690 観光に狩りに大忙しにゃ~


 パレンケ遺跡を観光した翌日、新たな遺跡を見付けようと戦闘機は空を行く。


「あっ! あそこ、白い森がありますよ!!」

「これも旅の醍醐味ニャー! 降りてニャー!!」


 遺跡観光はリータとメイバイも興味津々なのだが、狩りも忘れていなかったようだ。その他からも着陸しろとの大合唱なので、渋々着陸。

 近くに獣の群れが居たので蹂躙。また新たな獣の群れが居たのでそちらのほうへ……


「白い森はよかったにゃ?」

「「「「「あっ!!」」」」」


 目的を思い出させてあげたら、そちらのほうへ。リータ達は意気揚々と白い木の群生地に突撃して行くのであっ……


「危にゃいから、せめてわしから入らせてにゃ~」


 わしが必死に止めて、白い木の群生地に入るのであったとさ。



 この白い木の群生地の主はけっこう強い。白オオサンショウウオのさんちゃんぐらい強いので、リータ達にはちと早い。

 その事はオニヒメとイサベレも気付いていたから、わしと一緒に戦えばなんとかなるとか言っていた。


 無理して戦うぐらいならわしがサクッと倒したいのだが、リータの必殺技を使えば勝てるんじゃないかとわいわいやっているので、盾役に徹するしかないのだろう。

 そうして草木を掻き分けて進んでいたら、大きな湖に到着。そのかたわらには、30メートル近い大きな白い生き物が……


「アレ? さんちゃんがこんな所に居ますね……」

「そっくりさんニャー!」


 しかし、その生き物はさんちゃんに似ていたので、リータやメイバイ達のテンションがダウン。いちおうわしの友達に似ているから、殺す事に躊躇ためらいが生まれた。


「アレはウーパールーパーにゃ~」

「「「「「ウーパールーパー??」」」」」

「ちょっと話をしてみるにゃ~」


 わしが生き物の種類を教えてあげたら、かわいい名前なのでさらに殺意は減少。わしもやる気の起きない顔を見ては、ヤル気が起きないのでトコトコと近付いてみる。


「ウパー!!」

「うっさいにゃ!!」


 しかし、さんちゃんと違って白ウーパールーパーはヤル気満々で向かって来たのでネコパンチ。数発殴って、敵意を奪ってやった。


「「「「「かわいそうにゃ~」」」」」


 さんちゃんがボコられたように見えた皆の非難の声は、無視してやるのであったとさ。



 いちおう白ウーパールーパーはわしの舎弟になったので、怪我を治してエサをあげてかわいがる。かわいがると言っても、イジメたりしない。だからコリスは、白ウーパールーパーの背中で飛び跳ねるのやめとこっか?

 わし達もここでランチをしてから、軽く水浴び。白ウーパールーパーの背中に乗って遊覧もしてみた。


「それにしても暑くなって来ましたね」

「蒸し蒸しするニャー」

「だんだん赤道に近付いてるからにゃ。この辺は亜熱帯に属するから、ビーダールとは暑さの質が違うんにゃ。これでも季節的に涼しい時期らしんにゃけど、蒸し暑いのは慣れないにゃ~」


 わしとコリスはすでに限界が来ていたので、適温になる魔法【熱羽織】を使っているから大丈夫。だから「毛皮を脱がないの?」とかボケはいらん。逆に聞くけど、そんなわしの姿を見たいの?


 わしが丸坊主になった姿を想像した皆は、一生脱がないでくれと懇願して来たが、脱げるものなら脱いでいる。これはわしの呪いなのだから……


 一時の休憩を取ったら白ウーパールーパーに別れを告げて、戦闘機に乗り込……もう少し狩りたいらしいので、この日は遺跡を探さず、狩りだけして一日が終わるのであったとさ。



 翌日は、さすがに昨日の狩りで皆は満足してくれたので、遺跡探索の開始。戦闘機でメキシコ最南東部のユカタン州に飛び、航空写真。その結果、ふたつの遺跡を発見した。


 ひとつ目の遺跡は、ウシュマル遺跡。丸みのあるピラミッドがかわいらしい遺跡だ。高さもかなりあって、写真撮影には持って来いだが、パカル王墓のようにお宝は見付からない。

 ただし、時の賢者の足跡は発見した。


「あんニャロー。また落書きしやがったにゃ……」


 そう。ピラミッドの頂上、中央辺りに日本語が書かれていたのだ。


「えっと……『クリスタルスカルはここにあるよ~』ですって。今回はずいぶん砕けた言い回しですね」

「でも……『見付かりそうにないから移動しました』ってなってるニャー」

「だからにゃにがしたいんにゃ~~~!!」


 時の賢者のメッセージは、やはり意味不明。翻訳してくれたリータとメイバイも苦笑いだ。


 ふたつ目の遺跡は、チチェンイッツァ遺跡。パカル王墓と似たような作りで一番上が部屋だったからお宝があるかと思ったが、いくら探しても時の賢者のメッセージしかない。


「またにゃ……」

「えっと……『さあ、このクリスタルスカルを手に取り、石の聖地に来たまえ!』今度はなんだか偉そうですね」

「こっちの続きは……『無理っぽいからもういいや。忘れてね~』だってニャ」

「せめて文言の性格は合わせろにゃ~」


 どうやら時の賢者は、このふたつの遺跡にクリスタルスカルを置いていたらしいが、自分で回収してパカル王の石棺の中に入れたっぽい。


「やっぱりわし達をからかってるんじゃにゃい?」

「ん。なんだかムカついて来た」

「せめて消してから死ねよにゃ~。時の賢者の筆跡も貴重にゃから、消せないにゃ~」


 イサベレもイラついているように見えるから消したいところだが、時の賢者は千年前に生きた人物。歴史的に貴重なサンプルになりかねないから、わしの一存では消すのは気が引ける。


 この日は、時の賢者はどんな人物だったのかと語り、夜が更けて行くのであった。そのほとんどは「バカなんじゃね?」って感じだったけどね!



 次の日は、わしの頭の中にあったメキシコ遺跡の候補地が無くなってしまったので、移動と戦闘。

 移動では、戦闘機から時々航空写真を撮って、休憩時間に皆と相談。しかし時の賢者のせいで皆に集中力が無くなり、遺跡がまったく見付からない。もう帰ってから、専門家に任せたほうがよさそうだ。


 戦闘では、わしに相談なく皆は突撃。たぶん犬だと思われる毛のない黒い獣は、瞬殺。モフモフが無いから、皆はなんか怒っていた。

 その次の戦闘では、群れに突撃して行ったと思ったらダッシュで戻って来た。何事かと思ったら、かわいいから手を出せなかったんだって。

 同じドッグでも、プレイリードッグは違う生き物らしい……


 とりあえずなんとか撫でられるようにしてくれと言われたので、わしが行って交渉。


 デッカ……コリスオーバーがゴロゴロおるぞ。


 かわいいと聞いていたわりには、黒いプレイリードッグはデカイし怖い。アレは小さい体で頑張って立っているからかわいいのであって、大きい体のネズミが立ってこちらを一斉に見ていたら、そりゃ怖い。

 逃げてくれたら楽なのだが、わしが近付いても逃げないどころか、囲んだところで飛び掛かって来た。


「ごろにゃ~~~ご~~~!! 頭が高いにゃ~~~!!」


 なので、隠蔽魔法を解いて威嚇。わしより遥かに弱い集団なので、プレイリードッグは威嚇だけでバッタバッタと倒れたのであった。



 穏便に済ませたかったのだが、こうなっては仕方がない。白いプレイリードッグを確認していたので、こいつがボスだと思って近付いたら、そうっと逃げようとしやがった。たぶん死んだ振りをしていたのだろう。


「動いたら殺すにゃ……」

「はひっ!!」


 念話で脅しを入れたら、あとは柔和政策。エサを与え、子分にも配るように言ったら……


「「「「「アニキー!!」」」」」


 舎弟が増えた。ま、これでわしのミッションはコンプリート。リータ達を連れて行き、全員家族と紹介したらプレイリードッグは「アネサン」とか言って撫でさせてくれるようになった。

 わしとコリスは興味がないので、お茶とおやつをボリボリ。リス王女様のお品書きの新刊を見ながら、今晩のメニューを話し合う。けど、全部は無しって言っておるじゃろ?


 そんな感じで二人でお喋りしていたら、リータ達が逃げて来た。理由を聞くと、ブラッシングをしてくれとプレイリードッグが集まって、一向に終わりが見えないから逃げて来たらしい……


「さすがに疲れました~」

「多すぎるのも考えものだニャー」

「じゃあ、そろそろ行こうかにゃ?」

「「「「もうちょっと~」」」」


 逃げて来たと思ったが、リータ達は休憩しに来ただけ。お茶やおやつを食べてわしをモフモフしてから、またプレイリードッグをモフりに行った。

 まぁもうすぐ夕暮れだし、今日のところはここで野営でいいだろう。バスを出してコリスと一緒にお昼寝するわしであった。



「にゃ~? 夕食時にゃ~??」


 お昼寝に突入してしばらくしたら、バスがガンガン叩かれていたので、わしは目を擦りながら外に出た。


「敵です! このままじゃ、ネズミさん達が食べられてしまうんです!!」

「自然の摂理にゃ~……あ、いま行きますにゃ~」


 リータが焦って報告しているのに、わしは頭が回っていなかったので酷い事を言っていたっぽい。なので怒られそうになったが、すぐに気付いたわしは出来る猫だ。

 敵との接触はいまのところ無いが、オニヒメいわく、めちゃくちゃ長い蛇とのこと。また友達の白ヘビを思い出して戦い難いが、白ヘビはニシキヘビのはず。今回はアナコンダと名付けてわしは気合いを入れる。


「準備はいいですね!」

「「「「にゃっ!!」」」」

「いや、わしの獲物にゃ~~~」


 リータ達が気合いを入れて走り出してしまったので、わしの気合いが薄れてしまう。しかしそんな場合ではないので気合いを入れ直し、リータ達を追い抜くわしであったとさ。



 おお~……白ヘビよりデカイし強い。たぶん多尾なんじゃろうけど、全容が見えないからわからんわ。ま、白ヘビと比べて顔がいかついから、そこまで気にならないか。


「これは凄いですね……」


 わしが黒い木に登って白アナコンダを見ていたら、リータ達が追い付いて来た。


「本当にやるにゃ~?」

「どれぐらい通じるか試してみたいのですが……」

「命知らずは早死にするにゃ~」

「だからシラタマ殿を頼ってるんニャー」

「「「「「お願いにゃ~」」」」」


 リータとメイバイだけでなく、皆は覚悟が出来ているようなので、わしも諦める。


「尻尾だけだからにゃ? 顔側に絶対に回るにゃよ??」

「「「「「はいにゃ~」」」」」

「それじゃあ、本物のヤマタノオロチ退治の始まりにゃ~~~!!」

「「「「「にゃ~~~!!」」」」」


 くして、猫パーティVS白アナコンダとの戦闘は始まるのであった。

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