第一章 竣工式

一話 その少女、旅人につき


「そこの旅の人! 記念コインあるよ!」

「結構です」

「記念のグッズもあるよ!?」

「いえ、結構です」

「記念に新鮮な魚安売りだ!?」

「あぁ……! う、うぅ……結構です……」

「記念の……」

「結構健康コケッコウです!」

 突然の大声に一瞬周囲の視線が一点に集中する。そこにはいかにも旅人風の装いをした少女が少し頬を紅く染めて立っていた。旅のせいか薄汚れた肌に、髪は適当に切ったのか短髪が至る所でぴょんぴょん跳ねている。貧相な体格も相まって、少女というよりはまるで少年のようだったが、くりくりと丸い赤い瞳がかろうじて少女らしさをかもしていた。

 周囲の人々の視線を集め、少女が恥ずかしそうにコソコソと人混みに紛れた事で、すぐに街は何事も無かったようにお祭り騒ぎを取り戻す。

 少女、エルピースはそのまま人で溢れかえった大通りから逃げるように横道に入ると、思わず大きなため息をこぼした。

 貿易の拠点でもある港町は今、竣工式で沸いていた。何でも国一番の立派な帆船が出来上がったらしいのだが、その船には王様だか偉い人が乗るとかで、この式典にも姿を見せるらしい。まあ、長い間めでたいこともなく苦しい生活を送って来た人々にとって、それはこの国の再興の象徴であり、喜びの象徴でもあるからして、国中から人が集まってくるのも必然と言って良いだろう。

 だが、しかしだ。旅の末にようやくこの港町まで辿り着いたエルピースにとって、竣工式など全くもって迷惑以外の何ものでもなかった。何故なら彼女は疲れ切っていて、お金もそれほど残っていない。しからば少しでも安宿で今すぐに休みたいというのが彼女の希望である。しかし、三軒ほど宿を回ったところで彼女の心は完全に折れた。まず部屋が空いていない! 運良く部屋が空いていても、代金が通常の何倍もする!

 まだまだ終わりの見えない旅だ、ここで無駄遣いする訳にはいかない。しかし足もヘトヘトだ、これ以上宿を探し歩く気力もない。

 そんなこんなでエルピースは、半ば諦観しながら賑わう街をただ歩いていたのだった。

 さてはて、流れで逃げ込んだ横道だったが、メイン通りから外れているからかさすがに人も少ないようで、心なしかほっとしながら少し薄暗い道を進んでいった。するととても控えめに酒場の看板が立っており、覗き込んで見ればこれ幸い、中もそれほど賑わってはいなかった。

「あの、えっと……ミルクをひとつ」

 早速中に入りバーテンにそう伝えると、然もそれだけかと嫌な顔をされ、汚いコップにミルクを注ぎ少し乱暴に渡された。それでも食糧にありつけただけでもありがたいと10マリーを支払って、入り口から遠い隅の席に腰を降ろす。

「今日は野宿かなぁ……」

 ミルクを飲みながらテーブルに突っ伏すと、今までの疲れがどっと瞼に押し寄せた。抗えきれないその眠気に、ほんの少しだけならいいかとエルピースはミルクのコップを掴んだまま、突っ伏してぐうぐうと寝息を立て始めた。

 ゴソゴソと、そんな彼女の鞄を漁る小さな手。

 周囲の客はそれを分かっているようだが見て見ぬ振りで、その手の主は器用に鞄から財布だけを抜き取るとさっさと店の出口へと向かう。

「んあ? あ、ん? え?」

 だがしかし、犯人が出口から出るより先に、エルピースは目を覚ました。

 そして偶然にも自分の財布を持った少年が視界に飛び込んで、意味がわからないまま財布の抜き取られた己の鞄を確認する。

「あぁぁぁー!!」

 エルピースの大声に、少年はすたこらさっさと逃げて行ってしまった。しかしこちらも逃すまいと慌てて後を追いかける。出口を出ると先ほどの横道をさらに奥に向かう緩いカーブに、後ろ姿が消えて行った。

「ちょっ、待てこら泥棒ー!!」

 見失うまいと、エルピースも必死で追いかける。

 くねくねと、細い道を奥へ奥へと追いかける程に雰囲気が暗く淀んでいくようだ。華やかな大通りの裏側、同じ街とは思えないほど横道の奥は下水の臭いがして、酷く静かで、けれども人の視線や気配はある。なんて不気味なのだろうと怖くなるのを必死に堪え、エルピースはただ犯人の背中を追った。ここで立ち止まったらまずい、そんな気がしてならなかった。

 けれども元々の体力も祟ってか、すぐに呼吸が荒くなり横腹がじんじん痛み出す。

 あ、やばい。

 エルピースがそう思った瞬間、犯人の背中が曲がり角に消えた。

 それでも何とか走ったが、少しずつ足も重くなり、遂にはとぼとぼと歩き出してしまった。

 いよいよ不穏をかもす周囲の視線を見て見ぬ振りで、ふらふらになりながらも辿り着いた先は、

「わぁ……」

海が見える、行き止まりだった。

 建物に挟まれた小道の先、本当に急に道が無くなる。直角に切れた道の先が直接海に面した、そんな不思議な場所だった。海岸もなく舗装された道のすぐ下にもう海が打ち寄せている人工的な場所。

「絵画みたい……ってそうじゃなかった!」

 景色に見とれている場合ではない、エルピースは急いで辺りを見渡したが、犯人らしき少年の姿は既にどこにも見当たらない。

 けれど、背中を見失ってからここまでどう見ても一本道だった。どこかに抜ける道も無かった筈だ。

 まさか、海に? 考えにくかった。打ち寄せる波は割に強く子供が泳げそうな海ではない。

 だとしたら。

「……気が進まない……」

 エルピースは心底嫌そうに唇を潰した。

 そう、考えられるとしたら一箇所しかない、一箇所だけ犯人が行ったであろう場所があるのだ。

「……狭そうだし暗そうだし……それに汚い……!」

 エルピースの足下に一本突き出た大きめのパイプ。

 子ども一人くらいなら入っていけるであろう大きさの管である。

 恐らく犯人は、この先に居る。

「行くっきゃないよなぁ……」

 お金がなければどうにもならない、エルピースは心底嫌だったが覚悟を決めて、慎重に手を掛け足を掛け、パイプへと降りる。下手をすれば海に真っ逆さま、そうなれば泳いだことのないエルピースを待つのは死、のみ。

 恐怖に身を震わせながら、なんとかパイプに足を掛けた瞬間……

「どわぁぁ!!」

 滑った、足が。管から流れていた水に見事に足をすくわれて。このままでは海に真っ逆さまである。

「ぬああああ!!」

 必死であった。無我夢中でパイプに手をのばし力一杯上半身をパイプに投げ込んだ。べちゃり、と勢いよく顔面が泥水に沈み込む。全身泥まみれになったが、何とか海への落下は間逃れることが出来たようだ。

 無言で顔を上げ手で汚れを拭う。達成感と惨めさの狭間で何だかよく分からない気持ちに襲われたが、ここまで汚れてしまったらなにか吹っ切れるものもある。エルピースはふんと気合いで鼻息を鳴らすと、そのままズンズンとパイプの奥へと匍匐前進、突き進んで行った。

 どれくらい進んだだろうか、振り返ると入口の光が遠く豆粒に見える頃、ようやく前方に出口のような、光はあまりないが何か別の空間が見えてきた。

 この先に犯人が居る可能性もある、エルピースは慎重に、こっそりと息を潜めて出口へと向かった。

 ひょっこりと、顔を出したそこは何やら少し開けた空間が広がっていた。誰もいない事を確認しパイプから這って出ると、開放感に一度うんと背を伸ばしてから、周囲を見渡す。

 そこは地下水道だった。レンガで綺麗に舗装され、大人が余裕で立って歩けるほどの高さ、真ん中には幅は広いが深さは踝ほどしかない水が流れ、その左右に人が一人二人すれ違える程度の通路が付いている。エルピースが進んで来たのはその水が海に排水される為の管だったようだ。

 地下水道にはランタンが一定の間隔で掛けられ、ゆらゆらと怪しく道の先を照らしている。

 左右を伺ったが、見える範囲には先ほどの少年は見当たらない。しかし耳を澄ませると、水の音に紛れて話し声がどこからか聞こえて来た。

 エルピースは再び抜き足差し足、声の方へと歩き出した。

 その地下水道はまるで迷宮のようだった。途中分かれ道や行き止まりに何度も遭遇する。けれどエルピースはたまに聞こえてくる声を頼りに道を進む。

やがて地下水道の壁にひょっこりと階段が現れた。その階段を覗き込むと、その先は少し光が差し込んでおり、話し声もそこから聞こえてくる。

 もしや出口では無いだろうか、そう思いながらもエルピースは確かめようと階段を登る。

 そして登り切ったその先で、エルピースは馬鹿みたいに口を開けたまま立ち尽くした。

 見上げるより尚、高い天井。見渡すほどに広大で人工的な四角い空間。白い石が積み上げられて造られたそこは謎の白光に照らされ不気味に照らし出される。

 そしてそこから見える正面の壁には、その高い天井までありそうな巨大な石造りの扉が聳えて、そこには翼が描かれている。次に見下ろせば空間の足下には青く美しい水が張られ、その真ん中を扉に向けて真四角の島がいくつか配されている。

 まさしくそれは古代遺跡と言った風体だった。

 エルピースが居たのはその空間を見事に見渡せるバルコニーであった。残念ながら下に降りる階段は無い、しかし元来た道を回り込めば左右に見える出入り口には辿り着けそうである。

 ふいに誰かの話し声が響き、エルピースは思わずバルコニーの陰に隠れる。

 どうやらそれは先ほどから聞こえている話し声の主だったが、残念なことに犯人では無いようだ。少しだけ顔を出し見やれば、何やら立派な甲冑を着て武器を持った男が二人。見たことがある、あれはこの国の兵士だ。そしてもう一人、髪の長い……女? 男? 背格好は男のように見えるが、その容姿や髪型は遠目からでも女のように見える。こちらは兵士のような服では無いが、それでも立派な貴族のような格好をしていた。

 犯人で無かったことに落胆しつつ、その様子を何となく隠れて見ていると、男たちが扉の脇で何か作業をし始める。その直後である。

「ぶえっくしょーい!!」

 水に濡れたまま活動をしていた代償か、エルピースは悲しくもその空間中に響くくらいのくしゃみを繰り出してしまった。

「何者だ!?」

 瞬間に、案の定兵士達に気付かれ一人がエルピースへと視線を向ける。急いで身を隠したが、兵士がこちらへカツカツと歩いて来る音が遺跡に反響する。

 こんなに軽妙な音が出る何て、なんと立派な靴を履いていることか、などと現実逃避をしている場合ではない。

 どうしよう、そもそも悪いことはしていないが兵士の剣幕は相当なものだった。そして自分もここへの侵入経路はとても言えたものではない不法侵入である。捕まったらどうなるかなんて、分かったものではない。出来ることなら逃げ切りたい!

 エルピースは兵士が来る前に逃げようと、踵を返したその時である。

「っ!?」

 階段に飛び込んだ瞬間、目の前に見知らぬ男の顔があった。余りの驚きに声も出せずに顔だけで驚愕する。

 見れば、ボロボロのマントに目深いフードを被り、少し陰った瞳の色は、影よりも鈍く黒くこちらを見つめている。

 そのまま硬直してしまったエルピースを、男はまるでそうなることを想定していたと言わんばかりに、何の迷いもなく俵のように抱え上げると、風のように階段を駆け下り先ほどの地下水道へ戻る。そして有無も言わさず足元にあったこれまた水のチョロチョロ流れていくパイプに思い切り勢い良く投げ込まれた。

 声も出なかった。ただ、少し下降しているらしいパイプを水のおかげかまあ綺麗に滑っていく自分に涙だけは出て来た。もともと泥まみれだった顔に更に新たな泥水が跳ねる。何だこれは、そうか夢か。

「ってぬぁぁ!!」

 思った瞬間にパイプから抜け現実だ馬鹿野郎と言わんばかりに岩肌に全身投げつけられた、最高に痛い。

 立ち上がる気力もなく、倒れ込んだそのままの姿勢で辺りを見渡せば、そこは自然に出来た洞窟のようだったが、先ほどの場所よりも幾分も狭苦しい、暗く湿った洞窟だった。

「ここは地下水脈だよ、俺たち以外こんなとこに来る物好きはそうはいない」

 呆けているエルピースの考えを組んだように、不意に頭上から声が落ちてきた。誘われるように見上げたそこにあった顔に、エルピースは絶句する。

「あんた……!」

「馬鹿、大声出すな!」

 絶叫する前に、思い切り口を塞がれた。しかしエルピースはその手を思い切り掴むとその顔を改めて凝視する。

 間違いない、犯人である。紛れもなく、エルピースの財布を盗んだ少年だ。

 その目力に、見つめられた張本人は戸惑ったように眉間に皺を寄せている。

 エルピースは少年を見つめたままパクパクと口だけを動かしている。言いたいことがありすぎて、何から言っていいのか分からないのである。

「……財布……!」

 そしてやっとのことで絞り出したその言葉を聞いた途端、目の前の犯人……まだあどけない少年である……は「あ」と声を漏らしてバツが悪そうな苦笑いを浮かべた。

「お兄ちゃん、もしかしてまた……」

 そしてその少年の背後から、更にか細い声が響く。

「いやぁ、まぁ、あはは」

「駄目って言ったのに……! 今直ぐ返してお兄ちゃん!」

 そこに居たのは、少年と同じ歳ほどの少女だった。大声を上げたからか少し咳き込むのを、兄と呼ばれた少年が慌てて背をさすってやっている。その少女はこの洞窟にまるで似つかわしくない綺麗でふわふわの服を着た、可憐なお嬢様と言った風貌で、いかにも擦り切れてボロボロな服を着た少年とは、どうにも兄妹には見えなかった。まあ、よく見れば同じ青い瞳をしているし、顔は似ているようにも思うが、少年は茶髪で少女は金髪、何より格好があまりにも違いすぎる。少女は唯一、この場所でとても場違いな存在だった。

 その少女はエルピースに歩み寄ると、その綺麗な服で戸惑いもなくエルピースの顔を拭いた。そして何度も何度も、こちらが気の毒になるくらいか細い声でごめんなさいと繰り返した。

「謝る必要なんか無ぇ! この街では盗まれた方が悪いんだ!」

 そんな妹の姿が気に食わなかったのか、少年は何とも不遜にそう言い放ってそっぽを向いてしまった。

「お兄ちゃん!!」

 それを責めるように、少女は少年を睨みつけるが、直後咳き込んだので今度はエルピースがその背をさすってやる。

 と、そこでようやくエルピースもハッとして少年を睨み付けた。

「な、なんだよ……」

 先ほどまで呆けていたエルピースに鋭く睨まれたからか、少年もさすがに動揺したように声を震わす。

「盗まれる方が悪いなんて事はない! 悪いことをするにしても、正当化するのは許せない!!」

 そしてエルピースは、言いながら少年の目の前まで歩み寄ると右手を少年の目の前に差し出した。

「そして追いついたんだから私の勝ちでしょ! 財布を返して! それが無いとこっちも死んじゃうの! 必死なの!!」

 これでもかと言うくらいに、目に力を込めて少年を見つめた。

 少年はその視線から逃げるように下を向いたが、少女の「お兄ちゃん」と諌めるような声を聞いて、渋々懐からエルピースの財布を取り出した。

 それを奪うように受け取ると、エルピースは心底ホッとしたように「良かった~」と呟いて、財布に思わず頬ずりをした。

 直後、男が上から降ってきた。

 ズタボロの汚れた姿で財布に頬ずりをしていたら、目の前に先ほど自分を助けてくれたようなそうでもないような、とにかく件の男が降ってきた。そして目が合った瞬間、男は何とも哀れなものを見たように何も言わずに目を細めた。

 エルピースは強く思った。何だこれ。

「あ、おかえりなさい、レイブン」

 レイブンと呼ばれた男はすぐに感情の読み取れない無表情に戻った。それからおかえりと言った少女を一瞥だけし、返事もせずにその場に腰を下ろす。

「ん、ていうか何で貴方は上から登場したの? 私あそこのパイプから……え?」

 半ば呆けながら一連の様子を見ていたエルピースだったが、ふと疑問に思い頭上を見ると、パイプの上の方に少し広めの横穴が開いていた。

「ああ、そっちからでも出入り出来るから」

 背後からあっけらかんとした少年の声が響く。

「は!? え、はあ!? じゃあ何で私はパイプをあんな恐ろしい思いして……えぇ?」

 レイブンはエルピースに視線もくれずに黙っている。話しかけたつもりが無視されてしまったエルピースは顔をしかめてレイブンをじっと見つめた。

 ボロボロのマントに身を包み、フードまで被って余り顔は見えないが、顔も薄汚れているようだ。まあ、自分も同じようなものかとエルピースは気が抜けたように溜息を吐くと、その場にどかりと座り込んだ。

「助けてくれてありがとう、財布も取り戻せたし……ついでにここで少し休ませてもらって良い? 今度は財布盗まないでよ!」

 エルピースはそれだけ言い捨てると、財布を懐に入れ抱きしめるように横になって目を瞑った。

「はぁ、随分と図太い女だな」

「お兄ちゃんが悪いのよ、可哀想にこんなに汚れて……」

 寝息を立て始めたエルピースを眺めながらの少年少女の会話に、レイブンはひどく驚いたような顔をしてみせた。

「どうしたの? レイブン」

「はは! 鳩が豆鉄砲を食ったような顔してらぁ!」

 少年と少女は珍しく呆けているレイブンに首を傾げる。滅多に表情を崩さないのに、こんな気の抜けた表情は二人も初めて見るほどである。

「女なのか………?」

 そう呟いたレイブンに、少年と少女は一瞬間を置いてから思わず吹き出して声を殺して笑い出した。

 そんなことも露知らず、エルピースは何とも間抜けな顔で夢の中だ。

 まだ腹を抑えて笑っている二人をよそに、レイブンはチラリとエルピースを見つめた。泥だらけで分かりづらいが、際立って白い肌に髪の毛も白……と言うよりはかなり薄い茶色のような、全体的に色素が薄くこの辺りではあまり見かけない風貌をしている。また、少年と間違えるほど非常に貧相な体格であった。

 財布を盗まれたからと言ってこんな所に追いかけてくる程だ、普通なら諦めるだろうに、よほど頼る者も居ないのだろう。つまり、また何かしら訳ありの少女という訳だ。

 何やら談笑を始めている少年と少女を盗み見ながら、レイブンは小さく溜息を吐く。

 この国の軍があの遺跡に来ているということは、何かあるのだろう。まだ数人だったがこれ以上人数が集まればこの地下水脈がバレるのも時間の問題だ。

「シエル、シーザー」

 真剣な声に、二人は緊張したようにレイブンに視線を向ける。

「ここを出る」

 その言葉に二人は一瞬目を見開いてから、覚悟したように静かに頷いた。




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