691 信じられない威力にゃ~


 猫パーティVS白アナコンダとの戦いの火蓋が切られると、わしは黒い木から飛び下りて白アナコンダの顔に直進。リータ達も飛び下りて、大きく回り込んで白アナコンダの尻尾に向かって行った。

 この白アナコンダは、ハッキリとはわからないが尻尾を八本前後持っているようで、繋げたら2km近い代物。おそらく空から見たら、支流から八本の川が流れているように見えるだろう。


 そんな巨大な相手ならば、尻尾が弱点で間違いない。見えないんだからな。


 わしは白アナコンダの顔に近付いたら、顔面に【猫撫での剣】を一閃。直接攻撃に飛ぶ斬撃がプラスされ、一発で深々と斬ってやった。


「キシャアアーーー!?」


 突然痛みが走った白アナコンダは顔を空に向けたものだから、わしは鼻を蹴って空高々と打ち上げられる。


 チッ……こんなに速く動けるのか。急に顔をあげるから、横に飛び損ねた。


 ボヤイている暇は無い。白アナコンダは大口を開けて待ち構えている。なので、空気をグッと蹴って大きく離脱。


 あんなに強く噛み締めなくても、わしなんて丸呑みに出来るのに……


 白アナコンダの空振りを見届けたわしは、黒い木の枝に着地。キョロキョロしている白アナコンダの様子を見る。


 何しておるんじゃろう……食べた感触がないからわしを探しているのかな? あ、もう見付かった。そう言えばヘビって、ピット器官があるから体温でわかるんだっけ。それじゃあ身を隠しても意味がないな。

 それよりも、リータ達に注意が行ったら大事じゃし、もうちょっと近くで相手してやろうかのう。


 わしは空を駆け、白アナコンダに急接近。また顔を斬ってやろうと思ったが、白アナコンダも急に体を伸ばして噛もうとするので横に飛ぶ。


 浅い……か。こうも大きいと、間合いの取り方が難しいわい。……ん? どわっ!?


 白アナコンダの横顔を斬ったのも束の間。上から何か降って来たので、わしは落下しながら軌道を変えた。

 その直後、木々が上から叩き潰され、地面が爆ぜる。


 うっわ~……尻尾も使えるんじゃ……


 そう。上から降って来た物の正体は、白アナコンダの尻尾。長い尻尾を鞭のようにしならせ、わしを殴ろうとしたのだ。


 う~ん……冗談のつもりだったんじゃけど、マジでヤマタノオロチみたい。アレが戦闘形態ってとこなんじゃろうな~。


 白アナコンダは頭を立たせ、七本の尻尾も天を衝く。その扇状に伸びた細長い物体は、わしにヤマタノオロチを連想させた。


 ま、十分気を引けてるってことじゃろう。もう少し遊んでやらないとリータ達も納得しないじゃろうし、ボチボチやりますか。


 たしかに白アナコンダは【単鬼猫たんきねこ】を使っていない通常時のわしより強いが、何も苦戦していたわけではない。あまり派手に戦うと、リータ達が何も出来ないかと思って手を抜いていただけ。

 そんな事とは露知らず、白アナコンダはわしへ攻撃。尻尾を落としまくり、風の刃を飛ばし、噛み付こうとする。

 わしはしばらくカウンター重視。尻尾を浅く斬り、風魔法も斬撃を飛ばして貫通。噛み付きをかわして傷を付ける。


 こうしてわしと白アナコンダは自然破壊を引き起こし、戦闘が続くのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 時は少し戻り、シラタマと白アナコンダが接触した頃リータ達は、大きく回り込んで高い木に登り、上から尻尾を見ていた。


「太いですね……」

「それにどうなってるかわからないニャー」


 白アナコンダの尻尾はウネウネと動いていて、どこが尻尾か胴体かもわからないので、リータとメイバイは話し合っている。


「とりあえず攻撃してみましょうか。一人一撃で離脱って感じで行きましょう」

「じゃあ、私から行ってみるニャー!」


 リータ達はどうせたいしたダメージにならないと確信しているので、誰が一番でもいい模様。

 メイバイから小刀二刀流で斬って離脱すると、オニヒメが風魔法で追い討ち。イサベレも細身の刀で斬り付け、リータが気功パンチ。ラストはコリスの全力気功リスパンチだ。


 全員一撃を入れると、皆は高い木に登って話し合う。


「私の気功はダメですね。深くにまで届いてる気がしません」

「こっちもニャー。鱗が厚すぎて傷が付いた程度ニャー。イサベレさんはどうニャー?」

「私も一緒。生きてる状態だと、メガロドンより硬い」


 千年物の白メガロドンの鱗を斬れた白銀の武器でも、生きていると死んでいるのでは防御力が違うので、リータ、メイバイ、イサベレの攻撃はほぼダメージになっていない。


「私も無理。魔法は一切通じないね」

「わたしも~。あんまりてごたえない」


 オニヒメの魔法では、鱗に傷すら付かなかったのでギブアップ。猫パーティNo.2のコリスの攻撃は、リータよりダメージを与えたけど、白アナコンダの気を引けるほどのダメージではなかったようだ。

 そんな事を話し合っていたら、大きな音が鳴って地面が揺れ、七本の尻尾が空に上がって行った。


「うわ……あんな攻撃まで出来るんですね」

「すっごいニャー。目の前でやられて、よけれるかニャー?」

「一本だけならなんとかなりそう。連続は無理」

「私は避けれないですから、一発で深々と埋まりそうです」


 白アナコンダの攻撃は、七本の尻尾が不規則に動き、一撃が重いので、リータ、メイバイ、イサベレは諦めモード。それを一人で捌き続けているシラタマが異常なのだ。


「でも、一本だけは無防備ですね。あそこに、アレやっちゃいましょうか?」

「あ~……的も大きいし、練習台には持って来いだニャ」


 ここでリータ達はゴニョゴニョ作戦会議を行い、準備を開始する。


「では、作戦通り行きましょう!」

「「「「にゃ~~~!!」」」」


 まずは、コリスによるリータのぶん投げ。重たい大盾を持った人間でも、コリスに掛かれば空高々と投げられる。

 それと同時にオニヒメの【突風】。このふたつで、リータ単体で飛ぶよりも高い飛距離が出た。


 次はコリスとイサベレとメイバイが、コリスの【突風】によって空を舞う。リータと比べるとおよそ半分程度だが、これでいい。

 その頃にはリータも最高到達点に到着したので、土の塊を蹴って急降下。そのスピードの中、大盾に取り付けられた鎖を投げた。


「イサベレさん! そっちに行ったニャー!!」

「ん! 任せて!!」


 その鎖は、イサベレが空気の塊を蹴ってなんとかキャッチ。そしてイサベレとメイバイは空中でコリスの近くに集まると、またコリスの【突風】で下降。その風はリータも加速させる。


「もうちょっと左かな?」


 その落下の最中、ズレていたらオニヒメの微調整。速度が落ちない程度にリータに風を当て、白アナコンダの胴体の中央に誘導する。


「喰らえにゃ~~~!!」


 ラストは、リータが大盾に魔力を流しながらのぶん投げ。白アナコンダの胴体、着地間際に投げたので、いくら不器用なリータでも外すはずがない。だが、大盾の尖った部分ではなく、いつも攻撃を受けている平らな部分が当たってしまった。


 それなのに白い大盾は、自重と重力と加速によって、あの白アナコンダの鱗でさえ貫いてしまった。


「「「うわ~~~!!」」」


 鎖を掴んでいた、コリス、メイバイ、イサベレは大変なもの。突如スピードが上がり、なんとか胴体に着地しても重みがある。


「「「うんとこしょっ……にゃ~!!」」」


 三人がかりならば鎖は止められたようだが、それと同時に白アナコンダの胴体がうねる。


「キシャアアァァーーー!?」


 白アナコンダの図体がいくらデカくとも、体を貫通させられたら痛みが走ってもおかしくない。


「地面から出ました! 撤収です!!」

「「「にゃっ!!」」」


 大盾の回収はあとから。リータ達は大盾を地面から引っこ抜いたあとは逃走し、白アナコンダに大ダメージを与えた事を喜び合うのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 一方その頃わしは……


「キシャアアァァーーー!?」


 なんか後ろ向いて叫んでおる……なんじゃ??


 白アナコンダと激闘を繰り広げていたら、急に攻撃が止まったので不思議に思っていた。


 あ、リータ達が何かやったのかな? またなんかやらかしたのか……ま、ダメージが入ったっぽいし、そろそろ終わらせてもいいじゃろう。


「【青龍】にゃ~!」


 リータ達に意識が行きそうになった白アナコンダには、氷の龍をプレゼント。後ろを向いて隙だらけだったので、首に綺麗に巻いてあげた。

 すると白アナコンダは冷たさに驚いて、自分に尻尾をぶつけて【青龍】を砕く。


 その時間を使い、わしは大ジャンプからの……


「【大鎌】にゃ~!」


 巨大な風の刃。白アナコンダの顔面に入ったが、たいしたダメージになっていないと思われる。


 そうそう。大口を開けてくれたらいいんじゃ。


 【大鎌】によって、白アナコンダは完全にわしにロックオン。空中に居るわしをバクンッと食べた。


「猫又流抜刀術……【回転猫】にゃ~!!」


 その直後、白アナコンダの内部から円形の斬撃が飛び出し、頭がゴロリと落ちるのであった……



 白アナコンダの頭が落ちて三秒後、頭を支えていた胴体がドーンと地面を叩き、それを皮切りに七本の尻尾が次々と落下して辺りを揺らした。


 よっと。思ったより楽勝じゃったな。それよりも、ちょっと体液が付いたから、きれいきれいしとこっと。


 白アナコンダの胴体が平行になったと感じたわしは切断された箇所から出たら、水を被ってキレイサッパリ。水気も吹き飛ばした頃に、リータ達が走って来た。


「また凄い倒し方しましたね~」

「私達は穴を開けるのがやっとだったのに、さすがシラタマ殿ニャー!」


 リータとメイバイがチヤホヤしてくれるので、わしは鼻高々。労ってくれて撫で回してくれるので、気持ちよくて寝てしまいそうだ。


「ゴロゴロ~。やっぱりあの叫び声はリータ達がやったんにゃ~。にゃにしたか教えてにゃ~」


 白アナコンダは、ぶつ切りにしてから次元倉庫に。そうしながらお互いの戦闘談をしつつリータ達の戦闘現場に着いたら、白アナコンダに大穴が開いていた。これは、投げる時にリータの手元が狂って大盾の平らな部分をぶつけたせいだ。

 その事を知らないわしは、引き気味に質問してみる。


「こ、これって、リータ達がやったにゃ?」

「そう言ったじゃないですか。まぁ、私達もこんなに大きな穴が開くとは思っていませんでしたけどね」

「上手く立ち回れたら、私達でも倒せたかもしれないニャー!」


 盾が貫通しただけで、コリスより大きな穴なんて開くもんかね~? いったいぜんたいあの盾は、なんなんじゃろ??


 わしの作った大盾が信じられない攻撃力を発揮しているので、作った本人ですら何を作ったのかわからなくなる今日この頃であった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る