第270話 確かめ合う想い


 俺は心浮かれながら、風呂の準備をし、その間に杏里は私服に着替え、ご飯の準備。

俺も私服に着替え、念入りにベッド周りの調整を行う。


 綺麗に整えたベッド。ベッドのすぐ隣に設置されているルームライトの調整も行う。

よし、ムードある感じになった気がする。


 枕元にも色々と整え、俺の聖戦準備は終わった。

念のため整ったベッドにダイブし、問題ないか確認。オールグリーン。

再びベッドを整える。


『司君、ご飯できたよー』


「いまいくー」


 この後訪れる聖戦の事を考えると、俺の心は浮きっぱなしだ。

杏里に呼ばれ用意されたご飯を一緒に食べる。

杏里の料理スキルも高くなり、俺のサポート無しでもしっかりとご飯が出てくるようになった。


「杏里の作ったご飯はうまいな」


 初めて食べた時の事を考えると、かなり上達している。


「ありがとう。司君においしい物食べてほしいし、いつかお母さんになる日が来るんだし……」


 自分で言っておきながら、杏里は頬を赤くしている。

ま、いつか俺も父親になる日が来るんだろうな。

その時、俺は胸を張って杏里の良き夫になっているのだろうか?

良い父親になっているのだろうか?


 まだまだ先の遠い未来の話ではあるが、いつかやってくる未来。

その日までの俺は日々精進しよう。


 食事を終え、杏里が先に風呂へ入る。その間俺はスマホで予習だ。

いつもよりだいぶ長い時間風呂に入っていたが、さっきやっと出てきた。


 頭タオルはいつもの事ですが、胸から太ももの付け根まで大きなバスタオルを巻き、俺の目の前に現れた。

出てきたときは、さすがに一瞬だけど息が止まった。

杏里も恥ずかしそうにしていたが、そのまま俺の隣に来て、耳元でささやく。


「お風呂、空いたよ……。先にベッドに行っててもいいかな?」


「あぁ、もちろん。湯冷めしないようにな」


 杏里の顔が赤いのは湯上りだからなのか、それ以外に理由があるのか。

俺もさっさと風呂に入ろう。そして、早く戻って来よう。

杏里はそのまま俺の部屋のベッドにゆっくりと歩いて行った。


 杏里の後姿がものすごく色っぽい。

そして、肩甲骨やうなじが男心をそそる。

そんな杏里を見送り、俺は風呂場にダッシュした。 


 頭を二度洗い、体も三回洗った。

いつもよりも念入りに洗った。超洗いまくった。

落ち着くんだ。ここで焦ってはいけない。


 風呂から上がり、いつもの様にラフな格好になり、髪も即乾かす。

待っている時間がおしい。鏡を見て自分の顔をチェックする。

歯も磨いておくか。歯もいつもより念入りに磨く。


「はぁぁぁぁ……」


 自分で自分の息が臭くないか確認。

うん、フレッシュな香りだ。

……もう一度磨くか。


 いつもより念入りに風呂に入り、俺の聖戦へ向かう準備は整った。

台所に行き、買い置きしておいた栄養ドリンクを一気に飲み干す。

今日は牛乳ではなく栄養ドリンクにしておこう。


 そして、最終確認。

スマホで保存していたサイトを読み、スタートからゴール。

そして、ゴールの後のアフターケアまでをサラッと読み直す。

予習した通り、しっかりと覚えていた。

スマホの電源を切り、自分の部屋にゆっくりと入る。


 部屋の電気は消えており、ルームライトだけが薄らと光っている。

ベッドには杏里が向こう側を向いて布団に入っているのが目に入った。

ゆっくりとベッドに近づき、そっと布団にもぐりこむ。


「んっ……」


 杏里の声が聞こえる。

薄暗い中、杏里の顔を覗くと天使の笑顔で寝ている。

その寝息は聞いている俺の耳に入り、心を癒してくれる。


 ん? 寝息?

杏里の耳元でささやく。


「あ、杏里さん?」


 返事が無い。


「杏里? おーい」


 さっきよりも少し大きめの声を出してみた。


「んにゅ……。つ、かさくん……」


 ま、まさかとは思うけど……。

そーっと杏里の手首をつかみ、持ち上げてみる。

おう、杏里の反応があーりません。

 

 そ、そんな事ってあるのか?

あっちゃダメだろ? なぁ、杏里起こしてもいいのか?

狸寝入りじゃないよね?


「杏里? 寝ているのか? お、起きないんだったら悪戯するぞー」


 ……やはり反応が無い。

嘘でしょ? ここまで来たのに。

準備したのに! まじかよ!


 心がぽっきりと折れそうな俺は、念のため本当に寝ているのかを確認する。

軽く唇を唇でふさいでみた。


 やはり無反応。

何だかね。さすがに寝込みを襲うのは良くない。

折角色々と準備したんですけど!


「ま、俺達は俺達のペースでゆっくりと進んでいきますか……」


 杏里の頬にキスをして、隣で寝る事にする。

きっと、杏里もこんな事になるとは思っていないだろう。

少し、いやかなり残念だけど、俺は俺のペースで。


 杏里の髪、まだ乾いていないな。

隣の部屋からドライヤーを持ってきて、杏里の髪を乾かす。

杏里の頭は俺の膝の上。そういえば、杏里は膝枕が落ち着くと言っていたな。


 杏里の髪もすっかり乾き、長い髪を束ねゴムでまとめる。

これをしないと、朝大変なことになるらしい。

長い髪は杏里によく似合うけど、色々と大変だよな。

ふと、杏里の髪からいい匂いがしてくる。


 さて、俺も寝ますか。

杏里の隣にもぐりこみ、寝顔を眺める。


「ふぅ……」


 ルームライトに照らされた杏里の表情はまるで眠るお姫様。

その隣に俺がいるけど、たまに本当に俺の彼女なのか不安になる。

もしかしたら長い夢でも見ているんじゃないのかって。


 俺も目を閉じ、杏里を抱きしめながら寝る事にした。

色々と残念だけど、今はこれで十分。


 ふと、杏里の腕に力が入り、逆に抱きしめられた。


「杏里?」


 ゆっくりと杏里の瞼が開く。


「ごめん、少し寝ちゃったかも」


「疲れているんだよ。今日はもう寝ようか」


 俺は元気だし、色々とマックス状態ですけどね!

ここはかっこよく、ナイスなところを見せておきたい。


「無理してない?」


 何だか杏里に見透かされているような気がする。


「あー、まー、えーっと……」


 苦笑いでごまかそう。


「ふふっ、司君らしいね。私は無理してないよ、いいよ……」


 杏里に抱きしめられ、その胸に俺の顔が埋まっていく。

いい匂いだ、そして落ち着く。


「杏里……」


「さっきね、夢で司君と一緒にご飯食べていたの。一緒にお風呂に入って、髪を乾かしてもらって。そしたら、本当に髪の毛乾かしてもらってて、びっくりしちゃった。膝枕、ありがとう……」


 杏里の腕に力が入ってくる。


「俺は杏里と一緒に、ずっと一緒にいたいよ。杏里は俺と一緒に、ずっと一緒に居てくれるか?」


「もちろん。私も司君とずっと一緒にいるよ。一緒に沢山思い出を作っていこうね」


 俺達は愛を確かめ合うようにお互いに抱きしめ合い、互いに求め合った。

俺達はこれからもずっと、一緒だ。夫婦になっても、子供が生まれて家族になっても。

年をとっても、じーちゃんとばーちゃんになっても、俺達はきっと二人で一緒にいる。

俺達は、家族になるんだ。


 そんな想いをお互いに確かめ合い、俺達は朝を迎えた。

俺の腕の中に杏里がいる。

杏里は俺の胸で、天使の寝息をたてている。

俺はこの天使を、死ぬまで守り抜いて行くと心に誓った。



【後書き】

こんにちは 紅狐です。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

さて、今回のシーンですがお互いの想いを確かめ合った回になっております。


少し恋愛とは違うような気もしましたが、想い合う二人に訪れる自然な流れだと作者は思っております。

実家のシーンもあれこれありそうですが、そこはごにょごにょ。


さー! 次話より、いよいよ文化祭に向けて動いて行きます!

どんな展開になっていくのか、ご期待に応えられればと思います。

引き続き、当作品をよろしくお願いいたします!


☆追伸☆

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