第5話 これから
部屋は、思ったよりも整頓されていた。待たされた時間は五分程だったので、元々言うほど散らかっていなかったのだろう。物自体はあちこちに点在はしているが、汚いという程でもない。また、足の踏み場がなかったり、ゴミが散らかっているという事もなかった。
にしても、凄い本の量だった。俺の身長ほどある大きな本棚にはびっしりと本が詰まっている。その上、机やベッドの周りには、本が平積みで重ねられている。彼女は出版社にでも勤めているのだろうか。
「ごめん、これでも片付けたんだけどな。」
俺が部屋をジロジロと見すぎたためだろうか、彼女が少し申し訳なさそうに謝った。
「いや…、それは良いんだけど、凄い本の量だね。これ全部読むの。」
「全部って訳じゃないけど、殆ど読んでるんじゃないかな。」
全部じゃなくても、この量をよく読んでいるものだ。しかも、机やベッドの周りに本を置いているというのは、最近読んでいたということだろう。社会人にもなり、この読書量には感心を受けた。俺も読書はするが、月に1冊か2冊程度だ。それでも、同僚からは「読んでるよな。」などと言われるくらいだ。
「出版社に勤めてるの?」
彼女は首を横に振り、「入りたかったけどね。」と、物惜しそうに言った。
そして、何かを思い返すかのように彼女がふふっと笑いながら、俺の方を向く。
「さ、飲もっか。」
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