第4話「案外、やれてない?」

 オクラの種は、そう時間を必要とせずに見つかった。

 先ほどのスーパーの棚の、別の段に備えてあったのだ。

 早速購入して、そのまま家に帰る。

 おうちに帰るまでが遠足だとは言うが、そこまでしてまっすぐ帰らなくても。

 そう自分に突っ込んでしまうような速攻ぶりだった。

 子供かよ。

 いや子供に戻りたいよ、今の時代のままで。


 新しい種も、同じようにして育苗トレーに植えてみる。

 いや、今回は手法を改良し、キッチンはさみの先で穴を掘った点が異なるか。

 改良案は、実際に試してみて結果を確認することが大切だ。

 結果としては、実に良好な結果を得られた。

 種を植えるのに適した深さと直径の穴を、指よりもずいぶんと速く掘れたのだ。

 

 ただ、水分や泥にさらされる側のはさみからしてみれば、いい迷惑だろう。

 ステンレスのはさみでないと、ひとたまりもなく錆びてしまうに違いない。

 そしてステンレスのはさみであったとしても、錆びないわけではない。

 

 ステンレスは、表面に酸化皮膜が形成され、それが金属の酸化を防ぐ。

 ラップでコーティングされているようなものだ。 

 逆に、その膜の形成が妨げられれば、参加しにくいという特性は失われる。

 条件が悪い方にそろえば、錆びるというわけだ。

 そして、水分と泥の付着は、ステンレスの膜の形成に影響を及ぼす。 

 だから、付着物があれば洗浄して除去し、その後十分に乾燥させる必要がある。


 機材は、取り扱いにもメンテにも、十分に気を使うべきだ。

 昔、メンテに手を抜いて、機材を痛めてしまったんだよねぇ…。

 今でも反省している。


 さて、育苗トレーもいい感じで使い切れた。

 種が少々残りはしたが、これは露地植えにするなり、プランターを使うなり、

 対応を考えよう。

 すぐにプランターを買いに行かないのかって?

 それはそれで楽しいから行ってもいいんだけど、永久ループ確定だからな。

 お出かけは計画的に。

 

 あとは、これらの芽が出てきたら畑に移植して成長を待てばいい。

 よくは知らないが、発芽までに1週間はかかるだろう。

 それまでに庭側の準備だ。

 石灰や元肥を入れてよく耕す、いわゆる土づくりを進めておこう。


 手持ちの農具で一番、土を耕せそうなものはショベルだ。

 庭は砂を多く含む地質だから、長年の雨で、がちがちに固まっている。

 そんな土壌の状態で、しかも素人に鍬で深く掘るなんて難しい。

 ショベルなら縁に足を乗せての体重利用も可能だしな。

 愛用のこれで土を掘り上げて、ふかふかの状態にしてやろう。

 庭から畑にランクアップさせてやれば、苗だってうまく根付いてくれるはずだ。


 なんだよ俺、素人の見よう見まねの割には、いい感じで作業出来てる。

 センスとか才能とか潜在能力とか、そういうの、案外あるんじゃないのw



 …そう思っていた時がありました、とさ。

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