676 アメリカ土産を配るにゃ~


 べティが鼻血ブーというトラブルに発展したので、隠し持っていたチョコレートは全て没収。皆にも食べ過ぎたらこうなると、鼻に詰め物をしたべティを見せて脅しておいた。

 皆はチョコを食べただけで血が出ると聞かされて、毒を食べさせられたのだと勘違いして怖がっていたので、しばらくは欲しがって来ないだろう。


「返してよ~!!」


 べティ以外……


「ちょっ! なんでカメラで撮るのよ!!」

「チョコの資料用にゃ。詰め物姿もかわいいにゃ~。にゃははは」

「やめて~~~!!」


 なので、恥ずかしい姿を激写。チョコを欲しがる度に見せてやる。言うことを聞かないと各国にも配るとも脅したので、もうわしに逆らえないだろう。

 エミリにも焼き増しした写真をプレゼントする予定。チョコを作る際には、これを見せて止めてもらう。


「ママ、味見もダメだって。また血が出ちゃうよ~」

「ちょっとだけだって~」


 しかし追加のチョコを作らせてみたらこの始末。自分の恥や健康よりも、チョコが勝るようだ。


「子供に迷惑掛けるにゃよ~」

「うっ!!」


 なので、べティが老婆だった頃を思い出させて止めるわしであったとさ。



 これもいつまで効くかわからないが、二人の作ったチョコは全てわしの次元倉庫へ。物が無ければ食べられないだろうけど、べティは収納魔法の中を全て出せ!

 思った通り板チョコを大量に隠し持っていたので、全て没収。一枚だけ渡して、今日と明日の分だと言っておいた。

 まるでわしが子供のしつけをしているみたいだとエミリに言われたべティを見たら、なんとも言えない顔でプルプルしていた。母の威厳とチョコの狭間で葛藤しているようだ。


 このチョコは、キャットハウスの上階に住む者に、夕食後のデザートとして配布。猫ファミリーとベティ親子は食べ過ぎたので無し。ベティが作ってくれたゼリーにしておいた。

 もちろんチョコは大好評。ついでにゼリーもこの世界初めての食べ物だったので、こっちも大好評で奪い取られた。

 双子王女にも感想を聞いてみたら、逆に質問が多いのでエミリに丸投げ。でも、わしに返って来たので、女王達に秘密にする条件で教えてあげた。



 そして翌日、わし一人で東の国の我が家へ転移。お土産を持って城にアポ無し参上。その辺の人に女王とさっちゃんに会いたい旨を伝えたら、執務室に勝手に行けとのこと。二人とも執務室に居るらしい。

 こんなにセキュリティが甘くて大丈夫なのかと考えながら歩いていたら執務室に到着。ノックをすると中からわしの名前が聞こえて来たので、わしが来ている事はバレバレみたいだ。


「さっちゃん。こんにゃちは~」


 中に入ったら、さっちゃんが仕事机の前に座って膝をパンパンと叩いていたので、とりあえずその上に座ってみた。


「もう! 来るの遅い~!!」

「ごめんにゃ~。忙しかったんにゃ~」

「一時帰国してから数日ゴロゴロしてたって聞いてるんだけど~?」

「ゴロゴロゴロゴロ~」


 双子スパイからわしの行動は筒抜けなので、嘘を言ったと思われてモフモフの刑に処されてしまった。まぁ撫でたいだけなんだろうけど、まだ挨拶程度しかしていないので話を続ける。


「全ての旅を終えてから、さっちゃんに会いに来ようと思ってたんにゃ。ゴロゴロ~」

「サンダーバードだっけ? そんな大事なこと、普通忘れる??」

「これは女王のせいでもあるからにゃ? いきなり来るんにゃも~ん」


 アメリヤ王国のゴタゴタもそうだが、やはり女王がバカンスにやって来た事がわしの中では一番面倒だったので、文句タラタラ。さっちゃんもアメリヤ王国に連れて行ってくれなかったからグチグチ言っている。


「サティ……あの程度の仕事も……」

「にゃんでもありません!!」


 女王が何かを言い掛けてさっちゃんが割り込んだところを見ると、おそらく仕事の不備があったのだろう。


「にゃんか失敗したにゃ?」

「にゃんでもにゃいよ~? お母様にも怒られにゃかったもん」


 さっちゃんがこんな口調になっているって事は、やはり何かやらかしていたっぽい。ただ、本当に怒られていなかったようだから、女王も遊びに行った手前、強くは言えなかったのだろう。

 二人ともその件に触れて欲しくないのか、サンダーバードの話題に無理矢理変えていたので、お土産の羽根と写真を並べてあげた。


「うわ~。色とりどりだね~。羽根もきれ~い」

「凄いわね。ハンターギルドの資料として、かなり価値があるわよ」

「そう言えば、買い取りコーナーの値段表に無いヤツもあるにゃ。スティナにあげよっかにゃ?」

「たぶん買い取ってもらえるから料金は受け取りなさい。ハンターでしょ」

「あ、そうだったにゃ。にゃははは」

「ねえねえ? 何本か貰っていい??」

「さっちゃんには全部あげるにゃ~」


 落ちてる物を拾って来たので、一本ずつぐらいタダであげてもかまわない。まだまだ大量にあるからな。

 それから、ひとまずサンダーバードとの戦闘の話をしてあげたら一時休憩。女王とさっちゃんは仕事中だったので、お喋りはお昼まで待つわしであった。


「見られてたら仕事しにくいんだけど……」

「さっちゃんもわしの仕事の邪魔してたにゃろ? あ、ここ、スペル間違ってるにゃ」

「ホントだ……って、いつものようにお昼寝しててよ~!!」


 さっちゃんの仕事にちゃちゃ入れながら……



 さっちゃんの仕事にちゃちゃを入れていたら、女王からめっちゃ睨まれたので、わしは狸寝入り。そのまま本当に眠ってしまったので、目が覚めた時には王族専用食堂でモグモグしていた。


「あっちゃ~。料理のお土産もあったんにゃけど。モグモグ」

「なになに? まだ手をつけたところだから食べられるよ!」

「じゃあ、さっちゃん達の料理はわしが食べるにゃ~」


 めくるめく宮廷料理はわしの胃袋へ。べティの多国籍料理は女王とさっちゃんの口へと運ばれる。


「お肉は普通のお肉なのに美味しいね。これはアメリヤ料理?」

「まぁそんにゃところにゃ」

「いえ、アメリヤ王国で食べた物は魚料理が多かったから違うはずよ。たぶんシラタマは、また何かを隠しているわね……」

「にゃにも隠してないにゃ~」

「そう言えばシラタマちゃんって、お母様に秘密がバレたんだって~?」


 名探偵の女王はさっちゃんからも尋問していたようなので、わしの転生の秘密がバレた事もさっちゃんに筒抜けみたいだ。しかも女王はべティにまで言及して来やがった。


「どうせあの露店の女の子が作ったのでしょ?」

「にゃ、にゃぜそれを……」

「あんなに気に掛けて料理長候補にしていたら、言ってるのと一緒よ」

「もう謎解きはやめてくれにゃ~~~」


 わし、ギブアップ。スパイは居るわべティと抱き合って泣いている現場を見られていたのだから隠しようがない。涙目でべティの正体を聞かないでくれとお願いするしか出来なかった。



 わしの必死のお願いで、べティの秘密は守られたと思うが、たぶんある程度バレていると思う。二人でコソコソと「アレは同郷だよね~?」とか言っていたのを念話で盗み聞きたから確実だ。

 ただし、わしにはその事を聞いて来なかったので、わしもバレていないていで接する事にした。


「あと、これもお土産にゃ。割りやすく出来てるから、ちょっとずつ食べてくれにゃ」

「大きいけど……これってチョコ??」

「そうにゃ。時期的に暑いから、残った分は溶けないように保管してくれにゃ~」

「ん! いくらでもいけそう!!」

「いまはそれしかにゃいから大事に食べてにゃ~」


 板チョコも高評価なのだが、さっちゃんは美味しさのあまり半分も食べてしまった。女王も多く食べていたが、それよりも気になる事があるようだ。


「『いまは』と言ったわね。このチョコはコーヒー豆からから作られているんじゃないの?」

「カカオと言う植物から作られているとだけ教えてあげるにゃ」

「と言うことは……」

「もう推理しないでくれにゃ~~~」


 またわしはギブアップ。まさかエミリとべティの関係がわかるわけがないと言いたいところだが、女王の推理力ならそこまで辿り着きそうなので怖い。わしは失言を避けて貝になるしかないのだ。

 さっちゃんが「もっと食べた~い!」と撫で回すのでゴロゴロ言ってしまっているが……わしの分のチョコも取られたし……


「まぁいいわ。量産体制が整ったら一報を入れること。わかったわね?」

「はいにゃ……」


 猫の国にはスパイが居るから騙し通せないから、女王の条件を呑むことで、エミリとべティを守るわしであった。



 わしがアメリカ横断の旅を語っていたら、二人のお昼休憩はおしまい。仕事に戻ると言うので、邪魔しては悪いからわしは撤退。さっちゃんの休みの日を聞いて、今度はいっぱい遊ぼうと言ってお暇する。

 城から歩いて目的地に向かっていたら、小説のファンが大量に走って来たのでダッシュで逃げて、屋根を飛び交い商業ギルドに逃げ込んだ。


 商業ギルドでは、サブマスのエンマの膝の上で撫でられながら商談。板チョコとレシピを提出して知的財産権の登録をしておく。

 これは猫の国の商業ギルドでもやっているのだが、東の国でもやっておけば、他国の牽制になるから安全なのだ。


 エンマにも板チョコは高評価なので、早く量産体制を整えろと口を酸っぱく言われたら、次へ。屋根をピョンピョン飛び交いハンターギルドに入った。

 サンダーバードの報告は、末端のティーサに言ったところでギルマスのスティナに振られると思うので、手順を省略して直接ギルマスの部屋に乱入。

 仕事を邪魔するなとスティナにわしゃわしゃされたが、サンダーバードや各種色違いの羽根と写真を提出すると、胸に挟まれた。どうやら大発見が多いので褒めてくれているようだ。


 報酬もそれなりに高いので、わしはウハウハ。スティナも評価が上がるからウハウハ。仕事中なのに酒を注いで乾杯までしてしまった。

 まぁお互い一杯ずつだから、そこまで仕事に支障をきたさないだろう。その一杯を飲み終えて帰ろうとしたら、スティナはこっそりと酒を注いでいたから注意したけど、飲んでいないと信じよう。


 せっかく東の国に来たのだから、ガウリカとフレヤの店にも来店。ガウリカには南の小国にコーヒー豆農家がどれぐらいあるかを聞いてメモ。ビーダールは海があるからカカオ生産は持ち掛けないので、しばらく秘密だ。

 フレヤの仕立て屋では、リータ達の装備を発注。白い巨象の生地はわしの持ち出しなので、手間賃だけを支払う。その時、何か面白い素材はないかと聞かれたので、今度整理して持って来ると言っておいた。



 これで東の国での用事は終了。リータ達の元へ帰って、わしはゴロゴロ就寝。その翌日からは、南にある小国を回り、国王とカカオの生産の相談。突然訪問したのにも関わらず、どの国も仕事をもらえると喜んで即決してくれた。

 あとは農家にべティから聞いたカカオの育て方を教え、農地にカカオと背の高い木の種を植えて、栄養水を振り掛けておけば、一ヶ月もしない内に収穫できるはずだ。

 べティもそこまで詳しくなかったので、より美味しいカカオを育てるように頼んでおいた。ビーダール以外の南の小国に頼んだと言っておいたので、各国は競い合って育ててくれるだろう。


 こうしてカカオが収穫されるのを、わくわくして待つわし達であった。

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