618 アメリカ大陸横断にゃ~
ウサギの街に一泊した翌朝……
わしたち猫パーティは、多くのウサギに見送られて、コロラド州南西部にあるウサギの街から飛び立った。
戦闘機で東に進むには太陽光が眩しいので、全員サングラスを着用。わしとコリスが似合わないと一通り笑ったら、ツクヨミ被害者の会が発足されていた。
「どうしたらいいと思う?」
「誰かが起こしてくれるのを待つしかないニャ。あとはスサノオ様が、いつ気付いてくれるかによるニャー」
イサベレの質問にメイバイ
メイバイの夢はわしと違って、アマテラスが現れないから喧嘩に発展しないで、スサノオがツクヨミの通信を切断するだけで終わるらしい。しかし夢のチャンネルは多数あるらしく、ツクヨミが巧妙に入り込むから見付けるのが遅れるとのこと。
その件について、スサノオから正式に謝罪があったそうだ。
「そんにゃことが出来るにゃら、わしの時も切断して欲しいにゃ~」
「私も頼んでみたけど、アマテラス様が居るとどうしても熱くなるみたいニャー」
「あ~……仲が悪いからにゃ~」
「あの二人に何があったニャー?」
「日ノ本に古事記って古い本があるんにゃけど、その中に出て来てにゃ~……」
わしが古事記を語ると、コリス以外は興味津々。でも、スサノオのウンチ話はコリスにもウケた。
ただし、わしもうろ覚えだから、もっと詳しく知りたいなら玉藻かちびっこ天皇に聞いたほうが確実だろう。もっと確実なのは、三柱に直接聞くこと。
所々間違っている箇所があるから本人に聞いたほうがいいと言ってみたら、リータ達は唸り出した。
そりゃ、毎回、愚痴や兄弟喧嘩に巻き込まれたくないのだろう。聞き出すには何千年掛かるかもわからないので保留になっていた。
そうこう話をしていたら、コリスが噛んで来た。どうやらお昼のようだ。なので着陸しようとしたら、黒い森の手前で着陸しろとのこと。
いちおうそこに降りたら、ランチを食べて戦闘機に乗……
「みんにゃどこ行くにゃ?」
「「「「「狩りにゃ~」」」」」
乗らずに、黒い森に侵入。リータ達はアメリカ固有の獲物を狩りたいようなので、わしも続くしかなかった。
しかし、獲物を手当たりしだい狩られては、旅のスピードが落ちる。絶対に東へ直進するように進む事を約束させた。
「次は南東」
「いや、直進……」
「行きますよ~!」
「「「「にゃ~~~!」」」」
「待ってにゃ~~~」
いちおう約束の半分は守ってくれるリータ達。イサベレの危険察知を頼りに、ジグザクに走って獲物を狩るのであったとさ。
「ほら~。日が暮れちゃったにゃ~」
獲物を狩りまくって、黒い森を抜けた頃にはもう夕暮れ。さすがにリータ達も反省しているだろう。
「数は居ましたけど、強い獣は居なかったですね」
「本当ニャー。白い森が近くにないと楽しめないニャー」
いや、全然反省していない。リータとメイバイは反省会はしているけど、移動速度については一切触れないのだ。
「はぁ……もうちょっと森から離れて野営しようにゃ~」
こうしてアメリカ大陸縦断一日目は、ちょっとしか距離を稼げず、狩りをしただけで終わるのであった。
翌日は、キャットハウスから出たら戦闘機で東に向かうのだが、皆は双眼鏡で白い森ばかりを探している。しかし、なかなか見付からないので顔が怖い。
「かわいい顔が台無しにゃ~」
「どこか白い森がありそうな場所を知りませんか?」
「知らないにゃ~……にゃ!!」
本当は以前撮った航空写真があるから調べたらわかるが、移動速度が落ちると困るのでとぼけるしかない。もちろんバレ掛けたが、わしが大声を上げるとリータからの追及は来なかった。
「見付けたのですか!?」
「煙にゃ! 集落があるにゃ!!」
「なんだ。集落ですか……」
「こにゃいだまで騒いでたにゃ~」
珍しくわしがテンション上げているのに、リータ達はサゲサゲ。今まで何個も集落を発見しているし、面白い物が見付かる事も少ないので、興味が薄れているようだ。
しかし、わしの旅の醍醐味は、狩りより人との触れ合いだ。お昼休憩ついでに集落に寄る事に決定した。
ここはカンザス州の中央辺り。そこで発見した集落から離れた場所に戦闘機を着陸させたら小会議。リータ達はまた人見知りが出ているので、わしから声を掛ける事となった。
「あ~あ……これにゃらさっちゃんを連れて来たらよかったにゃ~。さっちゃんだったら上手く説得してくれるのににゃ~」
歩きながら愚痴ってみたら、リータが手を上げる。
「私がやります!」
「私もやるニャー!」
「やってみる」
リータだけでなく、メイバイとイサベレも立候補。どうやらさっちゃんの名を出して頼りにしているような事を言ったので、ヤキモチを焼いているようだ。
たぶん、わしに褒めて欲しいのかな? なんか勝手にご褒美がチューになってるし……
しかしやる気を削ぐと猫騒動が起こるので、ここはなんとか任せたい。作戦会議も様々な案を出してくれたから、とりあえず乗っかってみる事にする。
目指す集落は、森が遠くにあるので大きな壁はない。軽く柵があるだけなので、獣被害は少なそうだ。門らしき物もあるが質素で、家もあばら家みたいなのが数十軒あるのみ。猫の国の村よりも生活水準は低いかもしれない。
長居はしないが、いちおうコリスはさっちゃん2でマント。オニヒメとメイバイもマントのフードを被り、集落に走って近付いたら、門らしき場所に立つ日焼けした半裸の男達に止められた。
「なんだお前達は! どこから来た!!」
わし達の姿は、原住民には見慣れない姿なので警戒されて槍を向けられる。そこに、リータとイサベレの説得。
「私達は旅人です! いまは、念話という力で話し掛けています。少し気持ち悪いと思いますが、話す為には必要なのでご了承ください!」
「私達に敵意はない。少し話をしてみたいから寄った。すぐに出て行くから、長と会わせて欲しい」
二人の説得に、男達はゴニョゴニョと話をして結論を言い渡す。
「
一人の男が集落の中に向かおうとすると、リータは止める。
「ちょっと待ってください。これも、入れていいかも聞いて来てください」
「これ? どれだ??」
「これです……」
作戦の概要はこうだ。わしは一切喋らず、リータに抱かれる。話し合いが上手くいったら、わしが挨拶する、だ。
ちなみに
リータに両手で前に出されたわしは、念話で話し掛ける。
「こんにゃちは。わしはシラタマと申すにゃ。悪い猫じゃないにゃ~」
わしが話し掛けると、男達の頭にクエスチョンマークが浮かんだ。
「それ……動物か?」
「えっと……はい。生きています」
「喋るのか??」
「ん。立って歩く」
「ちょ~と、待ってくれ。聞いて来る」
男が混乱しながら後退ると、またリータが止めて、メイバイ、コリス、オニヒメがマントを脱いでから紹介した。
「尻尾が動いているな……本物か?」
「本物ニャー。コリスちゃんもニャー」
「なんで人間に角なんて……」
「そういう種族なんです。全員、いい子ですからあなた達に危害を加える事はありませんよ」
「そ、そうか……わかった。その旨も酋長に聞いて来る。そこに座って待ってろ」
「お、俺も行く!」
メイバイとリータの説明を聞いた見張りの男達は考える事をやめて、全員で酋長の元へと走り出したのであった。
* * * * * * * * *
「はあ!? お前達は何を言っているんだ??」
見張りの男達からシラタマ達の報告を受けた初老の酋長は、変な見た目を聞いて困惑している。
「角の生えた人間に、獣耳に尻尾? 極めつけに猫が喋っただと??」
「はい……全て事実なんですが……」
「わはははは。真面目なお前がそんな冗談を言うとはな。そんな奴が居るなら見てみたいわ」
「では、お会いになるということですか?」
「フッ……まだ続けるのか。その嘘、たしかめてやろうじゃないか。どうせ、
「いえ……事実のまま言ったのですが……」
「さっさと連れて行け」
「はあ……」
酋長はまったく信じず、男達をぞろぞろと引き連れて集落の門に向かう。そうして門を出ると……
「「「なんか食ってるし~~~!!」」」
「あわわわわ」
テーブルでランチしてるシラタマ達を見て男達は驚き、酋長は事実だと知ってあわあわするのであったとさ。
* * * * * * * * *
時は少し戻り、男達が集落の中に走って行った直後……
「ぷっ……にゃははははは」
「「「「「「あはははは」」」」」」
わし達は大爆笑。リータ達の策が上手くいったというよりは、男達のコロコロ変わる表情が面白すぎて笑いを
「にゃは、にゃははは。初めて敵対されなかったにゃ~」
「あははは。でも、成功なんですかね? あはは」
「あはは。攻撃されなかっただけマシニャー。あはははは」
「見たにゃあの顔? にゃははは」
「思い出させないでよ~。あはははは」
「「「「「「あはははは」」」」」」
しばしわし達は笑い転げ、男達が戻るのを待っていたが遅かったので、先にランチ。座って待ってろと言われていたので、テーブル席にてごはんを食べて待っていたら……
「「「なんか食ってるし~~~!!」」」
「あわわわわ」
さっきの男達が戻って来て、ツッコまれた。
おっと。食べて待っているのは失礼じゃったか。一人だけあわあわ言っているじいさんが居るけど、あれが酋長かな? またリータに対応してもらおっと。
わしはリータとメイバイに食事を勧めるように指示を出して、自分はテーブルセッティングを開始する。
「ご一緒にどうですか? うちの料理、すっごく美味しいんですよ」
「いま、シラタマ殿が用意してくれてるニャー」
リータとメイバイが誘っても、酋長はしばし固まっていたが、首をブンブン振って再起動した。
「尻尾! 角!! 猫!? ほ、本当だったのか……本当だったのか~~~!!」
「にゃははははは」
「「「「「「あはははは」」」」」」
酋長がどんな説明を受けたかわからないが、男達よりすんごい顔をして驚くので、わし達は笑いが再燃してしまうのであったとさ。
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