雪解け
「・・い。・・ろ」
「キャロル!」
「なに!」
「なにじゃねえよ。成功だ。」
「ほえ?」
そう促され聖歌が目をやると、さっきまでコートに高校の制服だった格好が、ファー付の黒いポンチョに黒いトレンチコート。コートの下から少し見えた膝上のブリーツスカート。
昔来ていたサンタの制服そのものだった。
「たくなぁ、お前は!」
「あはは、御免。」
「御免じゃねえよ・・・で、何処まで思い出せた。」
「私が、とある班のリーダーだったって事と自分の持ってる奇跡、後はアイとあの子達との関係性かな?思い出みたいなのは何も。」
「そうか。そこまで思い出せたら上等だ。よくやった。」
「何であんたが偉そうに。」
「だって今、お前よりも偉いからな。」
「はあ!それどう言うこと!」
「お前がいなくなった翌年、正式にここ一体の管理長、大司教に任命されましたぁー。」
「うわ、抜かされた。あんただけには抜かされたかなかったのに!」
「お前がちんたらしてるからだろ。"準備が整ったら帰ってくるからそれまであの子達を宜しくね"って格好つけた台詞言ったきり戻ってこなかった馬鹿は何処のどいつだよ!」
「馬鹿って何よ馬鹿って!」
「馬鹿はお前しか居ねえよ。あの戻り方も一歩間違えれば死んでたんだぞ、お前!」
「大丈夫だよ、あれは死なないように出来てたから。」
「はあ?どう言うことだよ。」
「サンタ服来てないからいいか、話しても。」
「サンタ服で来るなって言ったのはこのためだったのか?」
「うん、あの人に聞かれたらまずいし。それじゃあ、説明するね。あの禁忌には二つ条件があって、一つはこの世から存在が無くなること。もう一つは大切な人が近くにいること。でも、その二つには大きな穴があった。前者の場合は、皆『存在がなくなる=死』だと思っているけれど別に死ななくてもいい。言ってみればここの戸籍を消しただけでも存在がなくなったことになり条件一つは成立する。実際これは試した人も居るらしい。だけど、それだと後者が成立しなくなる。」
「どう言うことだよ。二つ目は『大切な人が近くにいること』だろ。だったら成立するだろ。」
「それじゃあ駄目だったみたい。あの禁忌、続きがあったの。」
「でも前俺らが見に行ったときにはそんなの。」
「私が夜、こっそり図書館に忍び込んだときにね。サーマルインク、知ってるでしょ?」
「ああ、それでか。それで、その続きは何て書いてあったんだ?」
「『その瞬間にアイはあるか?』って」
「アイ?アイって愛情ってことか?」
「皆そうだと思うでしょ?違うの。哀。哀愁の哀。その瞬間に、"胸を痛めるような悲しさ"はあるか?って事。だから、この二つを達成するには『死んだふりをする』ってこと。
さて問題、一番工作をしやすい自害の仕方は?」
「高い所から飛び降りる。」
「正解。これでこの一連の真相は大体理解できたかな、大司教さん?」
「お前、馬鹿にしてるだろ?」
「してないけど?それより、外の状況は?」
「ほらよ。」
エデンが自分の見ていた外の景色をスライドさせてキャロルに見せた。
そこには、エデンと同じ赤いサンタ服やノエルの様な黒いサンタ服を来た人たちが群がっていた。
そりも空中に何隻か浮かんでいる。
「多分、さっきの奴見られてたんだろうな。」
「皆のつけてる校章はあの人の目と耳の代わりだからね。あれないとサンタ服も着れないようになってるからねー。」
「・・・おい、あれ。」
「ん、何処?」
「あれだよ、あの赤サンタの隣の眼鏡かけたあいつ。俺らに気づいてねえか?」
「いや、気のせいじゃない。あ、でも。」
「でも?」
地響きと共に大きく上下にこの空間が揺れる。
少ししたら止まったが、まだ二人は動かない。
一拍置き、顔を見合わせた後、二人が吠えた。
「何で気づかれてんの?!」
「ほら見てみろ!気付かれてるって言ったじゃねえか!」
「でもあんたのは『永遠』時間が止まってるこの空間は気付かれないんじゃなかったの?!」
「俺も分かんねえよ!中から招かないと気づくはずがねぇんだけど。・・・お前、ノエルには会わなかったよな、なぁ?!」
「へ、あの子に会ったけど?え、あの子に会っちゃ駄目だったの?」
「駄目に決まってんだろ!・・・あぁ、そうだったな、お前あいつの使える奴知らなかったんだよな!覚えてねえんだよな!」
「何よ、勿体ぶらずに教えな・・・さいって!」
「あぁ、これ完全に気付かれてるな。いいか、時間無いから一回で聞けよ!」
「ッチ・・・何?!」
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