ワンヂェンと旅行にゃ~1
我が輩は猫又である。名前はシラタマだ。最終回は終わった……
「にゃあにゃあ。シラタマ~??」
「にゃに~??」
わしが久し振りに回想していると、黒猫ワンヂェンにしつこく邪魔されたので理由を聞いたところ、ベティとノルンが猫の国にやって来てからワンヂェンの出番が減ったから……
いや、治療院の仕事を頑張ったから旅行に連れて行って欲しいんだとか。
旅行ぐらい、仲良しのヤーイーと一緒に行けばいいと言ったのだが、周辺国は猫を撫でたがる変態さんが多いので未開の地に行きたいらしい。ていうか、ベティ達より目立ちたいから未開の地に行きたいんだって。
そんなこと言われてもわしはお昼寝で忙しいので断り続けたら、めっちゃ泣いて離れてくれないので、仕方なく短期間で行ける観光地を考える。てか、リータ達が浮気だなんだと怖いんじゃもん。
ワンヂェンの急なお願いと、いまの時期は治療院の休みも多く取れないこともあり、期間は長くて一泊二日を目標。どこかいい場所を考えてみたらちょうどいい候補があったので、リータ達に相談。
その相談は、ワンヂェンのためにベティとノルンにバレないようにしたかったが、妖精ゴーレムのノルンはわしの頭を巣にしていたので外せず。猫ファミリーに加え、ワンヂェンとノルンで時差を合わせてから転移した。
やって来たのは、南アメリカにある天空都市マチュピチュ。観光したいと「にゃ~にゃ~」うるさいワンヂェンを戦闘機に積み込んで、機首を西に向ける。
戦闘機をブッ飛ばし、小島を発見しては観察し、幾度かのハズレはあったが、無事目的の三角形の島に辿り着いたら、ワンヂェンが「にゃ~にゃ~」うるさい。
「にゃにアレ!? おっきい顔にゃ~~~!!」
そう、ここはイースター島。戦闘機が着陸した海岸沿いにはモアイ像が数体あったので、ワンヂェンが騒いでいるのだ。
「これはモアイ像と言ってにゃ。島の守り神とか宇宙人が作ったとか言われてるんにゃ」
「へ~……シラタマは初めて来た島にゃのに、詳しいんだにゃ~。にゃんで知ってるにゃ?」
「そ、それは……ノルンちゃんが教えてくれたからにゃ~」
ワンヂェンはわしの過去を知らないのに失言してしまったので、慌ててノルンを使った。
「シラタマには聞かれたことは……」
「にゃ~~~! モアイが歩いているにゃ~~~!!」
「ホントにゃ!? 見に行こうにゃ~!!」
ノルンには時の賢者の知識があったようだが、口裏合わせしていなかったので失敗。でも、モアイが歩いていたのを見てわしがマジで驚いていたので、なんとか話を逸らせた。
走り出そうとしたワンヂェンは、コリスのモフモフロックで拘束。モアイ自体が原住民の可能性があるので、全員猫耳マントのフードまで被って、話し掛ける順番の話し合い。
白猫、黒猫、巨大リス、鬼、妖精、猫耳、エルフでは、原住民が怖がるのは目に見えているので大事な話し合いだ。
結局は、いつも通り一番マシなリータに頼むことにして、わし達は走り出した。けど、ワンヂェンは足が遅いからおんぶしてあげた。
モアイの歩く現場に行ってみたら、モアイは地面を削っている最中で、その近くには南洋系の顔をした半裸のおっちゃんが立っていたので近付いてみた。
「こんにちは」
「あんだ? 頭の中で声がするだ……」
リータは言葉が通じないと思って念話で話し掛け、念話の説明をしてから自己紹介を始める。
「はあ……島の外から来ただか……」
「はい。私達はあなた方の敵ではありませんので安心してください」
「んだか。でも、全員なんで顔を隠してるんだぁ?」
「ちょっと見た目が変わっている者が多いので、あなた方がビックリすると思いまして……私から顔を見せますので、驚かないでくださいね?」
リータはフードをバサッと外したら、おっちゃんは忠告を受けていたのに驚く。
「あんれま~。どえらいべっぴんさんが出て来ただなぁ」
「あ、ありがとうございます」
「次は私ニャー!」
おっちゃんはリータの耳には興味がないのか褒めてばかりいるので、メイバイも褒められたいがためにフードを取る。
「こっちの子もべっぴんさんだなぁ。ちっさい子も、かわいかぁ」
メイバイの見た目にも驚かないのでオニヒメもフードを取ったけど、おっちゃんの反応はこんなもん。メイバイ達もチヤホヤされて嬉しそうだ。
しかし、ここまでは見た目がマシなメンバー。反応の鈍いおっちゃんでも、次は驚くはずだ。
「ノルンちゃんだよ~!」
妖精ノルンがわしのフードから飛び出すと、おっちゃんの目が点……
「あやや。こんなめんこい子まで外に居るだか。ゴイスーだべぇ」
にならない。なのでわしとワンヂェンはコソコソと喋っている。
「このおっちゃんどうなってるにゃ? 誰にも驚かないにゃ~」
「ウチに言われても知らないにゃ~。てか、これならウチ達も驚かれないんじゃないかにゃ~?」
「そんにゃわけはないにゃろ。だってワンヂェンは猫にゃもん」
「シラタマだって猫にゃ~!」
二人で「にゃ~にゃ~」ケンカしている場合でもないので、コソコソと打ち合わせしてから笑い合う。
「「にゃ~はっはっはっはっ」」
その声におっちゃんは反応し、リータはまだ説明が終わってないと焦り出したが、わしとワンヂェンは同時にフードを取った。
「我が輩は猫であるにゃ。名前はシラタマにゃ~」
「ウチはワンヂェンにゃ~」
自己紹介を終えたら、二人でキメ顔。でも、どっちもモフモフしてるから伝わったかどうかはわからない。
「あんれま~。毛深い人も居んだなぁ。暑くないだか?」
「「にゃ……」」
これでもおっちゃんは怖がってくれないので、最終兵器コリスの投入だ。
「コリスだよ~」
「デッカイ人まで居んだなぁ。それだけ大きいと、漁で大活躍できんぞ」
「全員……集合にゃ~~~!!」
「「「「「はいにゃ~」」」」」
コリスを見ても反応が薄すぎるので、わし達のほうが驚いて、コソコソと話し合うのであったとさ。
会議した結果、見た目問題は「騒がれなかったからいんじゃね?」ってなったので、自己紹介のやり直し。わしが代表だと言ってもおっちゃんは驚いてくれないので世間話に変える。
「てか、おっちゃんはここでにゃにしてたにゃ?」
「畑を耕しているんだぁ」
「道具も無しでにゃ??」
「道具ならそこにあるべぇ」
おっちゃんはモアイを指差すので、わしは意味がわからない。なので、普段の耕し方を見せてもらったら、少しだけ納得。
「にゃるほどにゃ~。地面を削って耕してたんにゃ」
おそらくおっちゃんの魔法で、モアイは右側が前に出たり左側が前に出たり、交互にずらして前進していたからだ。
「でも、こんにゃところ耕しても、石ばっかりで作物にゃんて育たないにゃろ」
「んだ。んだけども、これさえ上手くいけば、もっと豊かに暮らせるはずだぁ」
おっちゃんはなんか熱く語り出したので、しばらく聞いてあげる。
どうもここイースター島では、食料はなんとか足りているのだが、食べ物が魚介類か、たまに獲れる渡り鳥、あとは虫しかないとのこと。
そこでたまたま流れ着いたトウモロコシが育たないかと、おっちゃんは四苦八苦しながら考えているそうだ。
「おお~。狩りから稲作にゃ~」
「なんだべそれ?」
「あ、こっちの話にゃ」
食文化の分岐点を見たと感動していたわしであったが、おっちゃんには伝わるはずがない。それにワンヂェンが「飽きたから観光地に連れて行け」と引っ掻くので、おっちゃんに相談して見る。
「うちでもトウモロコシを育ててるから、よかったら教えてあげるにゃ~」
「本当だべか?」
「うんにゃ。その代わり、この島を案内してくれにゃ~」
「そんなんでいいなら、いくらでも案内してやるだぁ」
交渉成立。わしはおっちゃんと握手を交わし、まずは集落に案内してもらうのであった。
集落には歩いて行くのかと思っておっちゃんを見ていたら、モアイの後頭部側を寝かせてそこに乗れとのこと。いちおう言われた通りモアイの顔面に全員が乗ったら、おっちゃんは呪文を唱えた。
「ひょっとしてモアイって……移動手段にゃの??」
世界遺産のモアイを踏ん付けて申し訳ないわしは、モアイがズリズリと動き出したらおっちゃんに質問している。
「んだ。道具だかんなぁ」
「もっと神聖にゃ物かと思ってたにゃ~」
モアイの使い道がわしの思っていた物と違い過ぎたので、何だかガッカリ。ちなみに移動手段以外にも、荷物の運搬や漁業だけでなく様々な用途にも使っているから便利な道具なんだって。
しかしながら、わしたちには不便この上ないモノ。モアイ
モアイカーはセレブのわし達には不評なので、全員飛び下りて歩く。ワンヂェンは歩くのが遅いのでわしが背負って歩いたら、やって来ました集落。
この集落で全ての島民が暮らしているらしく、家は石造り風のあばら家。ほとんどの家が半地下になっており、モアイが屋根になっていたり柱になっていたり。微妙にキモイ。
「なんだか芸術的ですね。メイバイさん。あそこの家も撮ってください」
「そうかニャー? ま、面白いからいいニャー」
なのに、リータの感性が不思議。岩の転生者だから通じ合うモノがあるのかも?
「シラタマはどう思うにゃ?」
「芸術ってのは、人それぞれにゃ~」
「じゃあ、やっぱり変だと思ってるんにゃ」
「リータに言うにゃよ~?」
おっちゃんがモアイを集落の外の駐車場に移動している間に、ワンヂェンには「リータを悲しませるな」と注意。それからおっちゃんにも質問して歩いていたら、島民に囲まれてしまったのでストップ。
「なんだそいつら?」
「あ、首長。実は……」
おっちゃんがわし達のことを首長のおじいさんに紹介してくれたけど、島民全て反応が薄い。全然驚いてくれない。
「こんな何も無い場所に遠路遥々やって来るなんて変わっていますね」
「もうちょっと見た目にも興味持ってにゃ~。みんにゃ~。モフモフにゃよ~?」
首長は見た目より目的にツッコムので、自分から子供達に撫でられに行くわしであったとさ。
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