第4話恥ずかしながら出ちゃった
【9】
ビルの周りには、連絡を受けた大勢の警察官に寄り非常線が張られていた。あっさりビルから出た一同は、直ぐ様帰ろうとしていた。
「ちょっと皆さん待って下さい、人が死んでるんです。帰れませんよ!」
ヤスが一同に怒鳴った。
「俺は関係ない!うんざりだ!」
ヤスの言葉に反論する様に枕投が怒鳴り始めた。
「そうよ、私達は支配人の付き添いなだけなんだから!」
雨降も苛立っている様で、ヤスに怒鳴っている。それをよそに明知が話始めた。
「本当に関係ないのですかね?」
そう言った明知は二人を見た後、清野を眺めたが壁に寄り添い腕を組んでいる。
近くにいたメイが
「しかし、犯人の目的がわかりませんね」
「これは天狗への生け贄かもしれませんよ…」
明知がメイに話掛けた。
「生け贄?」
「この地方の都市伝説に、天狗に10人の生け贄を捧げた者に巨万の富が授かるというのがあります」
「それが天狗ダーツと関係が?」
「そうですね、元になっていると思います」
明知が話掛けた。しかし、腕を組みながら壁に寄っ掛かっていた清野が話始めた。
「明知さん、あなたの話だとまだ死人が出るということですね?」
「ええ、少なくても後4人でしょうね。まあ、その前に僕が犯人を捕まえてみせますよ」
明知はニヤリと笑い、自慢気に胸を張って行ってしまった。
「そうですか…」
しかし、清野は口元を抑えさらに考え混んでいる。
「清野さん、どうしたんですか?」
「納得がいかなくてね、都市伝説は関係ないと思うよ…」
「じゃあ、一連の事件は?」
「ん~、都市伝説はフェイクじゃないかなってね」
「清野さんは別な見解があるんですか?」
「まだ、考えがまとまらないから…」
「私、何か情報がないか調べてみますね」
「助かるよ。そうだ、ルミコ君とコロ助君はどうしたんだろう?」
その時
「出してくれー!!」
叫び声にも似た声が聞こえた方向を見ると、ビルにおいて行かれた佐藤がガラス扉を叩いている。
その前にルミコとコロ助、ブービー小林が扉に鍵を掛けて泣きながら扉を叩いている佐藤を腹を抱えて大笑いしていた。
【10】
「警部補!やはりビルの中に人は残っていなかったようです。」
「ん~、やはりアメリカ天狗の奴に逃げられたか。ビルは完全包囲したつもりだったんだがな。」
ビルでの事件の翌日、佐藤とヤスはファミリーレストランで食事をしていた。この後清野達と合流し、事件の整理をする予定である。
「お待たせ致しました。チョコレートパフェです。」
「あれ?わしらコーヒーしか頼んでないはずだが…」
「あちらのお客様から…」
ウエイトレスが目をやる先には、黒いフードを被った男の姿があった。さらにウエイトレスはメモ紙を預かったとのことでそれを佐藤に渡した。
犯人は本当にいなくなったのか?君達の中にいた可能性もあるのでは?
「確かに…、それならいない理由になるなってあいつ何者だ?」
「警部補、続きがありますよ。」
私を捕まえようとするのはやめた方がいいですよ。ここにいるお客さん達に死人が出ますよ。
「まさかあいつ…、もしかして天童弘介か?」
私の目的はあなた方ではありません。あなたの知り合いの探偵さんです。
「探偵って、清野さんの事ですかね…」
彼らが来たら伝えておいてくれ…、腐らず待ってる鶴亀旅館。
永遠の好敵手
怪盗ヒゲゴリラこと山田健二より
その時だ!
「おい!ブタ丼!待ち合わせ場所変更なり!向こうのファミレスなり!」
ファミリーレストランの扉が勢いよく開き、コロ助とルミ子が佐藤に向かって野球のボールを投げてきた!
佐藤はとっさにそのボールを避けるとテーブルの上にあったチョコレートパフェに当たり、宙をまいフードの男の頭にべシャっとかかった。
「危ないだろ!タライ女!ネギ坊主!」
パフェの事メモ紙の事もすっかり頭から離れ、佐藤はコロ助達を追いかけて行った。続いてヤスはウエイトレスに警察手帳を見せ、急いでいるから…といってコーヒーの代金を支払わずに出て行った。
「おっ…、お客様!大丈夫ですか?」
パフェまみれになったフードの男に、ウエイトレスは慌てて声をかけタオルを差し出した。
男はその気さくな応対に怒りや、やるせなさを通り越して、愛にも似た感情を覚えるのであった。残念ながらこの後、あなたの知り合いの方ですよねと佐藤達のコーヒー代も支払う羽目になるのであった。
【11】
「お久しぶりじゃねダンナ。ボールは友達だけどサッカー嫌いだった事件以来じゃないかい。」
清野はルミコ達と合流する前に、小さな黒猫の看板が掛かっている薄汚いパン屋に来ていた。店の奥には、頭に大きな赤いリボンを着けた小さい老婆がちょこんと座っている。
「運び屋の方は順調なのか?」
「へえ、手堅くやらせて頂いております。フフフフッ…」
老婆はニヤつき笑っている。
「変わりはないのかい?」
「へえ、落ち込んだりもしたけど…、わたしゃ元気でした。」
「なんすか、この店!メロンパンないんすかね?」
何故か一緒に着いてきた花上が、店のフランスパンを勝手に食べながら話に入ってくる。
「花上君、何で君がいるんだい?」
「何か、早月が一緒に着いて行けって言うんですよ。警察手帳位なら役にたつだろうって。あいつ何様なんですかね?」
文句を言っている花上を無視して、清野は老婆に話掛けた。
「情報はあるか?」
「天狗ダーツは満更、都市伝説ではないみたいじゃね。昔、この地方を仕切っていた富豪が病であったが、薬で生き永らえていたらしい。しかし、薬の副作用で気が狂い一族9人を殺したんじゃと。その時被っていたお面は血で赤く染まって、天狗様の様だったらしい。そして富豪は自ら命を断ち10人死んだんじゃが、何故か1人だけ殺されず生き残った子供がいたそうじゃ。」
「では巨額の財産は子供が?」
「それは誰もわからんのじゃ…」
「わからない?」
「子供の行方も、その後金がどうなったのかもな…。そして噂が噂を呼んで…」
「現在、都市伝説になったと言うことか。」
「あくまで噂の出所を探してたら、行き着いたんじゃがね。」
「それともう一つ【A・M・E・R・I・K・A】の件何だか…。」
「これも噂の範囲内じゃが…」
そう言うと老婆は清野にこっそり耳打ちした。
「なるへそ、ありがとう」
清野が老婆と話している間、花上は二本目のフランスパンを食べていた。そしてやたら店の物を勝手に詮索し触りまくっている。
「婆さん、報酬は…」
老婆は花上を指差しニヤリと笑った。それを見た清野もニヤリと笑い
「花上君、勝手に触らない方がいいよ。この婆さん魔法使うから」
それを聞いた花上は振り向き
「マジですか、婆さん魔女なんすか!どんな魔法使うんですかね?」
その時!
老婆が素早く後ろに回り込み、花上を羽交い締めにした。そして顔を赤らめ耳元で
「恋じゃ…」
もがく花上は動けずにいる中、清野は入り口に歩き出した。オープンと書いてある看板を裏返しにして、クローズにし店の扉を開ける。
そして一言
「婆さん、黒猫ジジイによろしく。ごきげんよう…」
そう言って、扉を静かに閉め出て行った。
【12】
「メイちゃん、探偵の奴来てないのか?」
「ちょっと遅れるみたいですよ。」
ファミリーレストランびっくりモンキーにて佐藤達は清野の到着を待っていた。
「あ…、警部補!あの二人は…」
するとメイは店の一番奥の席に、ビルで出くわした雨降七美と枕投大吉を発見した。
「何を話してるんだ?ちょっと雰囲気が変だな。」
「側に行って盗み聞きしますか?僕行って来ますよ?」
そう言うヤスを遮るように、パフェを食べていたルミ子がスプーンをおき不適な笑みを浮かべた。
「フフフ…、コロ助!博士に作ってもらったアレを試す時がきたようね!」
「ここは、我々に任せるなり!」
するとルミ子はカバンの中から化粧道具のような物を取り出し、それを使いコロ助にメイクを施した。
「フフフ…、これでどこからどう見てもウエイトレスよ!」
「大吉さん、保険金はどうなるんですか?」
「うーん、なにせトータルが億単位だからな…。受け取り人も行方不明だし、もう少し調査が必要だろ。」
会話を続ける枕投達の元にウエイトレスの変装をしたコロ助が席に近づいて行き
「おまたせしたなり。コロ助特製チョコレートパフェなり。」
と声をかけた。
すると…
「あっ!おまえあの時のチビ助!」
「違うなりウエイトレスなり!レーザーが残っていたら死んでるところなりよ!」
結局、コロ助の変装はすぐばれ、怪しむ枕投達は店を出て行ってしまった。
【13】
その頃清野は情報屋を出た後、レノンビートルズ氏が殺されたはひふへホテルの警備室にいた。
「探偵さん!これです!」
「んー、確かに…」
「この人、ビルで殺された女の子ですよね?」
ホテルの支配人星野花瓶に見せられた防犯カメラの映像には、ビルにて殺害された海家百合香が写し出されていた。日時はレノンビートルズが殺された日を指している。
「なぜ、今頃こんなビデオが出てきたのか…」
「はい、実は私も全てのビデオを警察の方に渡したつもりだったのですが…。ゴミ捨て場に捨てられているのを発見しまして…。犯人は彼女ですかね?」
「その可能性は十分ありますね。しかし、彼女はもう帰らぬ人となってますから…。そうじゃなくてもレノン氏と海家さんに何かしらの繋がりがありそうです。」
清野は口元に手をやり考え込んだ。
すると警備室に無造作に置かれていた一冊の本が清野の目に飛び込んだ
【都市伝説集】
「あっ、それですか。その本はこの地方で噂される都市伝説をまとめた本ですよ。」
「ちょっと拝見させてもらいますね。」
ページをめくると、そこにはアメリカ天狗についての都市伝説が書かれていた。
しかし、アメリカ天狗についての内容に大したページ数が使われておらず…
「んー。ますます分からなくなってきた。」
清野が頭をかきながらそう言ったのには訳がある。なぜなら続いて書いてあったのが
【イギリス河童についての都市伝説】
だったからである。
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