第2話 よのなかペロ子ちゃん

「あはは!旭くんすごいすごい! いのちごいするオットセイみたいなぶざまなすがただよ!かがみを見てごらんなさい! あはははは!」ペロ子ちゃんのけたたましい笑い声が鏡地獄に響き渡った。僕はいまL♡VEするホテルの一室の窮地の戦線で戦っている。悪魔ペロ子ちゃんの色香に迷い策謀にはまり、「マインスイーパに勝利しなければ出られない部屋」に閉じ込められているのだ。「旭くんかわいそうすぎるよ、これでもう千回くらい負けちゃったんじゃない? ごめんね、ごめんね、セックスしなければ出られない部屋だと詐(いつわ)って誘って、わくわくさせちゃってホントにゴメンね! あははははは!」読者諸兄、たかがマインスイーパと侮ったな?たしかにマインスイーパはシンプルなルールのゲームだ。Windowsのパソコンに標準搭載されているゲームで、地雷に隣接するブロックの数字をヒントに地雷の場所を特定して、地雷以外のブロックをすべて押すと勝利となる。多少運の要素があるとはいえ、何度も慎重にプレイしていれば勝利は難しくない。うう……「旭くんまた地雷を踏んじゃった!地雷に連動して発動する電流の具合はどうかな? ビリビリしてる?あんなに元気だったオチンチンがすっかりおじいちゃんみたいだよう」慎重にプレイしていれば勝利は難しくない、しかし、それは、健常な環境においてのことだ。"すべてを鏡に覆われた球体に閉じ込められたら、いったいなにが見えるだろうか?"という江戸川乱歩の小説を再現した部屋において、まともな視覚は奪われている。そのうえ手足は縛られて自由が利かず、猿ぐつわをかまされているので、足の指を使ってマウスを操作しなければならない。地雷を踏むと局部に電流が流れる仕組みになっている。ペロ子ちゃんはかつて中国共産党だかKGBだかの情報局に勤めていたと言っていた。拷問技術に通じているのも肯ける。


 なぜこんな目に遭っているか? その理由をつぎに語ろう。

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