朝日が眩しい。思わず目を細めた。

重い足取りで家へと続く長い川の横を、ぼーっと歩く。昨日は飲みすぎた。何杯飲んだのかなんて、正直、さっぱり覚えていない。

高校からの親友の里美と飲むときは毎回こうだ。里美は決して、お酒が強いわけではないけれど、とにかくお酒が大好きで、1度飲み始めたら歯止めが効かない。

昨日だって酔っ払って知らない男に何回も声をかけていた。気付くと飲んでいた席を離れ、何となく良い感じになった人と何となく、”そうゆう”ことをするために消えていたりする。

なんなのだ、と思うことは多々あるけれど、里美の話は本当に面白い。そして、一緒に朝まで飲める友達なんて、里美くらいしか私には居ないのだ。気を遣わないのが良い。楽だ。


化粧はほとんど剥がれ落ちて顔はボロボロだし、このままだと間違いなく日焼けするな、と思い、ほんの少し歩くスピードを速めた。

疲れたなと思い、ふと川を除くと、亀が数匹プカプカと浮いていた。思わず立ち止まる。へー、こんな汚い川に亀なんているんだ、と、心の中でただそう思った。

何を考えながらこいつらは生きてるんだろ、なんだか汚い甲羅だし、とても可愛いとは思えなくて、亀だったらウミガメがいいなと思う。

あー、きっと今の私の疲れ切った顔も汚いんだろうな。早く化粧を落として横になろう、と考えているうちに家に着いた。

2階建の古びたアパートの、2階の一番端っこが私の部屋だ。ギシギシと今にも壊れそうな錆びた階段を上り、鞄から鍵を探しながら、そういえば開けたまま家を出たことに気が付いた。

盗られるものなんて何にもないのだ。

玄関を開け、磨り減ったヒールを無造作に脱ぎ捨て、すぐに洗面所に向かった。

鏡を見る。ああ、想像以上だ。クマは最悪だし、マスカラはべっとりと目の下に張り付いている。先ほどすれ違った二つ結びの可愛い小学生の女の子、こんな醜いものを見せてごめんなさい。怖かっただろうな、こうはなるなよ。

とりあえず化粧を綺麗に落とし、一昨日買ったばかりの白いワンピースを脱ぎ捨て、下着を剥ぎ取り、全裸のままベッドにダイブする。外から、「おはようございます。」と元気な小学生の子供達の声が聞こえる。家から小学校がすぐ近くなのだ。その挨拶に答えるように、「おやすみなさい。」と、目を閉じ眠りについた。

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