第8話
教室の窓から綺麗な紫を見る。
気持ちに気付いてから一週間以上経ってしまった。
あの日は夕暮れに近かったのに、今では青と茜色が交じり合って紫になっている。
当然、翔も大会が終わり少し落ち着いている。次は秋の大会だと言ってコーチが練習量を増やしたと愚痴っていたが目の奥が真剣だった。
それを楽しそうだなとうらやましく思ったのは秘密だ。
次の日、一日避けて悪かったと翔に謝った。少し小言を言われたが、翔はそれ以上、追及してこなかった。
いつも通りの翔に少しほっとした自分がいた。
今日は一緒に寄り道してから帰る約束をしている。
翔の部活が休みの日を蓮と真人に聞きだしたのだ。「やっとか。」とか「頑張れよ。」とか。それぞれの言葉を貰ったのだが、長い付き合いだからこそ、その言葉がうれしかった。
肯定とも否定とも取れないその言葉がうれしかった。
翔の休みと自分の部活の休みを重なり合わせた結果、今日になった。
今日は合戦。
あれから、いろいろ考えた。断られてしまったたら、この関係も終わってしまうんじゃないかって、怖かった。でも、これは自分が決めたことだ。自分がウソをつき続けて出した現実だ。香凛と穂乃佳は言ってくれた。「これまでの事が崩れてしまうのは誰だって怖い。それでも、優希が決めた事なら私たちはとことん応援する。」と。
そして決めた。
今日、あの日なれなかった私になろう。
今日は合戦だ。
――翔に好きだと言って、ウソつきはもう辞めにしよう
そして、「ウソで作り上げた関係」に終止符を打とう。――
廊下側の席から紫を見るのをやめ、席を立つ。革製の鞄を持ち、一番近い踊場へと向かった。
空には薄い雲が覆おうとしていた。
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