第6話
いつの間にか家に帰っていて、いつの間にか朝がやってきた。
朝、そのまま寝てしまったのか、起きるとクシャクシャのスカートと半袖のシャツを着ていた。脱いで寝なかった昨日の私を恨み、スカートにアイロンをあてた。先ほどの怒りと理解できないそわそわ感の中で準備をする。
朝食中、いつもなら見ないニュースの間のショートアニメまで見てしまったせいか、はたまたスカートのしわを念入りに伸ばしていたせいなのか、いつもより五分以上遅い。急いで玄関のドアを開け、家から出た。門の前には翔がいる。もうとっくに行っていると思っていたのに。
「走るぞ。あいつらが待ってる」
「あ、うん」
待ってくれていたことに「ありがとう」も言えずに走り出した。腕時計を見るとまだ八分の遅刻。いつも歩いているところを走れば、間に合うかもしれない。
ひたすら、先を走る翔の背中に向かって足を動かす。そろそろきつくなってきた。なんせ、文化部なのである。体力なんてたかが知れてる。あと、先の角を曲がってしまえばあいつらとの集合場所だ。
「なあ、優希」
「何?」
「……。寝坊でもしたのかよ」
不自然な間の後、翔は聞く。寝坊じゃないし、寝不足でもない。というか、寝過ぎである。
なんと言ってごまかそうか……。
「ご飯食べ過ぎた」
そう言って、足を動かした。
翔の顔が見られない。
角を曲がれば、そこにはスマホを持ってどこかあたふたしているように見える真人(まさと)とそれを軽くかわしている蓮(れん)がいた。
いつもの景色。
それは自分だけが、いつも通りじゃない自分が異質なのだと強く主張して見えた。
「おはよう。どうしたんだ、いつもは二人してここで待ってんのに」
私たちに気付いた蓮が翔に問いかけた。それに便乗してか、真人が「連絡するところだったんだぞ!」と少し拗ねたように言う。
二人は翔の友達。幼馴染とまではいかないが、二人とも中学校からの私の男友達でもあった。翔はつるんでるだけだというけれど、いつも楽しそうなのは知っているし、誰か抜けている日は心なしか静かだ。
「悪い。優希が遅れた」
漣にそう言って、真人には小突いて三人で歩き始めた。
基本的に駅までは三人と一緒に行く。駅に着くと、
「おはよう、優希ちゃん。」
「おはよう、優希。」
「おはよう。穂乃佳(ほのか)、香凛(かりん)。」
女子三人で登校する。
キリリとした目でスラックスをはきこなしているポニーテールが香凛。またショートボブのたれ目でスカートをはいているのが穂乃佳。二人とも私の大切な親友だ。
香凛のイケメンさや穂乃佳のほんわかにつられて笑顔になる。
先ほどまで心を覆っていたどす黒い雲が少し晴れていく様を感じた。
穂乃佳を間に挟んで、男子の後から電車に乗車する。電車に揺られる間、昨日の課題は何だったのかとか、今日の運勢は誰が一番だったかとか。そんな他愛のない話をする。
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