E.

橋の欄干に凭れて下の川を覗き込んだ時、彼女は昔話を話し始めた。

「柳?」

「そう。昔ね、お母さんが言ったの。『あなたは柳の木だからね』、って」

彼女は懐かしそうに微笑んで、遠くの秋空を眺めた。

昨日切ったばかりの、すっかり短くなった暗い色の毛先が、彼女の頬を後ろから撫でる。

風に乗って時々雲の隙間から照らす太陽が、生え際の辺りに輪を作らせた。

大きなストールに身体を包んだ彼女の強い瞳は、見えない何かを射止めるかのように自信に輝いていた。

「中学生の時だったかな。学校とか、人間関係とかで、辛い事があるでしょう。私、悔しいからずっと泣かなかったの。そしたらね、そんな私に、お母さんが言ったの」

「柳の木、って?」

「ふふ、そうよ。あなたは柳の木。派手な花を咲かせる事はないし、目立たないし、主役にはなれない。でもね、知ってる?って。柳の木はね、折れないのよ、って。どんなに雨風が強くても、どんなに重い雪がその葉の上に降り積もっても、柳は折れない。いつもその枝を柔らかくしならせて、全てのものを受け流す。強い太陽の下では人の木陰になってあげる事の出来る、あなたは強くて大きな、柳の木。って」

「そうか。良い話だね。素敵なお母さんだ」

「そうでしょう」

彼女はこちらを向いて、嬉しそうに笑った。

そして僕にこう言った。

「だからね、私は大丈夫なの。何があっても大丈夫。だからあなたも、大丈夫よ」

彼女の綺麗な顔を見て、ああ本当だな、と思う。

彼女は柳の木だ。

美しい。

だから僕は、彼女の手を握って、こう言った。

「出会えて良かった。君は素敵だ」






((これはなーんも考えずに書いた覚えがあります。だからどういうシチュエーションなのかも不明。今まで直してきた中でこれが一番わけわかんない。取り敢えず、喪服っていう単語を使ってシチュエーションを確立させてみようかな。あとはもうー、よくわからん!))

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