第14話 北の丘の買収
「ねぇ、あなた」
「あなた!」
「あなた!!」
「おうわっ、なんだよ真浮華」
「今日は休みよ。久々の休み」
「そうだね。この書類をやっつけたら君とお茶を飲もう」
「あの町、買えそう?」
「町を買うわけじゃないよ」
「北の丘。可愛い子らしいわね」
「なんのことだ」
「逢引きなんて可愛いことするわね。四十になっても少年のバカな心を持つのは悪いことじゃないわ」
「別に逢引きなんて」
「浴衣の子と会ってたじゃない」
「そんな子はいたけど、友達と会うって」
「ふーん、まぁいいわ。指輪捨てた?」
「なんの指輪?」
この男は浮気性だ。
私という人がありながら、付き合っていた時も、同棲していた時も、浮気と不倫を繰り返した。
今まで関係があった女は数知れず、最近は浮気もマシになってきていると思ったけど、今度はまだ二十くらいの小娘とだなんて。
でも好き。好きなの、あの人のそういうとこ。浮気させる女が悪いの。だからまずは裏付けをとらなきゃ。
「おじさん居なかった」
「お、俺はいつでもここにいるぞ」
「おじさんじゃなくて、おじさん!」
「ケンタ、意味わかるか?」
「出会いは女を成長させるものよ。私にもこんな時あったわ」
「おっさんの経験談はいらねぇ」
「なによ。あんただっておっさんじゃない! いつか掘ってやる」
「てめぇに貸すケツなんざねぇ」
「お前表でろ。私のテクでヒイヒイいわせてやる」
「おじさん会いたいな」
「それは愛!」
「え、違うよ」
「だって最近口を開けばおじさんのことばっかり」
「そうなのかな」
「あんたおじさんたくさんいすぎ! あんたのおじさんってあれでしょ? 山にこもってるタイプのニートでしょ?」
「京作おじさんは世捨て人だけど」
「世捨て人がお姉ちゃんから野菜貰うかね」
「違う。おじさんはおじさんだけどおじさんじゃない」
「おじさんはおじさんで、京作おじさんは京作おじさんなの!」
「おじさんとまた会えるんじゃないの?」
「おざなりっ」
「仮面舞踏会? また?」
「ったく、玉名グループは仮面舞踏会大好きだな。また行くのか?」
「あっ、でも今回は大奥様が出てくるらしいから、マジかもよ?」
「大奥様って?」
「玉名グループを統べるドンよ。記者会見でもあんま出て来ないから、見るだけでレアかもよ」
「また酔っておっさんに世話かけるのがオチだ」
あれ? 仮面舞踏会で助けてくれたおじさんも仮面舞踏会に関係ある人じゃん。これ行ったらまた会えるんじゃね?
と、田中ちゃん全力の打算が田中ちゃんの脳内を駆け巡った。
「ケンタさん行こう。行かなくちゃ」
「あ、あぁ。田中ちゃんがそういうなら」
未来は見えた。絶対にまた会ってお礼を言ってやる。
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