第266話 有志達との初顔合わせ


 今日はいよいよ有志達との初顔合わせだ。

今回のイベントで成功するかしないかは、どれだけの人が協力してくれるかが大きなポイントだ。


 ここ数日で色々とスケジュールを決める事が出来た。

主に当日の流れを箇条書きにして、何をするか決めていった。

まだ、全てが決まったわけではないので、まだまだ詰めていかなければならない。


 問題だった資金の問題も恐らく解決することができた。


 商店街のオッチャンからは何と二十店舗以上のお店から資金を調達してくれた。

俺の知らない店まで入っている所から、結構色々なところに声をかけてくれたらしい。

そして、その集まった金額も何と三十万円。


 学校から渡された予算よりも大きな金額になった。

オッチャンありがとう!


 そして、式場の方からも連絡があり、今回は十万円の予算が出たらしい。

協賛をいただいたうえ、今回のイベントで黒金さんも協力してくれることになった。

アドバイザーと言う立場になるらしく、直接イベントには参加しないが、俺達の相談に乗ってくれるらしい。

もし、俺達や他の誰かが式を挙げると言ったら是非この式場をおすすめしよう。


 学校から言われた予算と合わせて合計五十万。

この位の金額があれば大分余裕ができるはず。


「いよいよだね」


 杏里の顔がキリっとしている。

高山も杉本も、おまけに遠藤も緊張しているようだ。


 ポスターを校内に貼ってから数日経過し、今日が有志の集まる日。

集合場所は第一会議室。それなりに広い部屋を予約したが、何人来てくれるのか……。

扉を開けたら誰もいなかった。とか、ないよね?


「杏里も緊張してるの? 私も緊張してるんだよー。もし人数が少なかったらきっと私の書いたポスターが原因……」


「そ、そんな事無い! 彩音のポスターは完璧だぜ!」


 おろおろしている杉本に高山がフォローを入れている。


「いや、二人は絶対に来る」


 遠藤がサラッと一言。


「ん? 誰が来るのか知っているのか?」


「あぁ、ポスターを貼った日に、参加したいと連絡があった」


 二人確保! 遠藤の友人だろう。このクラスでは別の出し物があるから、そんなに多くの人が参加してくれるわけではない。

それに部活や委員での出し物もあるし、何気にみんな多忙なのかも知れないな。


 時計を見ると集合時間十分前。


「行くか」


 俺が資料を片手に席を立つ。


「行きますか!」


 続いて高山。


「行きましょう」


「行くとしますか」


 杉本と遠藤も席を立つ。


「みんな、がんばろうね」


 最後に杏里が席を立ち、俺達は自分たちの教室を出ていく。

そして、無言で廊下を歩き、会議室前までやって来た。


 中から何の音も聞こえない。

誰もいないの? もしくは、遠藤の言っていた二人だけしかいないのか?

心拍数が上がってくる。こんなに緊張するのは耳かき以来だ。


「杏里……」


 杏里に声をかけ、そっと肩に手を乗せる。


「大丈夫。きっと、私達ならできる」


 杏里の瞳に力を感じた。


――ガラララララ


 杏里が会議室の扉を開ける。

ゆっくりと杏里が歩いて入り、俺はその後を追うように会議室に入った。


 そして目に入ってくる大勢の生徒。

見た事の無い生徒がほとんどだが、間違いなく俺達の学校の生徒だ。

そして、その中に良く知った顔が見えた。


 井上がいる。

こっちに視線を向け、小さく手を振っている。

なんだ、井上も来てくれたのか。


 集まってくれたみんなは、準備された長机に揃えられているパイプ椅子に座っている。

そして、俺達は会議室の黒板前に設置された長机に資料を置き、パイプ椅子に座った。


 パッと見た感じ二十人くらいはいるだろうか。

あ、後ろの端っこに会長がいた。

ん? 椅子に座らず、一番後ろで立っている生徒も十人以上いる。

何で座らないんだろうか……。


 杏里が席を立ち、代表として挨拶をする。


「初めまして。今回、文化祭のイベント『ハイスクール・ウェディング』で代表を務めさせていただきます、姫川と申します。こんなにも多くの方が参加していただけるとは思っておらず、大変嬉しく思います――」


 杏里の挨拶から始まり、俺や高山、杉本と遠藤も手短にあいさつを行う。


 そして、あいさつも終わったあと、なぜ今回のイベントになったのかの説明を杏里が行う。

事前に用意した資料を配布し、少子化対策をメインに結婚式を見てもらう事により、結婚に対して良いイメージを持ってもらう事が目的だ。

そして、当日までのスケジュールを簡単に話す。


「――と、ここまでは現時点で決まっている内容です。これから決めなければいけない事。そして、当日イベントを成功させるためにも事前の準備をしっかりとしなければなりません。是非、皆さんの協力が必要です。一緒に、イベントを成功させるためにその力を貸して下さい」


 杏里が頭を下げている。


「お願いします! 俺達だけでは成功させるのは難しい、みんなの協力が必要なんです! お願いします!」


 俺も頭を下げ、みんなにお願いをする。


 「「お願いします!」」


 横目で見ると高山も杉本も遠藤も俺と同じように頭を下げている。 


――パチパチパチパチッ


 小さな拍手が聞こえてきた。

ふと目を向けると、井上が一人席から立ち拍手をしている。


「ボクは協力するよ! ボクがつらい時、みんなが側にいてくれた。今、ここで恩返しをさせてほしいんだ!」


 井上が大きな声で叫ぶ。

井上のつらい時……。もしかして、夏の大会の時の事か?


「ありがとう、一緒にがんばりましょう!」


 杏里が顔を上げ、微笑む。


「俺も参加していいよな?」


 少し低い声で会長が声をかけてくる。


「も、もちろんですよ! 是非、お願いします!」


 思わず返事をしてしまった。


「ついでに後ろで立っている奴ら。こいつらも全員参加で問題ないよな?」


「えっと、後ろの方々は?」


 さっきから不動でずっと腕を後ろで組み、真っ直ぐ正面を向いている。

何となく、軍隊のようなイメージを持ってしまった。


「うちのメンバーの十人衆だ。こいつらはなんでもできるし、使えるぜ?」


 杏里に視線を向ける。

杏里は無言で頷く。続いて他のメンバーにも視線を向けた。

全員無言で頷いている。はい、採用決定!


「もちろんです」


「「よろしくお願いします!!」」


 後ろの全員が全く同じ動きをし、頭を下げてくる。

なにこれ、意思統一してるの? 少し恐いんですけど。


 こうして、ここに集まってくれたメンバーは全員参加してくれることになった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る