第12話秋愁の祈り
白いねときみ云う体病み果てて記憶は罪へ変わりゆくだけ
詩を書いて眠れぬ夜の友としてあるいは自傷の代わりとして
鈍麻してゆく感情に名づけてよきみの好きなお酒の名前を
ひとり寝の虚しい夜をいかに越す闘病日記傍らに置き
傷跡をジャックダニエルと名づけてシードルすらも飲めないままで
哀しみの持続力さえ切れてゆく薬によって「私」は 消され
映画館なくなって時流れゆくあなたの写真一枚残さず
写真には残らぬものの重みかなきみとのソファの座り心地
映画館閉じても日々は過ぎてゆくパスタの巻き方乞われた日さえ
あの晩に眠り損ないきみたちのささやき声を解剖してた
眠るのも食べることさえ下手になる秋愁の日々きみのまぼろし
きみの摘む紫式部萎れ果てやがて名前も忘れてゆくの
秋薔薇のレターセットを買ってのち出した手紙は途絶えたままで
はじめてのチキンラーメンあっけなく弱る体にしみこんでゆく
何ものも欲しないまま痩せてゆく天使額装する秋の夜
悲しみの夜がまた来て隣室は音信不通七光年先
秋の夜の長いほどにもわずらって武蔵野の草に埋もれたい
明けてゆく空昏いまま眠りおりピアフ聴くのは世の終わりと決め
秋雨の降りしきる頃邦画なる座頭市美し時をとどめて
追憶に慰撫されるまま夜を越しやがて雨ふる朝を待ちつつ
直截な言葉で裁きその両手首にかけてよ雷鳴を待つ
設問にYESと云えずにうずくまる「生きても仕方な いと思うか?」
疲弊だけ降り積もりゆくいたずらに折ってたたんだ 心は四角
何もかも罪科に変わる黄昏に静物群れてヴァニタスの文字
わたあめのようになりたい病める日々悲しみ一分もいらないから
白無垢の重さに耐える身もなくて病は篤く式日近づく
食べ物を拒む身にゼリーしみこんで血気水ただ滞りゆく
ひとりきり雨のさなかを歩いてもあなたの詩だけ心に灯し
歌託すあなたの言葉噛みしめて路なき航路進みつづける
歌だけは奪わせないで病すらメロディに変え奏でつづけて
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます