1秒遅れの1秒
雪白の部屋の時計は、いつも少しだけ狂っている。
「たしかなものなんてないもの」
時計の針が12を示す少し前に、粉砂糖の雪が舞いはじめ、黒い森の奥、お城の形をした時計の扉が開く。
内緒話のようなピアノの音色と共に、薄紅色のチュチュを着た金平糖の精が、つま先立ちで踊りながら現れる。
少女が時計回りに回転するたび、背後の木々の葉が落ちては再び芽生え、めまぐるしく移り変わる。
降り積もった雪が生クリームのように、城を、森を覆う頃、少女は優雅に礼をして帰っていく。
踊り終えるまでの時間はいつもわからない。
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