第370話 女子会始まる
ゲーム大会も終わり、そろそろ眠くなってきた。
「みんな眠そうだし、お開きにしようか」
それぞれが寝る準備をして、布団に潜り込む。
男四人は俺の部屋に、女子メンバーは隣のリビングで。
「電気消すぞー」
俺は部屋の電気を消し、ベッドにもぐりこむ。
布団に潜り込み、早くも高山のいびきが聞こえてきた。
寝付くの早くね?
今日は色々とあったけど、楽しかった。
もし下宿を始めて、人がいっぱいになったら毎日こんな風なのか?
俺の父さんや母さん、雄三さん達もこんな毎日を過ごしていたのだろうか?
『ねちゃった?』
『起きてるよ。どうしたの?』
『楽しかったね』
『うん』
『なんだ、起きていたんだ』
『真奈もまだ起きてるよー。ねぇねぇ、恋話しようよ』
隣から聞こえてくるひそひそ話。
古い建物の壁は薄いですね……。ほとんど筒抜けじゃないですか。
『杏里姉はさ、司兄と二人で住んでて平気なの?』
『平気というと?』
『ほら、あれだよあれ。ま、毎日あれじゃないの?』
真奈さん、いったい何を聞いているのかしら?
『そうだね、毎日大変かな』
『や、やっぱり大変なんだ……。体大丈夫?』
『うん。たまに疲れちゃって私も寝てることがあっても、司君が頑張ってくれてるから』
『そ、そうなんだ……』
『そ。朝起きたときとか、司君が作ってくれた朝ごはん食べると幸せーって感じでね』
そこで会話は一時的になくなり、誰も言葉を発さなくなった。
『そ、そうだよね! 二人で家事するって大変だもんね! あ、あはははは』
真奈の薄い笑い声が響く。
『あ、杏里も毎日大変なんだね。私は高山君となかなか二人っきりになれなくて』
『彩音はクリスマス、どうだったの? 私まだ詳しく聞いてないよ?』
『えっと、二人でご飯食べて、彼の部屋で映画見て……』
『で、どの後は? 何もなかったの?』
真奈がグイグイいく。そんなお年頃ですね、はい。
『な、何もなかったとは言わないけど……。ご想像にお任せします!』
『ふーん、ふーん、ふーん。へー、青春してますなー。井上さんは? 遠藤さんとどうなんですか?』
『わ、私? 私は、何も、ナイヨ。まだ、今は……』
『まだ、今はですね。ほぅ、それで彼にはどうしてほしいのかしら?』
真奈の口調が変だ。
『もう少し積極的になってほしいかな……。私の事すっごく考えてくれるのはわかるけど、こっちがアプローチしても気がつかないんだもん』
井上さんが少しご立腹です。
遠藤、もっとグイグイ行こうぜ!
『遠藤さんって奥手なの? ちょっと意外』
『まじめすぎ。クリスマスの日だって、キスしただけ──。な、何でもない! 何もないよ!』
『どこで? どこでチューしたの?』
『ひ、秘密!』
真奈の攻撃はその手を緩めない。言葉の弾幕で相手を撃沈させている。
『井上さん、真奈はまだ中学生なの。でも、大人の世界も知る必要があるの。わかって、くれますよね?』
『真奈ちゃん……』
『教えて! どんな言葉で、どこで、どんな風に!』
『だ、誰にも言わないでよ? ケーキを喫茶店で食べて、窓から見えるイルミネーションを見ながら……』
『き、喫茶店! 沢山の人に見られてるのに!』
『個室! 個室だったの! 二人っきりで、ロウソクの灯りが奇麗で、拓海もかっこよくて……』
『セリフは? 何か言われたの?』
『目、閉じて……。って、一言だけ』
いやっふぅー! 遠藤様、何しちゃってるんですか!
なんだか体がかゆくなってきた。でも、この話を聞き逃すわけにはいかない!
しょうがない、壁が薄いんだもの……。
そのあとも俺の事や高山の事、いろいろと話が続き、女子トークは花を咲かせる。
『決めた! 良君が高校で一緒になったら、告る! それまでは、待つ!』
『弟でいいの?』
『かわいい! 司兄よりもいい男になる! いえ、私がいい男にする!』
『司君もそれなりにいい男の子だよ?』
フォローありがとうございます。
『高山くんはそれなりかな? でも、いつもみんなの事考えてくれて、優しいし』
『拓海も私の事いつも一番に考えてくれる。かっこいいし、まじめ。私にはもったいないかもね』
なんだかんだ言って、みんなそれなりにいい感じですね。
女子メンバーの本音が聞けて良かった。高山も遠藤も、良君もそして俺もみんな幸せ者だ。
そして、夜も更け次第に話し声が聞こえなくなっていった。
俺も夢の世界に旅立つだろう。明日もきっと忙しくなる。
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