第267話 最強メンバー集う
「では、今日は初日なので、簡単に自己紹介をしていきましょう!」
司会進行を高山にバトンパスし、打ち合わせに参加することにした。
遠藤はパソコンを操作し、議事録を作ると。
タイピング速度は速いし、キーボードを見ないで正確に文字が打てるらしい。
遠藤も隠れた技を持っているんだな。
「まずは私、高山と申します! 姫川さんと同じ班で主に会場となる場所の大道具や機材などのまとめ役をさせていただきます!」
元気で大きな声の高山。
ハキハキと遠くまで聞こえる声は、聴いていて気持ちがいいもんだ。
次に席を立ったのは杉本。
「えっと、杉本です。私も姫川さんと同じ班で、今回のイベントでは予算管理や書類関係を担当します。それと、会場の飾り付けなどの担当も行いますので、よろしくお願いします」
杉本は少し照れながら、それでも後ろまで聞こえる声で話す。
普段はそんなに大きな声で話さない杉本。
やる気を感じるな。
「遠藤です。この度は今回のイベントに参加して頂き、誠にありがとうございます。僕の方では進行状況の管理、学校側への対応や手配などを担当します。学校側への対応が必要な場合は、声をかけてください」
事前に話し合っていた各担当。
杏里は代表としてイベントの内容確認や最終判断をしてもらう事にして、特に現場側の仕事を振っていない。
代表は常にフリーであるべきなのだ。
「天童です。今回のイベントでここまでの多くの人に集まっていただけ、感謝しております。皆さんと一緒に今回のイベントを成功させたいと思っています。私の方は主に全体スケジュールの管理、外部との業者対応などを行う予定です。何かあればすぐに声をかけてください」
そして、最後に杏里が席を立つ。
「姫川です。お忙しい中お集まり頂き、本当にありがとうございます。『ハイスクール・ウェディング』を成功させるため、皆さんと一緒に頑張っていきます。是非、皆さんの力を貸してください。よろしくお願いします」
――パチパチパチパチッ
会議室に拍手の音が響き渡る。
集まってくれたみんなが杏里にエールを送っているようだ。
「はいっ! それでは集まって頂いた皆さんにも簡単に自己紹介してもらいたいと思います! では、前の席の方から順番にお願いします!」
高山が司会の力を出す。この人数だ、それなりに時間はかかるだろう。
「写真部の三浦です。今回は最高の写真ができる。自己最高となる写真の被写体はあなたです!」
と、熱い視線を杏里に送っているのはどっかで見た事のある顔。
「えっと、もしかして夏祭りとかに会っていませんか?」
思わず口を挟んでしまった。
「おっと! ミーの事を覚えているのね! いいね! 今回は超協力するから、期待マックスでよろしく!」
まさかの写真部エース。
でも、その腕は確かだ。今でも夏祭りで撮ってもらった写真は部屋に飾ってある。
浴衣姿の杏里は、可愛かったな……。
「はい、ありがとうございました。次の方ー」
夏祭りの出来事を思い出していたが、高山に現実へと引き戻される。
はい、早く進めないとね……。
「華道部部長の二階堂です。結婚式には華が必要です。四季折々の花、そして花嫁を飾る美しい華を、華道部全てのメンバーにてご提供したいと思います」
式と言えば華は必須。
しかし、俺達のメンバーで花を準備するなら花屋さんに丸投げしただろう。
なんとも力強い。あなたのような方を、私達は待っていました!
そして、次々に自己紹介が進んでいく。
「柿沼です。吹奏楽部部長をしております。音楽は生の演奏が一番。今回、私達の部では全ての場面で音楽を演奏します。姫川さんの希望する曲を是非教えてください」
「料理研究部部長、内山です。フルコースは難しいかもしれませんが、ご来場される方皆さんのお腹を満足させる料理を提供しますよ」
「辻本です。手芸部副部長を務めております。式場では色々な物が必要になります。それに、花嫁の衣装も。私達もドレスに関われることなんてめったにありません。ぜひ、協力させてください」
「ダンス部の城山です。今回は部長に変わり、出席させてもらっています。今回のイベントでは余興の時間もあると思いました。その時に我々の華麗なダンスを是非見ていただきたいと思います」
「演劇部大道具責任者の百瀬です。式場の作成、披露宴会場の準備、当日の役者設定。大道具から小道具まで何でも任せてほしい。部員全員が今回のイベントで今までにない位に盛り上がっている。是非全員参加させてほしい」
何だかそうそうたるメンバーが集まってしまった。
どの部も全員参加となり、一部の部からは部長自ら来ているようだ。
他にも、茶道部、奇術部、新聞部、美術部、映画研究部など文化系の方々が参加の意思を表示している。
奇術部は余興で出し物をしてくれるし、茶道部はその場でお茶を提供したいと。
美術部は会場で飾る絵画や彫刻の提供を、新聞部は今回のイベント自体の特集を組みたいらしい。
映画研究部はドキュメンタリーとして、撮影をしていきたいと申し出があった。
折角だし、記録として残してもらおう。
「元空手部、塚本だ。後ろにいるメンバーと共に会場の警備や来場者のサポートをする。姫の安全の為には必須だろ?」
はい、会長ありがとうございます。
「えっと、ボクで最後かな?」
井上が席を立ちこっちを見ている。
「陸上部の井上です。と、特に特技は無いんだけど、みんなの力になれればって思って……。いいかな?」
杏里が井上に向けて、優しく微笑みながら声をかける。
「もちろん。一緒にイベントを成功させましょう」
「あ、ありがとう! 頑張るよ!」
ここにいるだけでも結構な人数だが、各部の後ろにはまだ数十名単位で部員がいる。
その部員たちが俺達の企画したイベントに参加してくれる。
もしかしたら百人以上になるんじゃないか?
「ハイッ! みなさん、自己紹介も終わりましたね! いやー、こんなに協力してくれるとは本当に嬉しいぜ! 絶対に成功させような!」
ふと、隣にいる杏里の方を見てみると、うっすらと瞼に光るものが見えた。
手を膝に乗せ、力強く握っている。
杏里が小声で俺に話しかけてくる。
「司君、私すごく嬉しいよ。こんなにみんなが協力してくれるなんて……」
俺も小声で杏里に返事をする。
「そうだな。みんな杏里の為に集まったんだ。これからが大変だけど、俺がしっかりサポートするからな。心配するなよ」
杏里は小さく頷く。その瞼に光るものはもうなかった。
資金もそれなりに集めた。
集まってくれたメンバーはある意味最強メンバーだ。
もしこれで失敗したら、きっと俺達の力不足。
事前の準備、スケジュール、各種手配。
これから俺達の力が試される。
高山に視線を移す。
無言で高山はウィンクしてきた。
うん、いつもの高山らしいね!
「それでは、これから簡単ですが、当日までのスケジュールと班構成について話し合っていきたいと思いまーす! まずは――」
高山もしっかり稼働している。
しかし、ひたすら無言でタイピングしている遠藤はすごいな。
さっきからタイピングの音が響いているが、その顔が真剣だ。
始まる俺達の一大イベント。
ここまで来たら成功させるしかないよな!
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