第7話鋼の錬金換金術師

【20】

「ここです。海家百合香さんが遺体で発見されたと、あなたが私達のいた部屋に入ってきたシーンです。」


清野はテレビを付け、コロ助に内蔵されている録画機能を用い撮影した、ビルでの一件の映像を流した。そこに明知の姿が写し出されており、一瞬ではあるが明知がポケットに何かを隠した様子が窺えた。


「さぁ、明知さん。あの時ポケットにしまった物はなんなんですか?」

「さぁ何の事やら?」

「まぁ良いでしょう。ただね明知さん。それは犯人のミスリードなんですよ。」


明知は一瞬驚きの表情を見せた。


「差し詰めあなたは海家百合香さんの死体の側に落ちていたメモでも拾ったのでしょう。

あくまでも推測ですがアメリカ天狗を匂わす内容のものだったのではないでしょうか。

海家さんを殺したのはアメリカ天狗であるとしたら、レノンビートルズさんが殺された時の


【A・M・E・R・I・K・A】


のメッセージのように何かしらの痕跡を残すのが普通だと思いましてね。だからアナタはやたらに都市伝説の内容を調べ始めた。犯人のワナとも知らずにね。」


「おい探偵!でも今回の事件は都市伝説を謎ったものでいいんだろ?」


佐藤が問いただした。


「う~ん。厳密に言うとアメリカ天狗は後付けだったんです。」


「後付け?」


「順を追って説明しましょう。まずそもそも今回の惨劇は森山川太郎が主催した保険金ゲームから始まったのです。」


その時だ!


「清野さ~ん!見つかりましたよ!」


ビルの入口から顔中キスマークだらけの花上がやって来た。


「きついっすよ。あの黒猫ばばあ。」


「ハハハご苦労さま。」


清野は花上の肩をポンと叩き、一枚の紙を受け取った。


「これは森山川太郎の部屋から見つかった保険金ゲームの参加者リストです。」


清野が手にした紙には

【保険金ゲーム参加者】


奏ひろみ

野比スネ夫

森山川太郎

風馬雄三

海家絵梨香

天童弘助


以上六名

保険金総額十億円


と記されていた。


「被害者の共通点は保険金ゲームというやつだったんだな?」


「はい、このゲームを調べました所、参加者それぞれが生命保険に加入していました。そしてただ一人生き残った者にだけ、それぞれの参加者の保険金が全て手にはいる、といった危険なゲームだったんです。」

「そんな事したら参加者同士の殺し合いにでも発展しかねないじゃないか?ん!っていうか殺し合いがあったというのか?」


「するどいですねブダペストさん。しかし現実は違います。このゲームにはあるルールがありまして…。

実はこのゲームの参加者は皆、自殺志願者だったんです。」

「自殺志願者?」

「はい、死を決めた人達の集まりだった訳です。故にこのゲーム、運良く自殺のタイミングに遅れた者が大金を得られるといった変わり物だった訳です。」


「では、今までの事件は全て自殺だというのか?

それならそのリストの中で唯一生き残ってるのは天童弘介だよな。ならば大金を得られる事になったのは天童という事か?」


「はい、ところがここでひとつ問題が出てしまいました…。この天童弘介はこのゲームをきっかけにある女性と恋に堕ちてしまったんです。

それは同じ自殺志願者の海家絵梨香さんでした。

二人は恋に堕ち生きる気力を取り戻したのです。

恋に堕ちた二人はそのままゲームから脱退すれば良かったのですが、大金に目が眩んでしまいます。

しかしこの大金を得るには他の参加者が全て死んでも、二人の内のどちらかが死なない限り、生き残りの一人にはなれなかったのです。」

「そうか!それで天童弘介は海家絵梨香を殺害したのか?」

「いえ、その為二人は身代わりを立てたんです。双子の妹だった海家百合香さんを…。」


一同はただ清野の推理に唖然としていた。


「警部補、たしかに海家さんは双子です。」


ヤスは佐藤に耳打ちした。


「おい、ワシはそんな事聞いてないぞ!」


「はい、言ってませんから。」


「そうか、言ってなかったらしょうがないな。じゃなーい!」


「まあまあブタ野郎。まずはここまでの件を整理しますね。」


と清野はホワイトボードを使い、今までの被害者の名前を書き出した。

清野はホワイトボードに被害者達の名前を書き連ねた。


奏ひろみ

野比スネ夫

森山川太郎

風馬雄三


「この四人は先程お話しした通り自殺です。そして海家絵梨香さんの身代わりとして殺されたのは妹の百合香さん。」


清野は名前をあげた人物に次々と×印を付けていった。


「そして保険金ゲームの存在とその保険金に目を付けたのがレノンビートルズ氏だったんです。

そしてレノン氏は、事件に絡んだ人物の妹という事で、情報を得るため海家さんをホテルに呼び出した。

これは事件のあった日、防犯カメラの映像に海家さんの姿が写し出されていた証拠もあります。」


清野はレノンビートルズの名前に×を付け、


「そしてレノン氏を殺害したのは海家さんです。殺されたのはレノン氏が不意に取った…。おそらくメモかなにかでしょう。それにより保険金ゲームに隠された秘密を知ってしまったのです。」


「秘密って、死んでいたのは百合香さんだったという事か?」


「その通りです。そしてその後、脱走した天童弘介が合流し、この事件を隠すにはどうしたら良いのか考えたのでしょう。ある人物の協力を得て…」


清野はホワイトボードにある人物と書き加えた。


「ある人物?」

「ある人物は警察にトリックを仕掛け、そして一度はその人物により海家さんは助けられたのです。しかし…、最終的にはこのビルにて殺害された。ある事実が発覚した事で…。」


清野は海家に×印を付け、ホワイトボードには天童弘介とある人物としか残されていなかった。


「その内容ならば、ある人物など必要無いだろう?今だ姿を見せない天童弘介がやったという事で片付けられると思うのだが。まったく穴だらけの推理だな。」


明知がうすら笑いをして答えた。


「いえ明知さん、このある人物がいる事で全てのつじつまが合うんですよ。それと天童弘介の所在はすでに明らかになってますよ。」


「そこまで言うならその人物は誰なのか教えてもらおうじゃないか!」


「分かりました。

しかし、ポイントを整理させて下さい。そうすればある人物…。そうですねぇ、ここはあえてこう呼ばせて頂きましょう。犯人アメリカ天狗は自ずと現れる!」


清野はニヤリと笑った。


※ポイント

1、レノンビートルズが海家の身代わり殺人に気付いた理由

2、アメリカ天狗の都市伝説とメッセージ

AMERIKAとの関係性

3、消えた天童弘介の所在

4、清野が犯人を確定できたのはコロ助の録画機能により記録されたビルでの映像であった。


犯人アメリカ天狗とは誰なのか?


◎探偵なので犯人では無い

【清野耕介】

◎その清野を終始睨み付けている同じく探偵の

【明知龍太郎】

◎その明知の側でバナナを食べながらウォークマンを聞いている明知の助手

【ブービー小林】

◎終始おろおろしている、はひふへホテルの支配人

【星野花瓶】

◎そのはひふへホテルの従業員の一人

【枕投大吉】

◎枕投の側から離れない

【雨降七美】

◎推理中も清野にツバをかけようとしていた、はひふへホテルの清掃員

【園茂竹縄】

◎おばちゃんのツバ吐きに惚れ弟子入りを考えている、清野の助手

【納谷ルミ子】

◎一度は容疑者にさせられてしまった刑事

【早月メイ】

◎ブタゴルファー

◎佐藤を慕う刑事

【ヤス・ポートピア】

◎全身キスマークだらけのメロン好き刑事

【花上四太郎】

◎明知に扮装し推理を披露した、ドクロラーメン主人

【毒路博士】

◎一度はソンソン共和国の監督になったのだが、AKB48の選挙で忙しいという理由で監督を辞任した

【コロ助】

◎明知との情報交換をしていたフリーライター

【安帆真子】

◎事件のカギを握る行方不明の脱走犯

【天童弘介】

◎コロ助との共存を楽しみにしていた

【中村俊輔】

◎そのコロ助のレーザーのせいで割れた眼鏡のまま南アフリカでの指揮を取ることになった

【眼鏡の男】

◎花上に惚れ新しい口紅を購入した情報屋

【魔女の宅急ばあさん】

◎群馬にある鶴亀旅館にて清野をいつまでも待っている為、既に宿代が払えなくなり厨房で皿を洗っている

【怪盗ヒゲゴリラこと山田健二】

◎気になるあの子が店長と付き合ってるのではないかと怪しみノイローゼ気味な

【コンビニ店員牧村君】

◎妻のへそくりを見つけたが千円プラスしといた優しいサラリーマン

【関白千元】

◎占いレストランを開業することになった

【占い師アブドゥル】


【21】

「犯人はブタゴルファーです!」

「やっぱり睨んだ通りなりね!」

「ルミ子君コロ助君…違うから。」


清野は頭をかかえていた。

「仕切り直しましょう。

まずレノン氏は何故身代わりのトリックを見破ったのか?

では、ここでひとつ実験をしましょう。花上君、ちょっといいかな?」


清野はポケットからメモとペンを取り出し花上に渡した。ついでに缶コーヒーを取り出し飲みはじめた。


「この缶コーヒー

【午後のパンダ】

といいましてなかなか売ってないんです。それはさておき皆さん、今から私がこの缶コーヒーパンダだとして、レノン役の花上君と約束を取り付けます。」

「パンダと約束?意味が分からんな?」

「まあ見ていて下さい。すぐに分かりますから…」


そう言うと清野は携帯を取り出し、花上に電話をした。


「もしもしパンダです。午後のパンダなので午後に会いましょう。花上君、貴方はレノン氏なので外国人という設定で今の約束をメモに書いてくださいね。」

「外国人?英語でって事っすよね。うーん。午後にパンダだから…午後って英語でどう書くんだ?」


頭をかく花上の横からメイが声をかけた。


「PMって事じゃない?」

「わかってるよ!そんなこと!」


花上は強がりながら、メイに言われた通りにメモ紙を記入した。

すると、このようなメッセージとなった


【PMPANDA】


< 38 >

「本題はここからです。では花上君、今度は絵梨香さんと午前に合うという事を簡単にメモを取って下さい。」


花上は先程の要領でメモを取った。すると…


【AMERIKA】


「探偵!これはアメリカか!」

「そうです。海家絵梨香はレノン氏との約束の際におそらく、本名をつい名乗ってしまったのでしょう。レノン氏がその時にすぐ気付いたかどうかはわかりませんが、残したメモを見た時に違和感を覚えたのです。

そしてこの事を海家絵梨香に問いただした。焦った海家絵梨香は側にあった灰皿で衝動的にレノン氏を殴り殺したのです。」

「アメリカ天狗なんて関係ないじゃないか?」

「ごもっともです。そしてレノン氏はダイイングメッセージとしてAMERIKAを残した。

そしてこれをごまかす為、彼らはこの地方に伝わるアメリカ天狗の話を使い、我々をあざむいていったのです。

ご苦労なことにクマのプーさんも登場させてね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る