第7話 たまくんのいわれ

「すみません。小河原君に聞いてきて、まさかいつも行ってるお店に小河原君の先輩がいたなんて」

 渚日向なぎさひなたさん、二十七歳。インプット。


 私よりも若かった。小河原君の先輩で営業課の課長さん。

 結構仕事出来る人みたいだ。

 その昔パパが「仕事が出来る人間は頭を下げれる人間だ」と、言っていた。

 確かにパパの言う通りっぽい。



「なんかバカな理由ですみません。でもいいんすか? 結構たくさんみたいっすけど」


「店長がメロンパンを焼きすぎちゃって、なんか加減を知らない人で」

 嘘。嘘かな? 


「後輩がここのメロンパン好きで」と、言ったら焼きすぎてくれた。

「後輩君に是非広告塔になってもらおう」

 でもまさかメロンパンだけ焼きすぎるって。


「ありがとうございます。でも買います。買いますからポイントつけてください」


「でもすごい数ですよ。メロンパンだけで二十個も」


「五個だけ家に持って帰って、後は課のみんなでいただきます」


「持って帰れます?」


「荷物持ちがいるんで」


「渚さんそれはないっすよ」

 種田お姉さまと佐々木お姉さまが帰り、後は閉店業務だけだったのでおまけでパンをたくさんつけたら喜んでくれた。


 帰り際せっかくだから疑問を解消しておこうと思った。


「渚さん」


「なんですか?」


「たまくんって」


「嫁が大きな声で言うから気づきますよね」


「え、碧青さん。奥さん見たんすか? 可愛かったすか」


「小河原、人の嫁を軽々しく見れると思うな」


「僕も見たいっすよ。僕の奥さん見たでしょ?」


「僕、ひなたでしょ? 嫁がかま玉うどん好きで、好きなもの合わせてたまくんって」

 スルーされた小河原君。

 すごく可愛いお話だった。


「嫁には頭上がらなくて、兄弟揃って婿養子に入っちゃったんでもう親父はブーブー文句言って」


「始まりましたよ。婿入り苦労話」


「婿入り? 苦労?」


「お兄さんの隼人さん? が、最初に婿入りしたから自分は婿入り避けようと」


「隼人?」


 心配することはない、久しぶりに隼人君の顔を見たいからって言われたと、お酒で真っ赤な野口とお世話になった可愛い奥さんの写真が



「あの、渚さん。旧姓って」


「あぁ、野口です」


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