D. てえーいっ!!

 私が教室の後ろ側のドアを開けると、彼女がひとりで、頬杖をついて窓の外を見ていた。

 すっかり日が傾くのが早くなった、茜色の西日が当たる放課後の教室で、後ろから3番目の窓際の席に座っている。

 ガラガラ、とドアを開けた音で、彼女はぱっ、と勢いよくこっちを見た。

 それから、私の姿を一瞥して、なんだ、とつまらなさそうにもとの姿に戻る。

 私は、いつもよりも少しだけ大きく見開かれた彼女の目に見つめられて、思わずどきりとした。

 彼女は隠す素振りもなく机の上に堂々と置いている携帯を、少しだけ指で触って、また窓の外に目を向けた。

 私にはなんだか、その仕草がとても大人っぽく、綺麗に見えた。

 とても同い年とは思えない。

 私が今の彼女と同じことをしたとしてきっと、彼女と同じような空気を纏うことはできないだろう。

 何が違うのか分からないけれど、そんなに長くない黒髪から覗く、白くて細いうなじを、素直に色っぽいと思う。

 先生、待ってんのかな。

 不意にそう思う。

 彼女はいつも、どんな顔で先生と会っているんだろう。

 たいして仲がいいわけでもない私では見た事のないような、可愛らしい笑顔を浮かべたりするのだろうか。

 細いラインの引かれた二重まぶたは、先生の前ではどんな風に動くのだろう。

 先生のあの、大きくて骨ばった指先で、その綺麗な頬を撫でられたり、するのだろうか。

 大多数の周りの子たちが目立たないようにくすんだ色を選ぶ中で、彼女はいつも真っ白なカーディガンを羽織っている。

 彼女の白すぎて逆に目立つカーディガンが茜色に染まっているのを見て、そんな事を思った。

「何?何か用なの」

 はっとして彼女を見ると、彼女はまたこちらを向いて、今度は怪訝そうな顔をしていた。

 私がいつまでも入り口で突っ立っていたから。

「あ、えっと……忘れ物……」

「ふうん」

 彼女は、またつまらなさそうに指先で携帯を少しだけ触ってから、窓のほうを向いた。






 ど、どやあああ……今までで一番大幅に足したかも。

 でもやっぱ、もうちょっとなんとかなりそうな気がするんだよなあ。

 空気感、って、どうやって出すんや……。

 時間が静かにゆっくり流れてるような感じを出したいんだけどなあ。

 むずかちいー!

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