第5話


「認知症かな」

(女はいつも疲れて見えたよ。)

「話を続けてくれ」




猫は今日もその家に向かう。

窓の前に座り、一声。窓は開かれない。

もう一声鳴いてみる。窓は開かれない。

珍しく背伸びをして部屋を見る。

机の上で睡眠薬のガラス瓶が光っている。

何か嫌な空気の中で、どうしようもなく窓に爪を立てて引っ掻けば嫌な音が鳴る。

構わず続けて、また鳴いてみる。

すると、あの老いた女はやって来た。

窓を開けて、差し出した手の中には3つの煮干し。

安心して食べる。食べ終えて顔を上げると

女の頰に赤い傷が見える。

その赤い傷が気になっても窓を閉められれば、いつもの様に気持ちのいい昼寝をする。



坂道に差し掛かる。ホームレスはゆっくり登る。

(その時に何だかおかしいとは思っていたんだ。)

「何かが起きたのか?」

(野生の勘かな。その日から3日間、その家の庭で過ごした。家の中の机にはいつも睡眠薬の瓶があった。で、3日目の朝)





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