やみふか

「闇が深いね」


「ふかふか?」


「何がふかふかなの?」


「闇だって」


「ほんとだ」


窓を開けた先には、闇がみっしりと詰まっていた。


むき出しの肌に触れる闇は、少し湿り気のある天鵞絨びろうどのなめらかさだ。


思い切り飛び込んだら、一度かすかに跳ね返ってから、柔らかく埋もれていくのかもしれない。


新月に明々と火を灯して見渡せば、家々を丸く包んで寝そべる巨大な黒猫たちの姿が見えそうな春の夜。

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