第3話 贈り物
時は経ち、1861年夏。
日差しが家にも降り注ぐ中、女中たちは知紗に手を焼いていた。
「知紗様!!何処にいらっしゃいますか!?知紗様!知紗様!」
「何です?朝から騒々しい」
「奥様」
「知紗がどうかしましたか?」
「それが、少し目を離した間に知紗様のお姿が・・・・」
女中が話していると、遠くで声がした。
「ははうえー!」
「知紗様!?」
「知紗?」
廊下を知紗が走って来た。女中と有凪が同時に声を上げる。
「ははうえ」
知紗は顔いっぱいに笑みを浮かべている。
「何処に行っていたのですか。女中たちが心配しているでしょう?」
有凪は、知紗と同じ目線になって窘める。
「ははうえ、これです」
掌の中に包んだものを知紗は嬉しそうに開ける。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああ─────!!」
有凪は金切り声を上げ、腰を抜かした。
「奥様!?」
女中の1人が有凪に駆け寄るのと同時に、知紗は掌の中の"もの"を、床にバラまいた。
「ひっ────────────────」
出かけた悲鳴が声にならない。
女中も有凪も身体を震わせ、その場に崩れ落ちその光景をただ目に焼き付けていた。
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