第5話笑う捜査御殿場

【14】

「探偵さん、出ました!」


路地裏に置いてある使われていない大きなゴミ箱の中に、遺体が入っていた。それをみつけ警官が大声で叫んでいる。


「でしょうね、あと3人…」


明知は下にずれた眼鏡を直し、歩いて来た男に気付き振り返った。

「清野さん遅かったですね。」

「まあ、調べればここに遺体があることはわかりましたから。」

「随分余裕ですね…」

「仕事が早くて何よりです。」

「話をはぐらかすのが相変わらずお上手なようだ。」

「フフッ…」


清野はニヤリと笑い遺体を眺めた。


「共通するのはアメリカ天狗くらいだな…。」


視線を戻し明知が清野を睨み付けているのにも変わらず笑いながら


「行き詰まってるのかい?捜査協力してもいいが?」

「それもいいかもしれませんね。あなたからそんな話をされるとは思いませんでしたよ。しかし、僕も調べることが多くてね。それでは失礼する!」


明知は車に乗り込むと行ってしまった。清野はそれを怪訝な顔で眺めた。その後、街の地図を取り出し赤ペンで現在の位置に印を付けた。地図にはこれまでの事件が起こった場所に、同じ様に印が付いている。それを線で結ぶと、ある形になっている様であった。


「これで7つか…、因縁や都市伝説だけと言うわけではないみたいだな…」


「この事件はただの連続殺人事件じゃありませんよ!」


清野の後ろには、緑の服と帽子を被った男が立っていた。


「あの~、誰ですか?」

「メール便です、ハンコかサインお願いします」


清野は手紙を受け取り、伝票にサインした。それを受け取ると男はさっさと帰ってしまった。

宛先には

永遠の好敵手

怪盗ヒゲ…


そこまで読むと、手紙を破り捨てた。


【15】

ファミレスにいた佐藤達は清野の連絡を受け、新たな事件現場に向かっていた。


「それにしても薄気味悪い奴だったな?」

「何かものすごい事が起きるみたいな事言ってましたよね。」

「一応職質しましたが本人の言う通り、ただの占い師でしたね。」


先程、佐藤達がファミレスから出ようとした際、アブドゥルと名乗る占い師に出会った。

これから佐藤達の身に


「予測の出来ないくらいのサプライズが起きますよ」

とその占い師から告げられていたのであった。


「清野さんからの電話では、殺されたのは森山川太郎という人物みたいです。腐乱死体のようですが側に身分証があったようです。」

「ん!腐乱死体といえば昨日のビルにもあったよな?あれは誰なんだ?」

「そっちの方はまだはっきりしてないようです。」

「被害者の共通点さえはっきりすればな、事件も見えてくるんだが…」


考え込む佐藤達。そこにルミ子が突然切り出した。


「森山川太郎、保険金詐欺の奴じゃん。警察のくせにそんなのもわからないの?それじゃ完璧超人になれないわよ。」


それを聞いたメイも気付いた様子で


「あっ!そうですよ!ルミ子ちゃんの言う通りですよ。たしかネットで参加者を募って生命保険を掛け合うとかいう事件の…。」

「ムムム、今回の事件はそこにヒントがあるのかもな…」


そして車を降りた佐藤達の目の前には古びた電気屋があり、ショーウィンドウから緊急ニュースが流れていた。


「占い師が言っていたサプライズとか、この変で起きるんじゃないのかな?」


と、佐藤達はその緊急ニュースに目を見張った。



その時だ!

テレビに映る眼鏡の人物はこう言った。


「最後のFWはコロ助!」


記者会見場はざわついていた。


「本当に起きました!サプライズ!」


唖然としている皆をよそにコロ助は自然と屈伸を始め、テレビの中ではコロ助と中村俊輔は共存できるのかという話題が始まっていた。


【16】

「しかし、7人は数が多いと思います。あと3人殺される可能性はあるのでしょうか?」

「そうですね…」


人気のない駐車場に一台の車が止まっている。車の中で明知はフリーライターの安帆眞子(あんぱまこ)と会っていた。


「何かわかりましたか?」

「警察が入手していない情報と引き換えに取材に応じる約束ですよ?」

「そうですね…。ビル内で発見されたのは風馬雄三(ふうまゆうぞう)。風馬氏が失踪する前に、森山川太郎と会っていたみたいですね。そこから保険金詐欺の疑惑があがったみたいですよ。」

「なるほど、共通点は今の所この2人ですか…」

「都市伝説の可能性はいかがでしょう?」


明知は考えながら答える


「その可能性は十分あると思います。共通点もありますから」

「明知さんは今回の事件が都市伝説に関係していて、犯人がわかっているみたいな話し方ですね?」

「僕が事件を解決したら、すぐにわかることですよ。君も現場に来ますか?」

「いえ、私はご遠慮させて頂きます。他に取材する事件がありますので。」

「そうですか…」


明知が遠い空を眺めると、ブービー小林が空を飛んで来た。


「明知さん私はこれで失礼致します。そういえば、この事件にEXILE探偵事務所も絡んでいるとか…」

「そうですね…」

「気を付けて下さいね。一筋縄ではいかない人達ですから。」

「わかりました、御忠告ありがとうございます。」


そういうと安帆は車から降り、歩いて行った。明知も車を降り、しばらくそれを眺めてた。

そこへブービーが降り立った


「小林君、どうだった?新しい情報はありましたか?」


ブービー小林はそう言われると身振り手振りで明知に教えていく。


「小林君、それはいらない情報だよ…」


明知は頭を抱えた。それを見たブービー小林はまた飛んで行ってしまった。



【ブービー小林が教えた情報とは】


代表に選ばれたコロ助だったが、出場選手枠にロボット枠がない為代表落ちした情報と、現在南の小さな国ソンソン共和国の代表監督に就任し記者会見しているということだった。


「次はWBC狙います!」


とコロ助が叫んでいたらしい。


【17】

ここに何かがあるという探偵の勘が働いているのか、清野は再びはひふへホテルにいた。

缶コーヒーを飲みながら都市伝説の本を読み返しているとそこへ、


「ちょいとお兄さん。その缶コーヒー見馴れないねぇ。」


清野に声をかけたのはこのホテルの清掃員、円茂竹縄(えんもたけなわ)パートアルバイトの女性だった。


「ええ、ここに来る途中で買ったんですけど、午後専用缶コーヒーPANDAって言ってなかなか売ってないんですよ。」


と自慢気に話す清野を園茂は突然指差し


「ゴミは持ち帰り!」


と怒鳴って円茂は去って行ってしまった。ついでに去り際、ツバも吐いていった。


「なんだよ!あのおばちゃん。」

「まあまあ探偵さん。原則ホテルで出たゴミは持ち帰りですから。円茂さんは当ホテルの唯一の清掃員でしてね。長い事がんばってくれてるんです。」


清野の元にホテルの支配人星野がにこにこしながら歩みよってきた。


「別に怒ってなんかないですけど…。僕にとっては昼下がりのコーヒーブレイクと変わらないくらい落ち着いていますから。」


と言う清野だったが明らかにイラつきを見せていた。

すると突然、


「あっ、まさか!星野さん!警備室でビデオ見れますよね?」


と何かに気付いたのか一目散に警備室へ走っていったのだった。


そして…


「探偵さん!何かわかったんですか?」

「あっ…、これですか。実はうちのコロ助君には録画機能がありましてね。あっ!やっぱりそうだ!」


星野が清野を追って警備室に入ると、そこにある映像が流れていた。それはなんと先日アメリカ天狗から招待された時のビルの映像であったのだ。

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