第95話 自習室再び


 テストが終わり、新しいグループでの生活が始まる。

高山と杉本の試験結果を聞いたが前回よりも良い結果になっていた。


 そして、試験の終わった放課後、俺達はいつものように自習室にいる。


「まさか、これから勉強とかないですよね?」


 正座をしながら杏里に話しかける高山。

やっと勉強から少し解放されると思ったのに、まさかそんな事無いですよね。


「いえ、しばらくは休んでいいと思いますよ。詰め込みは良くないですから」


 高山の顔が和やかになる。

隣にいる杉本もほっとしたような感じだ。


「でも、テストの結果に基づいた対策はこれから必要ですね。来週にでも一度対策を練ってみましょうか」


 杏里はやる気だ。ま、その分成績向上になるのであれば、悪い話ではない。

俺もおかげさまで良い成績を残すことができた。


「で、今日はこれからどうするんだ?」


 別に勉強するわけではない。

でも、放課後俺達は集まっている。


「教室ではちょっと話しにくいので。えっと……、映画、みんなで行きましょう」


 笑顔でみんなに話しかける杏里。

俺を含め、みんなの顔が笑顔になる。


「そうだぞ! 堂々胸を張って映画に行ける! 天童やったな!」


「いや、高山だって科目別に一位になったじゃないか。正直びっくりしたぞ」


 胸を張っている高山。正直俺が勝つしか方法はないと思っていた。

だが、高山は実力で勝ち取ったのだ。そこは賞賛するぞ。


「ふふん。天童君、暗記ですよ暗記。実は、先輩から過去問を借りててさ、ひたすら暗記した! いやー同じような問題が多くて覚えるの大変だったぜ」


 カンニングではない。でもまさか先輩に過去問を借りてまで、しかも暗記だって?

高山は暗記力そんなに良かったのか? 思い当たる節は、あるな。


「先輩って、誰に借りたんだ?」


「あー、例の写真をくれたグループの先輩。天童なら分かるだろ?」


 んー、あのグループ。思い当たるのはファンクラブしかない。

もしかしてファンクラブの先輩から過去問借りたのか?


「ま、そういう事もありと言えばありか」


 すっかり高山と話しこんでしまった。


「ゴホン……。結果と対策については来週話しましょう。それで、待ち合わせとか、集合場所とか決めませんか?」


 みんなで映画に行ける。初めはどうなるか分からなかったけど、みんなで行ける。

相談した結果、映画館から少し駅よりにある水時計前に集合することになった。

試写会は夕方の五時から。三時頃に集まって、軽く街を回ってから試写会に行くことになった。


「それでは、待ち合わせに遅れないようにね」


「楽しみだなー、杏里も楽しみでしょ?」


「そうね、楽しみ。多分自分で思っている以上にワクワクしてるわ」


 女子二人がニコニコしながら互いに向き合って話している。

見ているこっちも心が和んでしまう雰囲気だ。


「あ、あのさ。ちょっと聞いてほしんだけど」


 何だかそわそわしながら高山が話し始めた。

珍しいな、いつもの高山とちょっと様子が違う。


「試写会の後、みんなで夕飯食べないか? 映画終わるの七時位だろ? 帰ってからだと遅くなるし、ど、どうかな? ほ、ほら、杉本さんへのお礼もあるしさ」


 俺は別に外食でもいいけど、問題は杉本かな?


「門限があるけど、私は大丈夫です。彩音は?」


「んー、お母さんに確認してみないと何とも」


「天童はもちろんオッケーだよな」


「あぁ、もちろんオッケーだ」


 杏里はもちろん問題はない。帰る先が俺と同じ家だからな。

でも門限とかはないんだけど、門限とか決めてたっけ?

杉本は親に確認後となるが、俺達は子供じゃないし、多分大丈夫なんじゃないかな?


「じゃ、私は帰って聞いてみたら高山君に連絡するね」


「おう、連絡待ってるぜ。安くてうまい店があったんだ。是非、みんなで行こう!」


 そういえばテスト前に高山は『俺は当日のプランを考える』とか言っていたな。

本当に色々と考えているのか? その辺のファミレスとかでいいのでは?

 

「じゃ、映画の後については杉本さんの連絡待ちって事で」


「ごめんね、即答できなくて」


「そんな事無いさ。杉本も家で色々あるんだろ? 気にするなって」


 杉本に対してさわやかスマイルの高山。

ここ最近高山の行動がいつもと少し違う気がするな。

何というか、こうなんか違和感を感じるんだよな。


「うん、ありがと。高山君にあとで連絡入れるね」


 何だかんだ言って、俺達の関係は良好。

このまま映画を見て、みんなでご飯を食べて――


 俺と杏里の事を打ち明ける。

今回与えられたミッションを完遂してからの爆弾発言だ。

せめて映画と食事位は平穏な気持ちで過ごしたい。


 どうやって切り出すか……。

いまから台本を用意せねば。

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