第5話

 あの時から、何かが変わってしまった。

 校舎裏、翔と一人の女子。部活の取材のため、グランドに行こうとして通った私。それを見つけた私は二人の死角へと隠れた。そのまま通り過ぎればよかったのに。その時は、隠れてしまった。

 翔が告白されている場面ということに好奇心がうずいたからだ。

 かすかに聞こえる二人の話し声。全神経を研ぎ澄ませ、その会話に耳を澄ました。

「鶴崎君の事が……好きでした。……付き合ってくれませんか」

 そこには、私の味わったことのない独特な雰囲気が流れていた。

 翔は学年でも女子のモテる方に入る。それ故、そういう噂を耳にすることはあったが、いままで告白現場まではなかった。

 立ち去ってしまおう。それなのに、足が動かない。

「俺……好きな人がいるんだ」

 それから、どうやって立ち去ったのか覚えていない……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る