第6話都市伝説をかける少女

【18】

「皆様お集まり頂きましてありがとうございます」


明知に集められた一同は、この間あっさり出たビルに集められていた。


「そういえば、ご主人様がいないなりね。」

「そうね、お猿さんも来てないみたいだけど。ルミちゃんは連絡取れないの?」


メイがルミコに話し掛けたが、首を大きく横に降った。


「皆さんよろしいですか、今回の一連の事件ですが僕の推理を披露させて頂きます。」

「犯人がわかったのか?」


座っていた枕投が立ち上がり問いただしている。雨降と星野が


「支配人…、別な探偵さんさっき来たんじゃないですか?」

「警備員室でビデオを見た後、急いだ様子で出ていったよ。なあ円茂さん」

「まったく、何で私も呼ばれたんだか」


円茂はその場にツバを吐いた。


「今回の事件はある都市伝説が鍵になっています。」

「都市伝説?そんなのアメリカ天狗のことだろう、なあヤス」

「さすが警部補ですね!ちなみによく行くスナックはパルです!」


明知はこの役にたたない2人を無視して話を続けた。


「昔、この地方を仕切っていた富豪が、病と薬の副作用で気が狂い一族9人を殺したそうです。そして富豪は自ら命を断ち10人になった。何故か1人だけ殺されず生き残った子供がいたんです。しかし、富豪がお越したと思われた反抗は全て一族に深い恨みを持っていた子供の仕業だったんですよ。それがわかった時には、子供は行方不明になっていたそうです。」


明知はニヤリと笑い一同を眺めた。皆明知の話を黙って聞いていて、部屋は静まりかえっていた。


「そして、残った遺族は子供に懸賞金を掛けて探し回った。噂が噂を呼びゲームという形で伝わったみたいですね。たった10年くらい前の話なんですがね…」

「じゃあ今回の事件は、その子供の犯行ということですか?」


メイが明知に質問する。


「そうです、殺された7人は接点がありまして…」

「接点てなんだ!」


佐藤が煮えきらない明知に怒鳴り出した。


「この懸賞金に目を付けた、レノンビートルズ氏ですよ」

「ホテルで殺された被害者だと!」

「彼はパソコンを使い無作為に携帯にメールを送りました。天狗ダーツの招待状をかけてアメリカ天狗の情報を求むと…」

「あっ!」


部屋のあちこちで声が上がる。


「やはり皆さんそうでしたか。私にも来ていましてね、返信してしまいました…」

「我輩もご主人様の名前でありもしないこと返信したなり。探偵ですから探しますよって入れちゃったなり!その後、変な数字が送られて来たなり


【A・M・E・R・I・K・A】

【13・5・9=2・3・5】


だったなりね」

「遺族にも届いた様でした、最初に返信していた6人とレノンビートルズ氏は殺された。しかし、残りの返信者は殺しそこねたといった所でしょうかね…」


明知は自信満々で口元を歪ませた。


「これ暗号なりかね?メイちゃんはわかったなりか?」


メイはコロ助を見ないで、まっすぐ明知を睨んでいる


「いいえ、コロちゃん。そんなメール私には来ていないわ。」

「そうなりか…。ってどっ、どういうことなり!?」


コロ助は丸い目を更に丸くして驚いてメイをみつめた。佐藤とヤスの携帯を叩き割っていたルミコも、驚きを隠せないでいた。明知の口元はさらに歪み淡々と話始めた。


「その子供、いや犯人は現在あなたと同じくらいの歳ですね。

しかも、先程の数字


【A・M・E・R・I・K・A】

【14・5・9=2・3・5】


最初の数字はアルファベットの順番、その後は


【A・M・E・R・I・K・A】

の並び順

【1・2・3・4・5・6・7】こうすれば皆さんわかったでしょ。

警察関係者なら色々偽装できますからね…」

「M・E・I…、メイだよ!こいつだ!」


枕投がメイを指差して叫んだ。一同はメイから逃げて離れていく。その中には佐藤とヤスもいた。


メイは明知を睨み付けたまま


「ルミちゃんとコロちゃんは、私から逃げなくていいの?」

「ん~、代表落ちした時に泣いて残念がってくれたから違うと思うなり…」


ルミコもウンウンと首を大きく縦に振り


「ブタペスト息の根止めてやる…」

「2人共ありがとう…」


メイは唇を噛み締めて明智を睨み付ける。

しかし、明知は歪んだ口元を更に、更に歪ませてメイを指差しながら


「犯人は、五月メイいや天童弘助!お前だ!」


辺りが静まっていて明知の声が響いた。


その時


パン!パン!パン!パン!


軽く手を叩く音が部屋に響いて来た。


「いや~、お見事!上手くやりましたね。私達を除け者にして犯人捕まえちゃうんですから。」


暗い扉が開き、ニヤ付いた清野が軽く拍手しながら入って来た。メイを指差したまま明知は固まっている。


「清野さん!」


メイは睨んでいた明知から清野に視線を移して叫んだ。その目には涙が浮かんでいた。


「メイちゃん災難だったね。君、変わりに謝ったら?」


そう言いながら清野は入ってきた扉に向かい軽く振り返った。


「何で僕が謝らないといけないんだ!」

「君が考えていた推理と大体同じだったんだろ。あんなに似てるし、カッコも同じなんだからさ」

「僕はあんな間抜けなことは言わない!」

「まさか、犯人が仕掛けた偽の情報に引っ掛かったとは言えないしね(笑)」

「くそっ!」


そう言いながら入って来たのは明知だった。隣にはブービー小林がフワフワ飛んでもう一人の明知の肩をポンポン叩いている。


「いや~、探したよ。全員集合掛けようと思ったら連絡取れないしね。」


清野は最初からいる明知の横をニヤ付き、通り過ぎながら


「さっきはどうも…。明知君は私のこと快く思っていないみたいだから捜査協力はどうだろうね?まったく手の込んだことして…」


そして、メイが座っていた下を探り小型の機械を潰した。


「妨害電波出てたよ。」

「清野さん…?」

メイは力が抜けた様に座り込んだ。

「メイちゃんどうした?」

「あっ、明知が2人…」


一同が唖然とする中、清野は後ろを振り返り叫んだ。



「さあ、これからが本番だ!」


【19】

「なんだどういう事なんだ!まさか天童弘介なのかこいつ!」


佐藤がそう叫んだ。

するとルミ子はニセ明知の背後に回り


「コロ助!こいつレーザーでやっちまいな!」


ルミ子はニセ明知を羽交い締めにしてコロ助に指示を出した。


しかし、当のコロ助はなんだか気まずそうにしていた。


「早く!!最後に打ったレーザー、1週間前だから出せるでしょ!」


少しの沈黙があり


「いや…。実はちょいと腹いせに、眼鏡の監督に打ってしまったなり。」


コロ助はもじもじしていた。


「わ…、わかったよ。許してくれ。ルミ子君、私だ私!」

「その声は!」


ルミ子はニセ明知から手を離し、ニセ明知はタオルで顔を拭きとってメイクを落とした。


「博士~!」


ニセ明知の正体は、毒路博士(どくろひろし)。2階にあるEXILE探偵事務所の下にあるラーメン屋の主人であった。彼は発明家でもなんでも無いのだが、無類の推理好きのようで、今回の事件は独自で調査をしていた様である。


「ひろしさん困りますよ!また勝手にうちの事務所に侵入したんですね?」

「てへっ!」


毒路は可愛く舌を出していた。


「でも清野さん!いい線いってますよね!私の推理?」


と毒路はにこにこしながら清野に問いただしたが、明知が割って入り


「おい!貴方の知り合いは私に化けて何をやろうとしているんだ!」


と怒りだした。


「いや、ごめんなさい。彼の行動は予測不可能でして…。あっ、因みに彼のラーメン相当美味しいですから今度お詫びにごちそうします。」

「おいおい、私はこんな茶番に付き合っている暇などないんだ!行くぞ、小林君。」


と背を見せ歩き出した。すると清野はすかさずこう声をかけた。


「待って下さい明知さん!帰る前に貴方の隠している物を渡してもらいましょう。ビルでの記録は映像としてはっきり残っているんですよ。」


明知の足が止まった

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