第6話「勉強不足」

 芽が伸びるのは当たり前だという、そういう見方もあるだろう。

 だが、それがあまりにもアンバランスだと思えるのなら。

 自分の見たものを正直にとらえ、状況を一刻も早く調査することが大事だ。


 何も知らないのだから、目の前の出来事を調べるしかない。


 調査の結果、苗が異常に伸びるのは「徒長」という現象だと判明した。

 徒長とはつまり。


「無駄に伸びること」とあった。


 うわああああああ。

 あのAAが頭の中に浮かんで、そして消えない。


 無駄にってなんだよ、すくすく伸びればそれでいいんじゃないのかよ。

 伸びる芽に伸びるなって言えば、成長が止まってくれるのかよ。

 言って聞く連中じゃないんだよ無理だろ。

 芽が出て膨らんだら花が咲く前に詰みかけてるとか、あるのかよこんなこと。


 愚痴を言っていても仕方がない。

 俺の知識のなさが招いた事態だ。

 対応しなければならない。

 しかし、どうすればいいんだろう。

 まさか伸びた芽を切るわけにもいかないだろうし。


 ネットで対策方法を探すこと数十分。


「伸びた芽を縮ませる対策方法はない」

「挿し木や挿し芽で対応する」

「日光を段階的に当てて、光に慣らしてから露地に植える」


 これらの事柄が分かっただけでも、勉強をしたと言えるだろう。

 窓に寒冷紗を張り、納屋の戸を少し開けて風を通した。

 懸命にこれらの処置を施し、次の休みには路地に植えることを誓った。


 次の週に、少し立ち直った苗を挿し芽にするために途中から切り。

 畑に植えて。

 土寄せして。

 水もまいた。

 肥料もやった。

 水に濡れた芽たちが、元気になりそうな、そんな気がした、


 そして、2週間ほど経って。

 エンドウの苗も、オクラの苗も、枯れて。


 俺の苗たちは、全滅したのである。

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「植えてみる」って、今からですか? 綿苗のたり @tortesir

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