海の虎たち

西の浜辺の白い砂の中に、大小さまざまの琥珀が見つかることがある。


市場にきらびやかな琥珀の首飾りや腕輪を並べる商人によれば、海の向こうの国の虎は、よく夜の海を泳ぐらしい。

夜の森をあまりにも速く駆けすぎて、身体が鋳熔いとかされた黄金のようにまばゆく輝きはじめると、虎たちは海に来て身体を冷やすそうだ。


虎の前脚が黒い波に触れると、じゅっ、と、白い煙が上がる。

ざぶざぶと波間に入って泳ぎ回った虎の毛皮は、乾くと鮮やかな縞模様を取り戻す。

そして海の中に溶け出した黄金の色はといえば、長い時間をかけてこごって、琥珀と呼ばれる石になるという。


(頭を震わせて勢いよく水滴を飛び散らせる虎の絵)

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