第1章 魔法と私 5歳編

第2話 魔法


ある雪の降る、寒い寒い冬の日。

新しい命が二つ、生まれました。


一人は金の光に祝福され。

一人は青の光に祝福され生まれました。


両親達は喜びました。

何たって、神にその生まれを祝福された子が生まれたんですから。




でも、その喜びも束の間。

そのすぐあとに、生まれた子達の両親達は、殺されてしまいます。


一人は親戚に引き取られ、一人は教会の前に置き去りにされました。




今回のお話は、教会に置き去りにされた子の話。


愛も知らず、捨てられ、自分のことも分からないまま十余年を生きることとなる、少女の話。























《5歳》


私の知ってる世界と、私のいる世界は、違うことがある。


使う言葉も、字も、衣服も、言葉の意味も、生活用品も全部同じなのに、一つだけ、違うこと。



それは、“魔法”と呼ばれるものがあること。



私の知ってる世界では、料理をする時、ガスコンロを使って火をつけていた。


私のいる世界では、火を思い浮かべて、パチンと指を鳴らせば火がつく。

自分が望んだ場所に、望んだ強さ大きさで。



お風呂の時だって、シャワーとかを使って、体を洗っていた。


この世界では、「あ、汚れちゃったなー、えい」(パチン)で元に戻るというか、キレイになる。


何というか、うん。楽だ。楽である。




まぁ、話を聞く限り、7歳で行われる洗礼以前は魔法は使っちゃいけないらしいが。


洗礼とは。

7歳の子供達を近くの教会や神殿に招き(?)、祭壇にて神に祈りを捧げるというか、ここまで無事に育ちましたよー、とお知らせする儀式らしい。


月一の頻度で行われている。

7歳になる子は一月一月いるからね。

ついでに、名前も洗礼でつけられる。


名前は親が決めておいたものでもいいし、神殿側(神さまらしい)に任せるのもOK。



この世界、なんかゆるくないですか。

まぁ、楽でいいですけども。



「ソラ!きいてますか?」

「ぅあ?ごめんなさい。きいてなかった」

「もう、しかたがないですね」



むにゅっと頬をつねられ驚く。

ソラ、というのは私の呼び名だ。

まだ5歳で洗礼前だからね。


目の前にいる、紺色の髪に赤色の目の男の子はヨルくん。

髪色が夜みたいだから、ヨルくんだ。


今はヨルくんと裏庭で遊んでいる最中だった。



「ヨルくん」

「なんですか?」

「そろそろもどって、て、あらお?」

「…そうですね。シスターがしんぱいします」



お互い、土で汚れた手を握り、少し小走りで教会いえの中に入る。



私とヨルくんは、この山奥の村の教会に住む、所謂『孤児』だ。同い年で、仲もいい。


このまま、今ある細やかな幸せが、ずっと続けばいいのにな。



5歳児らしからぬことを考えた。


あぁ、いやでも、子供は常々思ってるかな。


楽しいことがずっと続けばいいのにって。



「(何考えてんだろ…)」



私はソラ(仮名)。5歳。

たぶん、記憶持ちと言われる人たちの部類に入り、前世の記憶を持っている。


と言ってもそれは、単なる知識としてでしかなく、明確な死因や年齢、人間関係などは思い出せない。


私は一体、誰なのだろうか。














「ソラさん、ヨルさん。実の月の5日10月5日、魔力の測定をしますよ」

「「まりょくのそくてい?」」



要は、どれくらい魔法を使える力を持っているのか、調べるらしい。


いいな。魔法のこと勉強したいな。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空の祈りと秘密の魔法 ひかげ @0208hina

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ