水底の愛

昼下がり、雪白と薔薇紅が訪ねてきた。


「御本を読んで」

「読んで」


2人は棚から本を選び出すと、いつもの場所に座りこんだ。

私の左右の膝に凭せ掛けられた小さな頭から、金と黒の髪が渦を巻いて床に流れ落ちる。

お伽噺を聞き終えると、2人は真剣な面持ちで話し合いを始めた。


「王子さまは冬の湖のように青い目をしているの」

「私の王子さまは背が高くて、ダンスがうまいのよ」


「王子さまの魂は、真珠の飾りのついた綺麗な小箱に入れてあげるの」

「あら。私なら首飾りにするわ。ずっと身に付けておけるもの」


その愛の形は永遠の所有。

彼女たちは貪欲な水の精霊。



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