夢みる鮫

誰も訪れたことのない森の奥の泉の色を、夢みる鮫は瞳に映す。


深く水底に向かうほど冷えて、限りなく黒に近く染められていく藍色。


赤や青の宝石の粒を糸で連ねたように、ちかちかと触手をまたたかせるクラゲに見惚れていると、ずらりと牙の並んだあぎとが視界の端を素早く横切る。


蜘蛛ささがにに似た蟹や、まだ名付けられていない小さな生き物たちが忙しく行き交う水底に、白く、数えきれないほどの死が降り注ぐ。


そこかしこで作り出されていく吐息の水泡みなわと等しいうつくしさで。


(シンメトリーの動きで踊る2匹のクラゲたちの絵)

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