705 ダンジョンの罠にゃ~
第1フロアを制覇したわし達は、報酬が欲しい物とはまったく違ったので「にゃ~にゃ~」愚痴っていたら、ノルンが再起動した。
「シラタマがモテモテなのは情報不足だが、猫と人間に婚姻関係が結ばれる事は例外的に発生する」
再起動してもわしのモテモテは認められなかったが、肉球の上に乗るノルンは目覚めたようなので話し掛けてみる。
「アナウンスで、先に進むにゃらノルンちゃんに言えと言われたんにゃけど」
「あ~。はいはい。あっちの部屋に入るんだよ」
ノルンはかなりやっつけ仕事に見えたが、いちおう案内してくれているので正面の部屋に移動。その部屋の壁が閉じてしばらく経ったら、第2フロアに着いた。
「このフロアから罠があるから気を付けるんだよ」
「どんにゃ罠があるにゃ?」
「それはお楽しみだよ」
ノルンは予想通りの答えだったので、わしを先頭に真っ直ぐ前へ。相変わらず周りが真っ白だから壁にぶち当たるまで進もうとしたら……
「にゃ~~~!!」
早くも落とし穴に落ちた。
「罠の配置、早すぎにゃい?」
「だから気を付けるように言ったんだよ」
わしと一緒に落ちたノルンもこの始末。幸い、落とし穴の中には槍とかは無かったので怪我も無し。ひとっ飛びでリータ達の元へ戻る。
「「「「「あはははは」」」」」
当然、わしが目の前で消えたところを見たリータ達は大爆笑。たしかに気を抜いていたけど、こんな入口に落とし穴があるほうがおかしいんじゃ……てか、イサベレとオニヒメは気付いてたんじゃね? わしの目を見てくれんかのう??
「どんにゃ罠があるかわからないんにゃから、みんにゃも気を付けてにゃ。落とし穴の中に、白魔鉱の槍でもあったら死ぬかもしれないんだからにゃ」
「「「「「プッ……」」」」」
「それって返事にゃの?」
リータ達はわしの話は聞いているようなので、皆まで言わない。というか、笑いが再燃しそうなので、これ以上の追及はやめて欲しそうだ。
なので、さっさと分かれて迷路探索。右と左に分かれ、注意して進む。
わしの班の先頭は、もちろんわし。罠に嵌まっても頑丈な体なので痛くもないし、そもそも落とし穴程度なら、無理矢理空気を踏んで脱出できる。
横から白い球が出る場合もあるが、当たっても痛くない。ていうか、壁と同化していてまったく見えないので避けようがない。床に何かが落ちた音がしたから気付けたのだ。
本当はオニヒメの危険察知で罠がわかると有り難いのだが、オニヒメはわからないと言い張るので信じている。
「プッ……またパパに当たった」
「にゃんか言ったかにゃ?」
「ううん。パパが居るから安心して進めるね~」
「そうにゃろ~? わしに任せておけにゃ~」
どうも、オニヒメは罠に気付いているのに報告していないようだ。わしに攻撃を当てる事が難しいから、この機会に白い球をガンガンぶつけてるっぽい……
そんな事とは露知らず、わしは罠係に専念して、メイバイとオニヒメがマッピングや目印を書いてくれているので順調に進んでいる。今回はノルンも口数が少ないので、わしは大活躍だ。
リータ班の先頭は、頑丈なリータでもいいが、ここはトータルバランスでコリス。それもイサベレが先に罠に気付いてくれるので、まったく危なげない。
なんならわし達より攻略速度が早そうだ。
ノルンは口数が少ないと言っても、わしに話し掛けて来るのでうっとうしい。
「ねえねえだよ~?」
「今度はにゃに~?」
「どうやって落とし穴を避けてるか教えて欲しいんだよ」
「教えたら、ここの難易度が上がるんにゃろ?」
「そうだよ」
「だったら教えるわけないにゃ~」
「ケチだよ~」
罠を作ってる奴にケチとか言われる筋合いは無い。わしはノルンの質問は無視して罠を乗り越えて行く。
そうしていたら通信魔道具に連絡が入ったので出てみたら、リータ班の道は途絶えたとのこと。なので、その辺に隠し扉が無いかだけ確認してもらってから合流することにする。
「あ、ゴールみたいだにゃ」
ゴールは壁をくり貫かれたような四角い穴なので、近付けばある程度見える。今度はわしがリータ達に連絡を取るとこっちに向かってる最中だったので、しばし待機。
リータ達と合流したら、ボス部屋に入った。
「ここのボスはアイアンウルフなんだよ。素早いから気を付けるんだよ」
ノルンがボスの紹介をしてくれるが、やはり黙視では厳しい。なので、探知魔法を使ったわしが補足する。
「全長2メートルのオオカミって感じにゃ。わしが先に目印でも付けようかにゃ?」
「問題ありません。今回は全員一撃入れるのを目標にしましょう」
リータは迷路を攻略しながら倒し方を考えていたようで、皆と打合せしたらわしを置いて歩いて行った。
「【水槍】にゃ~!」
初手は、オニヒメの水魔法。探知魔法で確認しつつ、走って来たアイアンウルフに水で出来た槍をぶつけた。本来ならば、黒い獣でも
前進は止められたようだけど、ダメージにはなっていない。
「見えました! イサベレさん、メイバイさん!!」
「「にゃっ!」」
しかし、これはリータの狙い通り。水で濡れた事によって、アイアンウルフの輪郭がうっすらと見えるようになったのだ。
そこを、刀を抜いたイサベレとメイバイが両サイドを駆け抜ける。するとアイアンウルフの後ろ脚が崩れ、前脚だけで立つ格好になった。
「コリスちゃん、行くよ!」
「うん!!」
最後はリータとコリスの合体技。リータの気功アッパーで浮かされたアイアンウルフは、先に飛んで待ち構えていたコリスの回転気功ダブル尻尾で叩き落とされるのであった。
「おお~。まったく危なげなかったにゃ~」
アイアンウルフは粉々。ここまでやれば動かなくなるのを確認したリータ達が戻って来たので、わしはブニョンブニョンと肉球を鳴らして出迎えた。
「見え難くて硬いですけど、それだけですね」
「これならオニヒメちゃんの援護があれば、一人でも余裕ニャー」
「ん。私は援護もいらない」
皆は思ったより面白くなかったようなので、リータ、メイバイ、イサベレが楽勝的な事を言っていたら、ノルンが口を開く。
「ここまではお試し設定だったから、腕に覚えがある人は楽勝なんだよ。難し過ぎても楽しんでもらえないんだよ」
「お試しのわりには難易度高くにゃい?」
「どこがだよ。2メートルクラスの獣を倒せる程度の難易度なんだよ」
「それこそどこがにゃ~。白魔鉱の敵にゃんて、倒せるのはわし達だけにゃ~」
「白魔鉱って、なんなんだよ?」
あら? ノルンの奴、白魔鉱を知らんのか……てことは、時の賢者の時代には無かったのか。そう言えば、アナウンスもノルンも、白魔鉱の事を鉄と言っておったな。
てか、これって、時の賢者……やっちゃってない? 千年経って、白魔鉱になるなんて知らなかったから、ダンジョンレベルが跳ね上がるなんて想像しておらんかったんじゃろう。
さらに、あの雷の砲撃……アレも魔道具に宝石を使っていたのが白ダイヤにレベルアップしたから、馬鹿げた威力になってるんじゃね?
おいおいおい。空飛ぶ時代になったら、飛行機がガンガン撃ち落とされるぞ。その前にサンダーバードさんに当たったら、ここら一帯更地になってしまうわい。よく今まで当たらんかったな。
わしが長考していたら、皆がわいわい喋っている声が聞こえて来た。どうやらわしの首根っこをコリスが掴んで、宝箱部屋に連れ込まれていたみたいだ。
「にゃにが出て来たにゃ?」
「白ダイヤですよ。こ~んなおっきいの」
リータ達が嬉しそうにしていると思ったら、宝石が出て来たようだ。それも、見たこともない大きさの白ダイヤだから興奮してるっぽい。
「それはただの水晶だよ。ダイヤモンドじゃないんだよ」
「にゃ? ああ。水晶が入ってたんにゃ。やっぱり宝の宝庫だにゃ~」
「その通りなんだよ」
ノルンの説明を聞いて、わしはノルンの思っている褒め言葉で返していない。こんな安い宝石でも白ダイヤになると知れた事が嬉しいのだ。
「あ、そうにゃ。壊れたモンスターって、お持ち帰りしていいのかにゃ?」
「モンスターは修理して使い回すからダメなんだよ。アイアンゴブリンもあの場から持ち出していたら、強制退場だったんだよ」
あっぶな……白魔鉱じゃから惜しい事したかと思っておったが、下手に次元倉庫に入れなくてよかった~。てか、それを先に言っておけよ。
「そんじゃあ、次、行きにゃすか」
次のフロアに行こうと思ったら、コリスに肩をポンポン叩かれた。何事かと振り向いたら昼食とのこと。2フロア進んだだけで思ったより時間を喰ったから、正午になったようだ。
なので、ノルンも誘ってその場でランチ。しかし、わし達の食べている料理は口に合わないと言って食べようとしない。
「ふ~ん……普段はにゃに食べてるにゃ?」
「イチゴみっちゅだよ」
わしももちろん魔力がエネルギー源だとわかっていたのだが、なんとなく聞いただけ。しかし意外な答えが帰って来たのでイチゴを出してあげた。
「じゃあ、イチゴあげるにゃ」
「イチゴみっちゅは設定だよ」
「設定じゃないエネルギー源を教えろにゃ~」
「スリーサイズは秘密なんだよ」
しかし、ノルンはこう言う始末。だったら最初からそんな設定言うなよ……
せっかく出してあげたイチゴは次元倉庫に戻そうと思ったけど、コリスが「あ~ん」していたのでポイポイ投げ込む。
そうして食事を終えてどこかにトイレは無いかと聞いたら、ノルンは宝箱部屋にある男子トイレと女子トイレを教えてくれた。
「見られてたら出ないんにゃけど……」
男子トイレに入ると、幼女のような妖精ノルンがガン見しているので恥ずかしい。
「これもデータの蓄積なんだよ」
「普通の人間と変わらないにゃ~」
「時の賢者様と比べて小さいんだよ」
「にゃにを比べてるんにゃ!!」
「チ……」
「わかってるからみにゃまで言うにゃ!!」
自分のスリーサイズは渋るクセにわしのシンボルをガン見するノルンの恥辱に耐えてスッキリしたら、第3フロアに移動するのであった……
「まさかシラタマさん……」
「そんなちっさい子と何してたニャー?」
「疑うにゃらリータとメイバイが相手してくれにゃ~。てか、助けてくれにゃ~」
ノルンに取り憑かれて限界のわしは、リータ達に泣き付くのであったとさ。
ノルンをなんとかリータ達に押し付けたいのだが、まだわしのデータが揃っていないとの事で離れてくれない。リータ達もトイレを覗かれたくないからか、受け取ってもくれない。
もう仕方がないので、ダンジョン探索に取り掛かるわしであった。
第3フロアも上のフロアと同じく罠がある程度の迷路なのだが、少し広くなっていたから突破時間も少し長く掛かってしまった。
このフロアのボスは、アイアンオーガとか言う2メートルオーバーのマッチョな鬼。金棒まで真っ白で、ノルン
「じゃあ、次はわしの番かにゃ?」
「「「「「じゃ~ん~けん……」」」」」
「わしも入れてにゃ~……ぽんにゃ!」
なんとかリータ達のじゃんけんに間に合ったが、わしは最下位。若干、慌ててグーを出させる策略臭いが、仲間外れにされるよりマシだろう。
勝者のイサベレは、アイアンオーガに突撃。見えていないのに、危険察知能力のおかげで見えているように戦っている。
一通りアイアンオーガの金棒を避けたイサベレは、細身の刀で四肢を切断。さすがは白銀の武器だけあって、白魔鉱程度なら余裕で斬れたようだ。
首まで斬り落とすと、アイアンオーガの動きは止まるのであった。
「アレのどこがめっちゃ強いにゃ?」
イサベレがあっさり倒すと、わしはニヤニヤしながらノルンに問う。
「うっそだよ……時の賢者様ぐらいあっさり倒したんだよ」
「にゃんだ。時の賢者ってたいしたことないんにゃ~」
「時の賢者様を
「にゃんか角が生えてにゃい? にゃっ!? ビリッと来たにゃ~!!」
どうやら時の賢者を馬鹿にする行為は禁止事項だったらしく、怒ったノルンは電撃を
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