第247話 呼び出された理由

「おー、天童! 久しぶりっ!」


 駅前で高山達と合流し、久々に二人の顔を見た。

杉本は相変わらずコンタクトで、外行きの姿格好をしている。

いつもの学校で見る真面目な姿と見比べると、本人だと分からない。

学校でもこんな感じになってればいいのに。


 そして、高山。スーツじゃないのはありがたいが、疲れているようだ。

目の下が黒くなっているな。徹夜でもしたのか?


「おっす、久々。珍しいな、ランチに誘って来るなんて」


 高山が杉本とデートしているついでの、お誘いランチだったのだろうか?


「まぁな。ちょっと急ぎで伝えないといけない事があってさ」


 例の肉の件でしたっけ?

確かに消費期限とかあるよね。高級お肉、良いですね!


「杏里、元気だった―?」


「元気元気。司君の実家に行って来たけど、楽しかったよ」


「プチ旅行だね! いいなぁー、私は今年も家に缶詰ですよー。今年は高山君と一緒だけどさ」


 あれですか? もしかして、まだ続行しているんですか?

高山の目の下が黒いのって……。


「立ち話もなんだし、ランチに行こーぜ!」


 高山に先頭を任せ、俺達パーティーは一列に並んで着いて行く。

さて、今日はどんなところに連れて行ってくれるんだろうか?


 着いたのはアーケードとは反対側の駅前。

普段はあまりこっちには来ないんだよね。


「着いたぜー」


 着いたのはお寿司屋さん。

おっと、まったくの予想外。

お昼からお寿司とは、贅沢じゃないですか。


「ここで食べるのか?」


「あぁ、ここはランチがお得だ。しかも学割がある」


「一回だけ高山君と来た事あるけど、安いしおいしかったよ」


「そうなんだ。彩音も来た事あるんだね」


「よし、入ろうぜ」


 高山を先頭に店内に。

おぉ、大きな水槽に魚が泳いでいる。

……こいつも食べちゃうのかな?


「らっしゃい! 四人かい?」


「四人でお願いします」


「はいよっ! っと、ボックス席全部埋まっているから、座敷でいいかい?」


「席は四人一緒なら何でもいいです」


「おーい! 四名様、座敷でぇー」

 

「はーい!」


 案内され、座敷に移動する。

ふぅー、座れるっていいな! 結構荷物重いんですよね。


「天童も姫川さんも学割ランチでいいかな?」


「えっと、内容がちょっと分からないのは……」


 杏里が困惑している。

確かにそれでいいかと聞かれても、内容が全く分からないのはちょっとね。


「俺も分からないぞ?」


「おっと、失礼。これがメニューだ」


 『学割ランチ』と書かれたメニュー。

内容は『大将のお任せ握り』『本日のお通し』『日替わり汁』『茶碗蒸し』 八百円。

何だ、普通じゃないか。安いのがお奨めなんだろうか?


 メニューの下の方を見る。

『十八歳未満、学生さんに限りお代わり自由』。


 なん、だと?

お寿司のお代わりができるのか?

好きなだけお寿司れるんですか?


「高山、お寿司おかわりできるのか?」


「あぁ。ネタは選べないけど、大将のオススメを腹いっぱい」


 俺と杏里、そして高山の視線が重なり、無言で皆うなずく。


「すいません! 学割ランチ四人前で!」


「かしこまりましたー。お茶です、熱いので気を付けてくださいね。では、しばらくお待ちください」


 みんなでお茶を飲みながら、ここ最近の事の話で盛り上がる。

案の定、高山は昨日の夜も遅かったようで、最近は背景も手伝っているらしい。

高山、お前の目指している所はどこなんだ?


 杉本は今回の夏イベントで完売したらしく、次作にも期待されているらしい。

今回のイベントは参加できなかったが、次回は是非直接参加してほしいと要望も出ているらしい。

なんだ、杉本って結構人気があるのか?


 俺達も実家に行ったことや墓参りした事。

実は、杏里と俺が同じ病院で生まれた事や親同士が繋がっていたことを話した。


「メモしなきゃ……」


「ん? 彩音、何か言った?」


「な、何でも! 運命ってあるんだねー」


「お待たせしました!」


 待ってました!

現れたのは大きなお盆に乗ったお寿司の山。

ホワイ? 初めからこの量?

数えてみると二十貫。多くないか?


「今日もおいしそうだねっ」


 杉本は少し苦い顔をしながらお寿司を口に運ぶ。

俺もさっそくお箸を割り、食べ始める。

お寿司の食べ放題、それの金額。安くないですか!


 杏里も丁寧に箸を使い、お寿司を口に運んでいる。

うん、杏里も満足しているようだ。

流石ですね高山先生。


「で、高山はなんで俺達を呼び出したんだ?」


「あ、すまん。すっかり忘れてた。これが当たったんだよ」


 高山のバッグから一通の封筒が。

そして、その封筒から何やら怪しい券が……。


「また何か当てたのか?」


「あー、いや、まぁ、当たったと言えば当たったんだけど……」


 封筒の名前を見ると『天童 司』。

俺の名前が書かれている。


「何で俺の名前が?」


「天童の名前で応募したら当たっちゃってさ」


 何に応募したんだよ。

しかも、なんで俺の名前を勝手に!


「詳しく話してもらおうか?」


 俺は高山から封筒を貰い、中身を確認する。

隣では杏里が口をモグモグさせながら、俺の持っている封筒に熱い視線を送っている。

恐る恐る、中身を封筒から引き出す。


――ドクン


『結婚式 ご相談チケット』


 何かの見間違いか? 結婚式?

心臓が高鳴る中、俺は裏面にも目を通す。


『男女各一名ずつ、当式場にて結婚式のご相談を無料でお受けいたします。当日、二人分のお食事も式のプランに合わせてご提供いたします』


 高山、一体お前は何を当ててるんだ?


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