カラスの余興

「この子がブラックリストの子?とてもそんな風には見えないけど・・・」

.「・・・そういう風には見えないが、ブラックリストに乗っている以上は回収しなきゃ駄目だろ。」


怯えた表情の小さな女の子に青年二人は手を伸ばす。

一人がその子に触れようとしたとき、その子の周りから黒い羽が吹き出て、二人は手で顔を庇う。

その羽が、はらはらと落ちてくるようになり、安心して視界から手を退けた時にはもうその子の姿はなかった。

落ちてきた一枚を手の上にのせる。


「烏の羽?」

「悪いけどこの子は貰っていくよ。」


その声に、青年達は声のする方向へ向く。

そこにはドミノマスクをした女性が立っていた。


「こんにちは、お二人さん。」

「その声もしかして。」

「気付くのが早いね、ノエル。」


即座に、ドミノマスクを外す。

そこには、キャロルこと、聖歌の姿が。

手の中には、さっき捕まえようとした女の子が静かに眠っていた。


「・・・その子を返して。」

「ブラックリストに乗ってるから?」


ぐっと口を結ぶ。

その意味を判断したキャロルは話を続ける。


「そこに乗っている事が全てじゃない。もし疑問に感じるんだったらその意味や意義を模索してみれば?多分そこに正解がある。」

「それってどういう・・・」

「じゃあね、また会おう。・・・貴方が私の敵でも貴方を見捨てたりはしないから。」


はずしたドミノマスクを地面に落とす。

触れた所から烏の羽が吹き上がった。

ノエルは不意を突かれた言葉に遅れて理解し、結んだ口を解き、言葉を振り絞ろうとするが、そこにはもうあの二人の姿はなく、ただ、烏の羽だけが存在証明として降り積もっていた。


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