪が鋭く器用で木登りして待ち伏せしたりする。単独行動が多いが群れで居ることもある。肉は独特の臭みがあり美味しくなく、毛皮は使い道が色々ある。牙や爪は装飾品などに使われることがある。
レベル14思ったより高い。一般人だと2匹に襲われたら死にそうだな。<魔技>を使ったにしても、耐久230あって一撃死である。恐ろしい。
「人に悪さをする狼さん、と言うことだね」
「なるほど~」
敢えて会話に付き合いつつ、分かったような分かってないような顔で相づちを打っておく。これも親子のコミュニケーションなんだ。こんな感じのことを良くしてたら、スキル<演技>なんてものを得た。少し罪悪感が……そして精神が削られる。
「父さんはこれから魔物を解体するけど、ライルはどうする? 見たくないなら、馬に跨って少し離れてもらうけど」
「ぼくみてるー」
「そうか、気分が悪くなったら言いなさい」
そんな問答をしつつも、父様はウッドウルフの解体を始める。ちなみに前世の影響か、血生臭いのは全然平気だった。
「まあ、使えるのは毛皮と牙だな、後は魔石。爪はいいや。それとさっきも言ったけど肉はあまり美味しくないしね。森に放り込んでおいたら他の魔物のエサになるだろう」
そう言いながら、ウッドウルフの心臓の近く辺りから魔石を取り出した。見た目は綺麗な石。<魔力感知>を行うと、当然魔力を感じた。
「ませききれー」
「これは魔道具を使ったり、作ったりするのに必要なんだ」
魔道具か色々便利だし作ってみたいな。
そう言ってる間に解体は終わり、その後は役立つ草や木の特徴や鳥の名前(後、美味しいかなど)を教えてもらったりした。都市に近いこともあり、魔物と呼べるのはそれから見かけることはなかった。
そうして帰宅すると、玄関の前でニコニコ笑顔の母様が待っていた。それを見た父様はすべての希望を捨てたような瞳をしていた。
(父様、生きろよ)
『貴方が行きたいと言ったのが原因なんじゃ……』
ダ女神の突っ込みは無視する。
その後、父様は母様に燃やされた。どうやら馬を連れて行く姿を使用人が見ていて、それでバレたらしい。使用人も母様に付くのね。
更に3年が経ち、俺は6歳になった。そして長男のカイは今年晴れて12歳になり、王都の学院へ行くことになった。本人は嫌らしくなんとかならないか、必死にゴネたがどうにもならなかった。成人するまでの4年間王都暮らしである。さらばだ兄者。
そして今年10歳になる次男のクリスと長女のエーシャは、領都内にある学校に通うこととなった。家の中が少し平和になった(主にエーシャのいる時間が減ったから)。ちなみに三男の俺は王都の学院は行く必要はない。家を継がないので、貴族同士の人脈作りの必要がないからだ。
家督を継ぐこともできないし、役職を与えられる分けでもない(オーガスト家では基本次男には役職が与えられる)。そういうことなので成人する16歳までは自由にしていられる。その間に母様は自分たちに唯一贈れるものとして、最高の教育を施すと言っているが……。スパルタはイヤヨ。
それはそうと、5歳になってすぐの時にダ女神の上司が接触してきた。念話と俺にしか見えないうっすらとした姿での接触だった。正しく女神って感じの美人さんで、少し目元がきつそうな印象があった。ただ夜中にいきなり現れたので、一瞬幽霊かと思った。怖かった。表情はやや疲れた顔をしてた。ダ女神――アルテナのことで気疲れでも起こしてるのかもしれない。
実際の所は正にその女神アルテナの件でお上への報告、謝罪周りでの気疲れであった。どこの世界でも中間管理職とはきついものなのだ。
話の内容は、主に部下であるアルテナに関する謝罪であった。それと来るのが遅くなったこと。ちなみにアルテナのことをアホテナと呼んでた。気が合いそうだ。
ついでに謝罪の意味も込めて、固有スキルの守護をくれた。なんて良い女神様なんだろうか。
――固有スキル<女神フォルテナの守護>を習得しました――
『好きなスキル3つ習得できます。今すぐ選んで下さい』
(今すぐですか?)
『次、いつ会えるか分かりませんから』
(なるほど、すぐに選びます)
取りあえず、気になってたスキルを3つ選らんでみることにした。
――スキル<治癒魔法>を習得しました――
――スキル<魔道具製作>を習得しました――
――スキル<錬金術>を習得しました――
前提条件を満たしていなくてもとれた。さすが女神様。そう言えば、保留してるのが3つあるんだった。後でアホテナを呼び出してスキルを習得しよう。
『本当に、謝罪に来るのが遅くなってすみませんでした。アルテナのミスの事も申し訳ありませんでした』
(いえ、その事についてはもういいです。大丈夫です)
『それなら良いのですが……。それではこの辺りで失礼しますね。今世の幸せをお祈り致します。ではでは、さらばです』
最後はちょっと軽い人(女神)だった。堅苦しく感じさせないようにしてくれたのかな?
それはそうと。
(おい、アホテナ。保留していたスキル選ばせろ)
『ちょっと、その呼び方……って、フォルテナ様に会ったんですか?』
(うむ、女神様って感じの女神様だった)
『なんか意味分かりませんけど、分かりました』
そんないつも通りの会話を繰り広げた後、ちゃんとスキルを選んだ。
――スキル<闇魔法>を習得しました――
――スキル<複合魔法>を習得しました――
――スキル<身体強化(体)>を習得しました――
(そう言えばアホテナの姿って見たこと無いな。今回フォルテナさんは姿を見せてきたが、もしやアホテナは……)
『いえいえ、安心して下さい。もう凄く神々しい姿をしてますよ。見たい? 見たいですか?』
(いや、やめとくわ)
可哀想な子を見るような眼をしながら断っておく。
『ちょっとー! これを見なさいっ!?』
その言葉の後、視界に幽霊、もとい女神が現れる。
(なっ!)
思わず絶句してしまった。理由は簡単。現れた姿というのが、綺麗な金髪は寝癖でボサボサ、服はくたびれた大きめのシャツで、胸の大きさでシャツがしんどそうだ。そして口元にはヨダレが垂れた痕が……。それなのに顔は自信満々なのもポイントが高い(何の!?)。
『ふははははは、私の神々しいまでの美しさに言葉もありませんか、無理もありませんねっ! 普段ダ女神とバカにしていた相手が、こんなにも素敵な人と知ればっ!』
そんな姿を呆れた眼で見ながら、口元のヨダレを拭けとジェスチャーしてみる。
アホテナ、一瞬キョトンとした後、自分の口元に手を……そして固まった。
(女神も寝るんだな)
『ぎゃああああああああああああああああ!!』
俺の感想と共に、再起動が為され、悲鳴というか絶叫が聞こえた。耳を塞いでも脳に直接響くとか、これが防御不能の攻撃という奴か。しばらくして、絶叫が止んだ時にはアホテナの姿は影も形もなかった。
『もうお嫁に行けない。ぐすん』
知らんがなー。ところで女神の嫁ぎ先はどこなのだろうか?
そんな疑問を抱きつつも夜は更けていった。
回想終わり。最後の疑問は聞く勇気が無くて、今も謎のままである。
<女神フォルテナの守護>
固有スキル。最上位女神フォルテナの守護。大分力を押さえている。全固別耐性LV2付与。耐久、魔力、体力強化のスキルLV1を習得。お好きなスキルを3つ習得。耐久+30、筋力器用+10、幸運+5。LVUP時に、耐久+2、魔力+2、体力+1、筋力器用敏捷+0.5。
色々あったが現在のステータスは、
名前:ライリール=グラン=オーガスト
職業:伯爵家三男 種族:人族
年齢:6歳 性別:男
クラス:魔操士
レベル:10
状態:健康
ボーナス ()内はBP補正/スキル補正。ユニークや固有は除く。
耐久:+350(+0/+8)=358
魔力:+480(+0/+138)=618
体力:+240(+0/+19)=259
筋力:+35(+20/+11)=66
器用:+30(+0/+28.5)=58.5
敏捷:+55(+0/+29)=84
精神:+55(+0/+35)=90
知力:+65(+10/+84.5)=159.5
感覚:+65(+0/+68)=133
幸運:+30(+15/+1)=46
残りボーナスポイント:5
スキル:
(影魔術LV10)、(水魔術LV8)、(風魔術LV8)、(闇魔術LV6)、(地魔術LV6)、隠蔽LV10、隠密LV9、短剣LV8、危険感知LV7、魔力回復量上昇LV8、魔力感知LV8、気配察知LV7、投擲LV6、罠LV7、礼儀作法LV1、演技LV5、魔物知識LV2、動植物知識LV3、薬学LV1、細工LV1、交渉LV1、鑑定LV4、看破LV2、魔力操作LV7、瞑想LV3、魔力回復促進LV4、生活魔法LV3、強化魔法LV1、光魔法LV1、風魔法LV1、土魔法LV1、水魔法LV1、火魔法LV1、収納魔法LV1、加速LV1、計算LV8、ランニングLV2、剣LV1、魔技LV1、耐久強化LV1、魔力強化LV1、体力強化LV1、☆全固別耐性LV2、☆闇魔法LV1、☆複合魔法LV1、☆治癒魔法LV1、☆錬金術LV1、☆魔道具製作LV1、☆身体強化<体>LV1。
残りスキルポイント:80
ユニークスキル:女神アルテナの加護、第六感、魔法の素質、分析。
固有スキル:女神アルテナの寵愛、女神アルテナの贖罪、魔法の才能、暗殺者の心得、転生者、転生者への加護、フォルテナの守護。
称号:なし
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