おまけ

ヒロイン会議


 ある日……


 シラタマが珍しく王様の仕事をしている時間に、キャットタワー屋上にある離れでは、幼女ベティと妖精ノルンが何やらたくらんでいる姿があった。


「今度はどうやってあの猫、おちょくってやろう?」

「浮気ネタは尽きたんだよ~」

「じゃあ、王様関連はどう?」

「それならいっぱいあるんだよ~」


 どうやら二人はシラタマをからかって、ちょっとした娯楽にしようとしている模様。焦った顔やリータたちにモフられる姿が面白いお年頃らしい。どちらも魂年齢は100歳オーバーなのに……


 そうしてキャッキャッとやっていたら、黒いぬいぐるみが離れにやって来た。


「あ、ワンヂェンちゃん。おっつ~」


 二足歩行の黒いぬいぐるみの正体は、黒猫ワンヂェン。猫だから気に入っている縁側でゴロゴロしようとしていたみたいだけど、ベティとノルンの顔を見ると、目の前にドスンと座った。


「どったの?」

「ベティとノルンちゃんは新顔のクセに、最近出すぎにゃ~!」

「「へ??」」

「二人のポジションは、元々はウチの場所だったにゃ~!!」


 ワンヂェン、おかんむり。二人が猫の国に来る前は、シラタマをからかうのはワンヂェンの仕事だったのに、二人がやって来てからは出番が減っているから怒っているみたいだ。


「そんなこと私たちに言われても……あ、アレじゃない? 主人公と被っているから出番を減らされたとか??」

「それはあるんだよ。口調も一緒だし、モフモフは一匹でこと足りるんだよ~」

「にゃんでにゃ~! ここは猫の国にゃんだから、ヒロインはウチが一番合ってるにゃ~~~!!」


 ワンヂェンがヒロインの座を狙っていると知って、ベティもノルンも立候補。三人で「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」ケンカに発展した。


「ヒロインなら、猫さんと初めて出会った人間である私がいいと思います!」


 そんなことをやっていたら、何故かアイパーティがやって来て、代表でマリーが参戦。アイ、モリー、ルウ、エレナも出番が少ないからマリーに頑張って欲しいようだ。


「え? 初めてって……イサベレ様じゃなかった??」

「名前は出てなかったけど、一章でシラタマは、イサベレ達を追いかけていたんだよ」

「マリーは二番にゃ。いや、サンドリーヌ様も出てたから、三番にゃ~」

「あ……でもでも! 喋ったのは私たちが最初なんですぅぅ」


 ベティとノルンとワンヂェンが指摘したら、マリーは涙目。また「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」言い争いになったが、今度は白猫二匹がやって来た。


「「にゃ~ん」」


 エリザベスとルシウスだ。順番争いになっていたので、一番始めに登場したキャラとして、たまらなくなったから入って来たみたいだ。


「エリザベスちゃんはわかるけど……」

「ルシウスは雄なんだよ」

「ルシウス……退場にゃ~~~!」

「にゃ~~~……」


 これはヒロイン争い。雄のルシウスは参加する資格もないので、ワンヂェンに首根っこを掴まれて屋上から投げ捨てられた。けど、ルシウスは普通の猫とは違うので、ビルの屋上から落ちても怪我無く普通に着地していた。



 エリザベスも加えて「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」やっていたら、またヒロイン争いに参入する三人が現れた。


「私達も参加していいですか?」


 ソフィ、ドロテ、アイノだ。


「いや、猫の国だけでも多いんだから、出て来ないでくれる?」

「二章以降、たまにしか出てないんだから引っ込んでるんだよ」

「東の国の騎士は、王族を守ってろにゃ~」


 あまりにも出番が少なかった三人は、なんとか出演回数を増やそうとやって来たみたいだが、ベティとノルンとワンヂェンは辛辣。

 それから「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」追い返そうとしていたら、うるさい四人とプラスアルファが入って来た。


「それなら私達にも権利があるんじゃない? 一時期めっちゃ出てたわよ」


 うるさい四人とは、スティナ、エンマ、フレヤ、ガウリカのアダルトフォー。それと、ちびっこ魔法使いノエミだ。


「年増じゃん……」

「シラタマは若い子が好きなんだよ」

「おばさんはどっかいけにゃ~」

「「「「「なんですって!?」」」」」


 少し熱くなっていたせいで、ベティたちは虎の尾を踏む。女性に年齢のことを言ってしまったので、「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」ケンカは白熱することとなった。


「若い子でしたら、私の出番です!!」


 そのケンカを仲裁しに来たのは、貴族のローザ。妹のような存在のフェリシーの手を引いてやって来た。


「ローザ様って、シラタマ君にフラれてなかったっけ?」

「うんだよ。さらっと『フッた』とだけ書いてあったんだよ」

「フェリシーちゃん。こっちでモフモフするにゃ~」


 ローザ、ショックで orz ってなる。ちなみにフェリシーは強敵になりそうなので、ワンヂェンが体を売って眠らせていた。


「「「フッフッフッフッ……」」」


 ここで、不適に笑う真打ち登場。


「猫の国に住んでいて……」

「若くて……」

「正式にフラれていない……」

「「「愛人の出番です!」」」


 この息の合っている三人は、少女エミリ、キツネ少女お春、タヌキ少女つゆ。シラタマが王族居住区に住むことを許しているので、勝手に愛人とか言いふらしているメンバーだ。


「いや~~~! あんな猫の愛人とか言わないで~~~!!」

「だから、モフモフは足りてるんだよ」

「いにゃ~~~! ウチの出番が減るにゃ~~~!!」


 すると、幼女に見えるけどエミリの母親であるベティが大絶叫。ついでにノルンがお春とつゆの毛皮に触れたら、ワンヂェンが大絶叫するのであったとさ。



 それから皆で「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」泣いたり止めたりケンカしていたら……


「にゃにこれ??」


 この物語の主人公、立って歩く白猫シラタマがお昼寝しにやって来た。


「かくかくしかじかなんだよ~」


 この惨状についていけないシラタマのためにノルンが説明したら、シラタマは呆れた顔をする。


「ヒロインって……リータとメイバイじゃにゃいの?」


 そう。この物語なら、主人公の奥さんである二人がヒロインで間違いない。


「「「「「ああぁぁ~……」」」」」


 一同納得。出演回数から言って、リータとメイバイに勝てるわけがない。しかし、諦めの悪い奴もいる。


「準ヒロインは!?」

「ノルンちゃんだよ~!」

「ウチにゃろ!?」


 ベティ、ノルン、ワンヂェンだ。マスコットみたいなメンバーなので、一番は譲っても二番は譲れないらしい。


「二番手は……さっちゃんかにゃ? いや、コリスとオニヒメだにゃ。だってかわいいんにゃも~ん」

「三番手は!? それでかまわないから!!」

「う~ん……イサベレかさっちゃんじゃにゃい?」

「「「にゃんでにゃ~~~!!」」」


 なんでと言われても、コリスとオニヒメは猫ファミリーの一員。イサベレは猫パーティの一員だからだ。さっちゃんに至っては、そのふたつに所属していないのに出演回数が異常に多いのだから、ベティたちモブとは違うのだよ。


 しかし、モブ認定された皆は怒り心頭。シラタマは全員から非情な撫で回しを受けて気絶するのであったとさ。





 その夜……


「まだにゃんか用~?」


 シラタマの元へ、ベティ、ノルン、ワンヂェンが押し掛けていた。


「続編! 続編はやらないの!?」

「もうやったにゃ~」

「そうだけど~。読者の皆さんの中には続けてほしいって人もいたでしょ~?」

「そうなんだよ~。作者もやるようなこと言ってたんだよ~」

「いや、700話もやれば、作者も疲れてるんにゃろ? もう少し休ませてあげようにゃ~」

「そんなこと言って、シラタマ君みたいにゴロゴロしてるんでしょ~」

「作者もシラタマに負けず劣らず怠け猫なんだよ~」

「酷いこと言うにゃ~~~!!」


 シラタマが作者の味方をして「にゃ~にゃ~」文句を言っていたら、『猫王様の異世界観光』に唯一出演していないワンヂェンが騒ぎ出した。


「続編をもうやったってどういうことにゃ!? みんにゃ出たにゃ!?」

「「「うんにゃ。まぁ……」」」

「ウチも出してくれにゃ~。一生のお願いにゃ~。にゃあにゃあ~??」

「暑苦しいからくっつくにゃ~」


 こうして泣きながら擦り寄るワンヂェンに負けて、「もう2、3ヶ月は猶予をください」とお願いするシラタマであった。


「本当に書けるの?」

「そ、それは……鋭意執筆中にゃ~」

「ウソっぽいんだよ」

「うぅ……にゃ~~~」

「もう泣くにゃ~」


 ベティとノルンにツッコまれ、大泣きするワンヂェンを宥めるシラタマであったとさ。


*************************************

ちょろっと猫さん復活!!

あと三話、毎日更新しますので、ゴールデンウイークの暇つぶしにどうぞ~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る