658 東海岸で遊ぶにゃ~


 アメリヤ王国滞在九日目……


 今日は朝から海に出向き、女王のバカンスに付き合う。この為に、女王はリータ達用の水着を買っていたらしいが、わしが持ってるからそんな無駄遣いしなくていいのに……

 わしには買ってくれていなかったから文句を言ってみたら「着れるの?」とのこと。


 たしかに着れないけど、仲間外れは寂しい。いや、コリスとウサギさんはこっち側……あれ? ウサギさんにも水着あるのですか。特注で作ってもらったのですか。メイバイもですか。


 水着が無いのはわしとコリスだけ。まぁわしは昔リータ達からプレゼントされた海パンを持っているし、コリスは着たがっていないから問題ない。砂浜にパラソルやビーチベッドを用意して、皆で海水浴を楽しむ。

 水魔法を使ってサーフィンなんかもしていたら、漁師が不思議そうな顔をしていたので、アメリヤには無い遊びのようだ。どちらかと言うと、女王の体を見たスケベ顔だったけど。


 遊び疲れたらお昼寝。ただ、ランチ間際だったのでコリスに起こされてエサを用意する。その際リータ達は「この海にどんな魚が居るんだろ~?」って怖い顔で喋っていたので、わしは無視。

 コリスと料理について喋っていたら、女王の鶴の一声で拉致られた。海の戦闘を見学したいそうだ。


 拉致られてもルシウスキャット号は出していなかったので説得してみたが、行かない事には誰も納得しないだろう。

 仕方がないのでルシウスキャット号で沖に出て、釣りをしてみる。黒サメの身と血をバラ蒔いただけだが、わらわらと魚が寄って来て大漁だ。


「【青龍乱舞】にゃ~~~!!」


 巨大なエリザベスキャット号でもないクルーザーに非戦闘員が乗っているので、早目の処置。海に氷の龍を撃ち込みまくって一網打尽にしてしまう。


「残りは私達でやりますよ!」

「「「「にゃ~~~!!」」」」


 黒い巨大魚は凍り付いたが、数匹いる白い巨大魚が氷を割っていたので、リータ率いる猫パーティが対応。全員わしの作った氷の足場に飛び下りてしまったので、わしは女王の護衛に残るしかなかった。


「凄いわね……」


 巨大生物の襲来に侍女とメイドウサギはあわあわしているが、女王は目を細めて皆の戦闘を凝視している。


「みんにゃ慣れたもんだからにゃ~」

「いったいぜんたいどんな訓練をしたら、こんなに強くなるの?」

「訓練内容は秘密にゃ~」

「……いいわ。イサベレに聞いてみる」

「それはやめて欲しいにゃ~」


 誘導尋問に弱いイサベレなんかに聞かれては、秘密にして欲しい事は駄々漏れになるので、魔力濃度が高い場所で生活すればエルフにクラスチェンジ出来ると教えてあげた。

 そんな場所、仮に見付かっても白い獣が鎮座しているから奪い取るのに骨が折れるし、獣が奪いに来るから女王は諦めるしか手はないようだ。まぁ他にも細かい訓練方法はあるけど、秘密だ。


 そうこう喋りながらリータ達の戦闘を見ていたら、巨大魚の大群は沈黙。しかし、全員全速力でルシウスキャット号に逃げて来たから女王は不思議そうにしている。


「海が盛り上がって来てるわね……」

「あ~。強いのが来ちゃったみたいだにゃ」

「夢だと思いたいけど、これは現実なのよね?」

「にゃはは。さすが女王にゃ。普通あんにゃの見たら、腰抜かすにゃ~」


 侍女とメイドウサギは抱き合って震えているのに、女王は冷静なもの。体高50メートルの白い巨象ぐらいありそうな白い生き物なのに、尻込みしないで見ている。


 あれは伊勢海老かな? いや、以前戦った白伊勢海老と比べてハサミの大きさが全然違う。あの馬鹿デカいハサミって事は、ロブスターってヤツじゃな。


「そんじゃ、わしが行って来るにゃ~」


 リータ達がルシウスキャット号に飛び乗ると、タッチ交代。わしは氷に飛び下りて、【単鬼猫たんきねこ】発動。狭い額に白銀のアホ毛がピョンッと立ったら、白ロブスターへ突撃。


 白ロブスターが氷に乗ったところで馬鹿デカいハサミが宙を舞った。


 当然わしが斬ったからじゃ!


 【単鬼猫】を使った筋力で神剣【猫撫での剣】を力いっぱい振れば、斬撃を飛ばすぐらいわけがない。それも【鎌鼬】や【大鎌】なんて目じゃないぐらい強力な斬撃なので、白ロブスターのぶっといハサミだって一刀両断だ。

 素早く動き、刀を振り続ければ、白ロブスターはハサミも脚も根本からバッサリ。まな板の鯉状態。


 別に【単鬼猫】を使わなくても勝てる相手だが、女王が居るので短時間で終わらせたかっただけ。

 ラストアタックは、わしが前回りに高速回転しながらの斬り付け。この攻撃で、白ロブスターは頭から尾まで真っ二つに斬られて絶命するのであった。



「にゃはは。刀だけで勝てたにゃ~。にゃははは」


 白ロブスターをぶつ切りにして次元倉庫に入れ、ルシウスキャット号に戻ったわしは御機嫌。リータ達も集まって来て、かっこよかったと褒めてくれている。


「刀だけって……どうやったらあんな大きな物を斬れるのよ」

「斬れる物は斬れるんにゃ」

「その【猫撫での剣】の力ってこと? わかったわ。買いましょう」

「売るわけないにゃ~~~」


 女王は一人でオークションを開いていたが、メインウェポンを売るわしではない。しかしもう一声あったら頷きそうになったので危なかった。女王って、どんだけ金持ちなんじゃろう……


 少し心が揺らいでしまったが、慌てて巨大魚の回収。リータ達にも氷を砕く事を手伝ってもらい、巨大魚を全て回収したら砂浜に戻るわし達のであった。



「シラタマさん!」


 ルシウスキャット号を砂浜に乗り上げて女王達を下ろしていたら、人混みの中からジョージが飛び出て来た。


「あちゃ~。ちょっと遊び過ぎたにゃ。遅れてごめんにゃ~」

「そんなことより、何か巨大な物が海に居ませんでした!?」


 わしの遅刻よりも、ジョージは海の生物が気になるらしいので、釣りをして大漁だったと教えてあげた。


「釣りって……シラタマさん達に取っては、アメリヤの有事はただの遊びですか……」

「遊びじゃにゃくて、ハンターの仕事にゃ~。予定外にゃけど、取れ立てピチピチを振る舞ってやるにゃ~」

「はあ……」


 ジョージはわし達の強さを思い出して動きが鈍いが、尻を叩いて人を集めてもらう。

 この人混みは、ほとんど原住民。皆、公爵邸で療養中だったのだが、監禁に近い状態なので、海に連れ出してあげようとわしが提案したのだ。


 何をするかと言うと、お祭りだ。


 持っていた大木を瞬く間に切り分けたら、猫ファミリーで積み木。女子が軽々材木を持ち上げている姿を見て驚いている原住民に協力してもらって、バーベキューの準備。

 焼き場が続々と準備される中、わしは先ほど活け締めにした黒い巨大魚を捌く。また原住民は驚いていたが、焼いた物は食べてくれていいと言ったら、すぐに辺りから魚の焼ける匂いが漂った。



『みんにゃ~? 食ってるにゃ~??』

「「「「「おおぉぉ~!!」」」」」

『これからもっとうまい魚を捌くからにゃ~??』

「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」


 ルシウスキャット号の穂先に乗ったわしの言葉がオオカミ族から各部族に通訳されて伝わると、原住民はうまい魚に大盛り上がり。食って騒いでいるところにおかわりがあると聞いて、さらに盛り上がる。


『ちぇすとにゃ~!』

「「「「「………」」」」」


 しかし、白い巨大なハサミを見た原住民は、その先の体の大きさを想像して黙ってしまった。そりゃ、ハサミだけで20メートル近くあるのだから驚くわな。小さな猫が真っ二つに割ってるし……


『ほれほれ~。取りに来いにゃ~。パクッ。生でも超うまいにゃ~!』


 白ロブスターをわしが一口食べると原住民は押し寄せ、その場で食べたり焼き場に戻ったりと大騒ぎ。その間に女王達の感想を聞くが、ほとんどわしの出した出来合いの料理しか食べていなかった。


「ジョージ君とこの料理人は連れて来てなかったにゃ?」

「連れて来てはいるのですけど、いま自信を喪失してるんです。シラタマさんが出した料理に勝てる気がしないとか言って……」

「焼くだけでいいんにゃ~」


 めくるめく猫の国料理を食べたアメリヤ料理長はやけ食いしてるので、リータ達で白ロブスターを焼いて食べていたらしい。それも料理長は食べて、「もうそれでいいんじゃね?」って拗ねてるらしい。


 そんな料理長を説得していたら原住民の騒ぎ方が変わったので、またわしは通訳を呼んで叫んでもらう。


『みにゃさ~ん! 魚にゃら腐るほどあるんにゃし、アメリヤ国民のみにゃさんにも分けてあげてにゃ~! 頼むにゃ~!!』


 どうやらアメリヤ国民が焼き魚の匂いに釣られて外に出て来たから、原住民は騒いでいたので、わしはお願い。

 さすがにタダメシを食わせてくれている猫のお願いには、渋々だが従ってくれたので、アメリヤ国民に白ロブスターを振る舞ってくれている。


『にゃはは。ありがとにゃ~。今日はわしのおごりにゃ! いさかいは忘れて食って騒げにゃ~!!』

「「「「「にゃ~~~!!」」」」」

「「「「「にゃ~~~??」」」」」


 わしの叫びに呼応して、約半数は何故か「にゃ~にゃ~」叫び、約半数は不思議そうに「にゃ~? にゃ~?」言っている。もちろんわしも、後者の反応だ。


 その騒ぎを見ていたら、夫婦らしき男女が幼女を肩車して一直線にわしに向かって来ていたが、オオカミ族に止められていたのでわしは駆け寄る。


「その子達はわしの知り合いにゃ。ベティちゃん、いいところに来たにゃ~」


 オオカミ族が解散すると、ベティは地面に下ろされた。


「ビックリした~。あんな種族までいるのね。食べられるかと思ったわ~」

「にゃはは。わしも初めて会った時は同じことを思ったにゃ。でも、ああ見えて、人は食べない優しいオオカミさんにゃ」

「猫は??」

「わしも人にカウントしてくれにゃ~」


 そもそも命の恩人を食べるわけがないと文句を言っていたら、ベティは話を変える。


「いいところに来たって、どゆこと?」

「にゃ! そうにゃ。ロブスターで料理を作ってくれにゃ~」

「わ~お。高級食材じゃない。腕が鳴るわ!」


 というわけで、ベティ家族を女王の前に連れて行ったら……


「アタシ、ムリ、ツクレナイ」


 女王の口に入ると知って、ベティが歳相応の幼女になった。


「そんにゃに緊張するもんにゃの?」

「女王様だけじゃなく、王様も居るじゃない! あたしたち庶民なのよ!?」

「エミリの料理は各国の王様が食べて太鼓判を押してるから大丈夫にゃ。テーブルの上にあるのも、ほとんどエミリの料理にゃよ?」

「あの子に何させてるのよ!!」


 いくら転生者であっても権力者は怖いらしいので、ツッコまれてしまった。しかし、娘がそんな大役を任されていると知って母としてのプライドか、料理を作ってくれる事になった。

 なので、キャンプ用で持っていたキッチンを次元倉庫から出して、調味料や食材を山ほど与えてみた。


「すっご……これ、全部使っていいの?」

「いいにゃ~。エミリにも負けない料理を頼むにゃ~」

「あたしが負けるわけないでしょ!」


 ちょっとあおってみたらベティはやる気満々になったので、調理風景をわしは見ているが納得できない。


「にゃあにゃあ?」

「なに?」

「腕が鳴るとか言ってにゃかった??」

「言ったけど……それがなに??」

「作ってるの、お父さんとお母さんにゃ~」


 そう。ベティは指示を出しているだけで、料理を作っているのは両親。言葉の綾とはわかっているが、わしはツッコまざるを得ないのだ。


「だってフライパン、重くて持てないんだも~ん。あたし、かわいい幼女よ?」

「そのかわいいってのやめにゃい? いくつだと思ってるにゃ??」

「はあ!? だったらあんたは敬語で話しなさいよ!!」


 かわいこぶりっこするのでいさめたら、ベティはめちゃくちゃキレるのであった。見た目は幼女でも、やはり女性に年齢はご法度はっとらしい……魂年齢も教えてくれないし……

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